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11-12月音楽記録

1.“Schizophrenia” Sonic Youth

 ドラムで始まる、ポコポコとしたタムの音を聴きながら、あの音が入ってくるのを待つ、ベースとモヤがかかったようなギターの音。その音が鳴ると、自分はノスタルジックな夜明けや、自分がまだ生まれていない頃の、懐かしい光の中にいる。
 サーストンムーアの、その曲に寄り添うような優しくて諦めを含んだ男性ボーカル。過去の光を思わせる。1分30秒のところで曲調は不穏さを帯びる。1分45秒でそれが晴れる。煮え切らないような、2つのギターの折り合いは空白感を残し、不明瞭な感情を表している。何か予兆を感じる。
 キムゴードンによる女性ボーカル。そのアトモスフェリックな歌声は、その声自体が過去に置いてかれているような印象を受ける。過去の光を思うんじゃなくて、過去にいる。
 ギターの鋭い音が拍を刻み始める、どんどんとツインギターが層を重ね、上昇していく。瞬間、音がひらける。ギターは、そのひらけた空に一本の雲が線を引くように進んでいく。ドラムは一定のパターンでポコポコとタムの音、なんだか個性的、めちゃくちゃかっこいいって感じでもないから。
 この曲は曲調が変わる瞬間が何回かあって(1分45秒、3分10秒)、そこでギターの鳴りが収まって、開けるような瞬間がとても心地良い。それは光を待ってる時間みたい。

2.“Disorder” Joy Division

 小刻みに揺たくなるリズム。それを切り裂くようにギターが鳴る。名前を残したバンドたちが鳴らしたのと同じ、衝動的な音。このギターでその時代の扉が開いたんだっていう確信。こういう瞬間、自分はロックという言葉を生きた姿で捕らえている、そのギターが鳴った瞬間に自分はわくわくしてしまう。爆音で聴くに限る。
 イアンカーティスの語り的で変化の少ない、メロディ無いんかなと一瞬思ってしまうようなボーカル、最初はその抑揚をうまく捉えることができなかった。でも聴けば聴きほど、そのボーカルでなければ、と思わせる凄みが迫ってくる。その太く鋭いボーカルの語りは、何か深刻な警告のよう。感情を露わにせずに、何か諦観を持って語りかけるような、俯瞰した視線を感じさせながら迫ってくる。最初に感じるのはやはり緊張感、なのだけどそこにすっと緩みが生じる瞬間がある。1回目の間奏の前の「I‘ve got the spirit, lose the feeling, take the shock away」の歌い出しはどこか力の抜けた印象を受けるメロディの変化がある。2回目の間奏が終わると、ギターは層をなし、曲は膨れ上がっていく。まるで、その諦観を持って押さえつけていたボーカルが爆発する前兆のように。
 ここでも力が少し抜けるようなメロディの変化と共に、「until the spirit, new sensation takes hold, then you know」が繰り返され、その後に緊張とも緩みとも違う、抑えきれなかったものが爆発する。「I‘ve got the spirit, but lose the feeling」自分が今まで熱中してきたロックスターの高音を張りあげるようなそれとは違う、太く響く叫び、自分の通ってこなかったもの。それに対して、なんなんだこれっていう興奮と混乱を感じている、こういう興奮は本当に大切なもの。NirvanaやLed Zeppelinに感じたものと一緒のものを、大学の終わりにもなってまた出会えるなんて。かっこよすぎる。

 友達と車で一日ドライブし、曲がなくなってはコンビニでプレイリストを作り、を数回繰り返し、そのドライブの最後にかかった曲、友達が入れていた。自分はその時が初めてだった。Joy Divisionは知っていたし、youtubeで別の曲の冒頭を聴いたことはあったが、それも冒頭で終わっていた、良さがわからないまま。車で流れた時、どんどん音が増幅し迫ってくるのがわかった。最後の叫び、衝撃的すぎて2人して黙り込んでしまい、友達は「歴史に名を残すバンドって、マジでヤバいな」みたいなあんま語彙力のない言葉を、でもその場にいたらひしひしと伝わるくらいの圧倒された言葉で言ってきて、自分はもっと衝撃で。


3.“I Would Die 4 U” Prince

 Synth Popをもっと聴こうということで、積極的に聴いてた、80sを代表するアルバム。まだまだ心の底からハマれてないなと聴きながら思うことは多かった。だけども、この鋭いビートは気持ちよくブッ刺さって、ついつい首を振ったり、歩く速度を上げてしまった。
 そのアルバムから一曲。これ以上ないくらい、弾けるという言葉を表すイントロ。幸せな光の粒子が溢れ出るような音たちが響く、タイトルの “I Would Die 4 U” が溢れてやまない幸せな気持ちにから来るものなんだと一瞬でわかる。前述した、タイトで鋭いビートが気持ち良すぎる。そしてプリンスのボーカルが入ると、そのボーカルもめっちゃグルーブ感があるではないですか。これがファンキーってことか。間奏後にコーラスで重なったボーカルが、グルービーにどんどん連なっていくの気持ち良い、それが弾けていくサビ。
 この毒っけの強いプリンスをもっと夢中になりたい。もっと人格について知れたら、とかもう少し先になるだろうけど考える。

