9月-10月音楽記録
1.“Seaforth” King Krule
思考がまどろんでいくような心地。簡素なドラムのせいか音数が少ないと思ったのだけど音の輪郭がどうも掴めない。ギター同士の音や、ギターとボーカル、ボーカルとコーラスがぶつかって混ざって、蛇みたいにうねった音に聴こえる。奥から聴こえるどこか薄い一定のドラムパターンも、ずっと聴いていると朦朧と気持ち良くなっている。意識の焦点が合わなくなるみたいな音像。去年の夏マックデマルコのanother oneを無限に聴いて気持ちよくなったのを思い出す。この曲も何度もループして聴いてしまう。
2.“Starman” David Bowie
デヴィットボウイの歌唱が本当にツボ。その端々が好きなんだけど、なんていうか、ちょっとねちっこい瞬間や、張り上げてキュッとなる瞬間や、ダックみたいな瞬間や全部。悪魔みたいに綺麗な口元に目がいく。
サビで薄く広がるバイオリンと登っていくような管楽器かシンセの音、きらびやかで古き良きって心地。「スターーーメーーーーーーン waiting in the sky」のところつい口ずさみたくなるよな、と友達と投合。大好きなデヴィットボウイっぽさが溢れている、曲を通り越して人を好きになってしまう。
let the children lose it
let the children use it
let all the children boogie
何だか、由緒あるお話を聴いてるみたいな気持ちになるんだよねここ。
3.“きゅるきゅる” 大森靖子
最高の曲。細かく切れるギターで始まり、助走を始めるみたいにドラムとピアノのフレーズが入ってくる。その後ろで大森靖子の声が近づいてくる、その声が沸点に達すると同時に、爆発的なド派手なシンセの演奏、気持ち良すぎる。
ノイズが混じりエッジの効いたAメロ、迷子みたいにかわいい電子音と共に伸びやかなBメロ、ワクワクに溢れてる。そしてそのワクワクをブチ破る超爽快で爆発するサビ。出だしの「きゅるきゅる」の発声の感じがもう絶対不可侵なくらい可愛い、パーっと世界が変わっちゃう。ある意味もう視界がめちゃくちゃ狭まってしまうような感覚。
このサビの出音で感じるものがあって、自分は表面的なものしか見れてないのかもしれないけど、何かを信じきってしまっている、視界の狭さみたいのを感じるの。そこに尊さのようなものを感じる、それが世間が見てどう思うかとか関係なしに信じていること。
歌詞の内容をそこまで見ていないから、この解釈があまりに的外れで、不快になる人がいたらすみません。だけど、自分が歌詞を部分的に感じ取って、この「きゅるきゅる」という歌を自分なりに好きになった、この「好き」も大切にしたいので、今の時点でより歌詞を掘り下げようとは思わないんだ。
イントロと同様のド派手なシンセのアウトロ。ワクワクしてはそのワクワクが爆発的に解放されてを繰り返すので音量を何度も上げてしまう。最後サビ2回くるのやばすぎる。「きゅるきゅる私性格悪いからあの子の悪口絶対言わない」が超好き、耳に残る。
4.“Asleep” The Smiths
吹き抜ける暗い風の音をバックにピアノの伴奏という簡素な曲。テンポ感も、ボーカルもゆったりとしたバラード。“sing me to sleep”と繰り返すのだけど、これを聴いて寝てしまいたいくらい心地良い。曲が終わった後にもう一度この曲を再生してしまうような安らぐためのような曲。モリッシーの声が良すぎる、語尾のビブラート心地良くて耳すましまくり。この曲の、少し明るいところでは、過ぎ去ってしまった後の諦めと清々しさを感じたりした、瞬間最大風速的な感じで一瞬そう感じたっていう。
5.“Young Adult Friction” The Pains of Being Pure at Heart
イントロからノイジーなギターポップ、とてもキャッチーでキュート。パシャパシャと連続で鳴り続けるシンバルの音、激しいけど軽やかなドラム。シンバルの音を皮切りにバンドの音全部弾けていくみたいに心地良い。twee popの優しいボーカルと詩世界。
6.“Victoria” The Kinks
