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コーヒー片手に会話しよう

本を好きでよかった、と『ブックセラーズ』を観て思った。この作品は、NYブックフェアの場面から始まる、古書を扱う人々のドキュメンタリー映画だ。この作品に出る人々は、みな物体としての本への愛に溢れていた。穏やかで落ち着いた口調でも、常に彼らからは火傷しそうな炎の温度が感じられた。彼らは何十年も、薪を焚べ続けている。そして彼らの炎は、青く高く、揺らめいているのだ。共鳴、と言うとあまりに畏れ多いが、私の心にぐわぐわと薪を焚べられていく感覚がした。彼らの話すことに、教えを見出し、疑念を抱き、「だよなあ!!」と言って拳を突き上げた。本を好きで良かった。だって、あんなに遠い人の話を心から楽しむことができる。これって、もしかしたら対話かもしれない。

作中には、女性コレクターも登場した。表にほとんど出てこなかった女性ディーラーのことや、世代間の認識のギャップなど、社会の問題がブックセラーズの業界でも浮き彫りにされていた。フラン・レボウィッツ氏が作中で話してた、「地下鉄の唯一の良いところは20代くらいの若者が古書を読んでいるところ。逆にKindleを読んでいるのは4、50代。(あやふや)」という内容が印象に残っている。

作中で最も言及されていたのが、ネットの登場についてだ。優れた図書館や本屋に溢れるNYでも、ネット普及以前と比べて本屋の店舗数は目に見えて減少している。作品を観終えて強く感じたのは、継承の重要性。物質としての本がなくなることは、正直ないと思う。それらを愛する人達は世代を横断して存在するし、仮に全ての本が電子化されたとしても、紙の本は美術品、骨董品として残され続けていくと思う。ただ私は、本が美術品や骨董品として、存在意義を変えてしまうことが怖い。だって本は多くの人にとって、最も長くそばに居てくれたものだからだ。多くの美術品や骨董品には、軽々しく触れられない。そこには確実に物理的な距離が生じる。私は本に、一番近くに居てもらった。これからもそうであって欲しいのだ。タブレットの薄さでなく、愛しい厚みを伴って。私は、本を愛する人達の想いを慎重に審議して、引き継いでいきたい。そして、次の世代に十分に伝えられるようにしたい。もし、誰もが頑張っても無理なのなら、そこまでです。歴史は終わり ブックオフじゃなく棺桶で一緒に眠ります。こないで もし私が死んだ時は、愛する本達を絶対に棺桶に入れたりしないで欲しい。地獄では多分本読む暇なんてないので。その本には行くべきところがまだまだある

Thanksを伝えるエンドロールの最後に、"& all cats..."とあって、作中の猫たちに想いを馳せた。まだまだ見落としてるところがたくさんあるので何度も観ます。また話そうね〜バイバイ☎️


大分県日田市にある、日田シネマテーク・リベルテさんで観ました。本当に良い空間です。本屋も映画館も、呼吸がしやすいな〜と感じます。リベルテさんの一番好きなところは、オリジナルに作成した小さな映画チケットをもらえるところです。タイトル写真は、リベルテさんに飾ってあった谷口智則さんの絵です。ポストカード買いました。

#映画感想 #ブックセラーズ #日田リベルテ


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