 余談なんだけどプリンスを聴き始めたのは最近ではなくてもうちょい前、そん時は好きになれず挫折。きっかけは不純で、Tシャツを着るためだったんです。親からお土産でもらったプリンスのTシャツ、形もデザインもめっちゃ好き、問題はプリンスを聞いたことがなかったこと。街中でこれ着てる時にプリンス好きに話しかけられたらどうしようなんていう到底起こり得ないことを想像して。その時はあんま好きになれなかったけど少しずつ好きになってて、Tシャツも着てます。逆だよね。


4.“Love Will Tear Us Apart” Joy Division

 これはDisorderにハマった後に他の曲を聴く中で知った曲。イントロでシンセが入ってくる、澄み渡る空が目の前に現れるような綺麗さ。Unknown Pleasuresの緊張感のある印象とは違って、光がさすような美麗な曲だとわかる。イアンカーティスのボーカルも、のっぺりと低くて心地よい、狭い音域での美しいメロディ。それは夢見心地というより、カーティス本人が心ここに在らずのような、浮遊感のあるボーカル。言葉をまくし立てるdisorderなどとは対照的な、舌足らずまでがいかない、ゆったりとした歌い回し。繰り返しいつまでも聴いていられるような心地よい曲。


5.“Psycho Killer” Talking Heads

 Talking Headsの代表曲、ということで初めて聴いた時はどんなかっこいい曲が聴けるのかと待ち構えていた割に、演奏は必要最低限の音が鳴ってるという風で、激しいギターワークのようなわかりやすいかっこよさは聴けず、消化不良だった。
 だけども、やっぱり時代にしるしをつけるような曲だけに、ジワジワとクセになり、聴けば聴くほど聴きたくなっていく。
 必要最低限のそのバンドアンサンブルは完璧なバランスで、気持ち良すぎるグルーブを作っている。各所で鳴っているそれぞれのパートの音たちは、その全ての瞬間がお気に入り。ティナ・ウェイマスによるベースは、曲中特に存在感を放っている。「 psycho killer, qu’est-ce que c’est 」でのベースラインはメロディアスで、その変に緊張感の無い気の抜けた感じが、王道のロックのそれとは違う奇妙さを作っている、クセになる。
 イントロのカッティングのギターは歌い出しで彷徨うようなアルペジオに変わる。その力の抜け具合、リズム隊によるタイトな雰囲気を保ったまま、途方に暮れた雰囲気も出している。また度々の小節の終わりに“ジャーン!” と落下するようなギターの瞬間が特に気持ち良い。
 “oh oh oh ooooooooh” のところで曲中最大の盛り上がりを見せるのに、よく聴いてみるとバックの演奏は大きく変化していないのが印象的だった。盛り上がりの沸点、なんと言っても「Ay-ya-ya-ya ~」の狂気的で汚さのある叫びが最高。
 ここまで書いてきて、曲に関する全ての要素が良いと思えるも、それをどうまとめればいいかわからない。何が1番言いたいか、とにかく異常にノリが良くてグルービー。2分12秒の、2回目のサビ終わり、演奏がよりキレッキレでタイトになるところは特にこっちの首もキレッキレに動く。


6.“Lost in the Supermarket” The Clash

 The Clashの、有名なジャケのあのアルバムから。とは言っても、このアルバム聴いたことなかったし、今回聴くにあたっても、アルバム全体ではなくこの1曲を繰り返し聴いただけ。クラッシュについて知ってることはパンクバンドであることと、ジョーストラマーという名前だけ。
 だけどこの曲の演奏は、いわゆるパンクとは違い、ギターもベースの音も単調ではなく、知的に配置された音のような印象を受ける。特にギターの音は、とても優しい印象を受ける、“I wasnt born so much as i fell out” の入りのギターのハーモニクス
のような音とか。ギラついた雰囲気はなくて。
 さらに、この曲を歌ってるのはジョーストラマーではなくミックジョーンズ、ということらしい。この曲は、演奏全体で優しくてキャッチーな雰囲気に溢れているけど、ボーカルワークもパンクバンドのそれではない、ハキハキと丁寧に言葉を紡いでいる。そこに純粋さという意味でのパンクを感じないこともない。“long distance callers make long distance calls” の歌い回しが好き。
 にんまり口角を上げながら、首を軽く横に振りながら、柔らかく揺れたくなる。