なんと言っても「victoooooooooria!」というサビ。イントロ、そして歌が始まって、古いロックという印象を持たせる、音像に隙間があるような。そこからそのサビに入ると、伸びのあるボーカルとコーラス、少し激しいドラムの飽和感。上がっていく感じのベースのせいか、サビの2回目のvictoriaでちょっと感情がうるっとなる。そして1:40過ぎの間奏は完全に不意を突かれる。テンポ感が重くなり、壮大に広がっていく管楽器、過去という濁流に飲まれていくよう。そしてまた昔的、ロックンロール的な間奏に戻っていく。度々の「victoria」があまりに爽快で、同時にノスタルジックで何回でも聴きたくなる。要所要所での管楽器の入り方はスラッカーフォーク的な感な感じがする。neutral milk hotelを思わせる。アウトロの感じなんか特に。
7.“Chimacum Rain” Linda Perhacs
1970年、女性sswのLinda Perhacsによるアシッドフォーク作品。穏やかで、静かに揺れるギターのアルペジオで始まる、ひっそりと暖かい。透明感のあるボーカルが入り、演奏が進むにつれて、影がかかるみたいに表れる、怪しげな雰囲気。ほんの一瞬、音が遅れた後に「chimacum rain~」と入り、コーラスがどんどん重ねっていく、完全に頭が飽和する。頭に真っ白な花が開いていくみたいで思考が停止しちゃうくらい綺麗。そしてまた曲の初めのように静かなギターに戻る、静けさを取り戻す。曲が何度も表情を変える中で、この静かで穏やかなギターに戻るところがとても好き、しっとりと飽和した雰囲気から日の当たる部屋に戻るよう。
2回目の「chimacum rain」のパートが終わると、新しいパートが始まる。バックでストリングスが細く鳴っている、ギターの揺れは強くなっている、コーラスが入る、何か不穏な物が入り込んでくる予感がある。「he belongs to you」、多重に重ねられた声と低音と共にまさにアシッドフォークという雰囲気に。曲中最も影を感じさせるこのパートは、間伸びするコーラスとストリングスと共に膨らんで消えていく。その様はアシッドフォークの雰囲気を引き継ぎつつ、神聖ささえあって昇っていくよう。また始めのように穏やかなギターに戻り、アウトロも同様の静かなギターで終わっていく。それは現実に戻る心地があるが、その現実は過去にあった現実で、穏やかなあの部屋に思いを馳せるような。
初めてこの曲のコーラスパートを聴いた時とても50年以上前の曲と思えなかった。新譜で出ても不思議じゃない。sound of scilenceを少し思わせる。
8.“Lopin Along Thru the Cosmos” Judee Sill
溜め息が出てしまう、日々に疲労してしまった心に暖かく染み込んでくる。あんまりこの表現は使いたくないけど、こういう時に聴くと泣いてしまいそう。本当にこれを聴いて泣いてしまったら救われるんじゃないかって思う。Judee Sill がどんな気持ちで歌を歌っていたのか、背景にどんな人生があったのか、そんなことを思う。
なんだかJudee Sillが遠くを見ている風景が浮かぶ。目を細めて、水平線に沈んでいく太陽を見ている。そんな時に考える、今までの諦め、でも未来への希望や、瞬間的な大丈夫な気持ち、それを自分で確認して安心する。今までの時間は確かに後悔も多かった、こっから本当に取り返していけるのかわからない、だけど少しずつ進もうという気持ち。あくまで、Judee Sill自身に向かって歌ってる、ストリングスを奏でている。そんな1人の人が生きていたことや、明日へと繋げようとしていたことを、自分への許しや救いとして感じる。うまく言えていない。
Judee Sill の伸びやかな声は優しくて強くてすんと澄んでいる、まるでストリングスと一体になって響いているその声。オーケストラの演奏は曲と歌に寄り添うように多層的に響く。ストリングスを使ったポップスではなくクラシックのようで、音響的に美しい作品になっている。
その他
9.“When You Were Mine” Cyndi Lauper
10.“Shit Talk” Sufjun Stevens
11.“Night Swimming” R.E.M.
12.“Auntie Diaries” Kendric Lamar
13.“From Here We Go Sublime(album)”The Field
書くのは疲れる、言葉にするのは疲れる。
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