脇腹に上白糖が刺さる

それは梅雨の晴れ間のこと。
数日ぶりの快晴に目を細め、慣れない熱に肌を焼く往路。
通りのまばらな人影に、混じり合った浴衣が映える。
あちこちに貼られたポスターは今夜の祭を誇示している。
わたしたちは、日陰を歩いてスーパーマーケットに向かった。

自動ドアの先で、空調と葉物野菜の匂いを吸い込む。
夕食の素材と夕飯の惣菜を半々に選び取る。
会計はわたしの役割。
袋詰めはあなたの役割。

祭囃子がマンションの向こうから聞こえる。
浮足立った人々とすれ違う。
彼らは、特別な今日を過ごしている。
わたしたちも、きっと特別な今日を選ぶ権利がある。

それでも、わたしはスーパーのレジ袋を肩に掛けて歩く。
あなたは袋詰めが下手だから、抱える袋はでこぼこだ。
街路に響く下駄の足音に負けじと、ゴム底のスニーカーを擦って歩く。
そうして体が揺れるたび、脇腹に上白糖が刺さる。

そんな特別な一日を、わたしとあなたは選んでいる。

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