7.“Don’t Let Me Down” The Beatles

 青盤の2023 Edition の発売に際して。小粒が光るようなジョージのギターワークとビリープレストンによるエレキピアノ、あの寒空の景色を想像させる。ジョンレノンの出だしの “Dont let me down!” に圧倒されてしまう、ミクシングって大切なんだなって。今まで本当気にしたことなかったんだけどリマスターのを積極的に聴きたい。Hey Bulldogも緊迫感が全然違った、迫る。


8.“Day Tripper” The Beatles

 赤盤の2023 Edition の発売に際して。子供の頃からたくさん聴いてる曲だけど、いつからか聴くとしても後期の曲ばかりになってて、久しぶりに聴いた。1分13秒のジョンレノンの “Sooooooooo long!” のボーカルがあまりにもかっこよすぎる。


9.“Wealth” Talk Talk

 Synth Popを漁る中でTalk Talkのファーストを聴き、その流れで聴いた彼らの4枚目の作品。初期の派手に装飾されたシンセポップな楽曲とは違い、アンビエントやジャズ、ミニマルな要素を含む実験的なポストロックのアルバム。
 この曲は特にミニマルに作られている印象があって、静寂というか、音が鳴っている後ろの空間を強く意識させる。今年の初めによく聴いたCarolineの同名アルバムも似たような印象を持たせた。
 それは例えば、黒の画用紙に1色ずつ、点としての音を載せていくよう。その載せた色は、徐々に薄んでいき消えていく、その後ろの黒がまたそこに現れていく。余白ならぬ余黒の領域の密度がとても濃くて、その、音をのせていく静寂の部分に意識がいく。その中でエレクトロピアノの間伸びする細い音は、その暗い画用紙の上で強く光り、存在感を放つ。
 “take my freedom”のところでも、徐々に近づいてくる、間伸びするオルガンの音が存在感を放つ。曲中、徐々に暗闇に溶けていくような他の楽器の音と違って、そのオルガンの音は近づいてくる。演奏はミニマルなまま、飽和的な音像に変化するこのパートは、朝日に照らされたような幸せな気持ちになる。この飽和するパートの1回目はすぐに終わる、その時間が何だったのか理解する間もなく、深い感動を残したまま。その井戸には、1日に数分だけ、朝日が底に流れ込む。静かだけど、情感の揺れる美しい曲。


10.“Good News” Mac Miller

 人に教えてもらった曲、だけどよくよく思い出すとそれ以前にも聴いたことあったなと、気づいた曲。最初に聴いたのは、日本のジョンのサンというバンドの日本語でのカバー。サビの “good news, good news, good news”が印象的だったので。
 mac millerの死後に出た楽曲。穏やかで毒の無い曲調がとても心地良い。mac miller のボーカルも同様に優しくて、力が抜けている。とても亡くなったとは思えないような印象なんだよね。亡くなって2年後にこれがリリースされるのは、当時、ファンからしたらこんなにも暖かい贈り物に泣いてしまうだろうし、同時に悲しみも膨れるだろうな。その悲しみは、感謝を伝えたいって気持ち。
 ずっと心地よくて、アクセントになるギターとかの音の配置も自然な小さいフックになっていて、ずっと心地よく聴ける。晴れた日に、時間を忘れて聴きたい。

「アーティストが亡くなって悲しくなるのは、その人のことを知ってたからじゃなくて、その人の歌で自分自身のことを知れたから」とコメント欄で見かけた。


11.“Mother I Sober (feat.Beth Gibbons of Portishead)”

 ケンドリックの淡々とした語りが、暗くは無い、その語りにしては妙な明るさを持つ落ち着いたピアノをバックに進んでいく。その歌詞は、純文学的に文章が進むような余白の残し方をしている。
 ケンドリックの語りは淡々としたものから熱を帯び始める。強い危機感を持って迫り始める。バックのトラックも含めて圧倒される。ボーカルが熱を帯び始める時、後ろで線を引くように伸びるヴァイオリンの音はまるで光がさすよう。何かが明らかになろうとしている、何かが変わろうとしている、その頂点できっと運命は変わる。

 《 台所にいる彼女を見つけた

神に祈っていた、「私はどこで自分を見失ってしまったのでしょうか?許してもらえるでしょうか?」

俺は取り乱した、彼女は俺の目を見て、「依存症があるの?」

俺は「ノー」と答えた、今度は嘘をついた、治せないことはわかっていた

純粋な魂、苦しんでいても俺のことを心配しているのがわかった 》


12. “Fluorescent Adolescent” Arctic Monkeys

13. “Holiday” Vampire Weekend

14. “The Ascension” Sufjan Stevens

15. “Chosen Time” New Order


70s後半から80sにかけての有名な曲をよく聴いてた。

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