賽の河原

愛される過程で
ばらばらになった
わたしの四肢
まっすぐ射抜く
その、声

ひび割れたせかいのすきまから
死産した赤子の声が洩れて
わたしはもう二度と
孕めないのだと
思い知る

やわらかく逸脱した腕で
おとこはわたしを捉えた
わたしの産声を半径として
形成されたせかいで
二十三歳のおんなは
ひたすら泣いた

ばらばらになった四肢を
砂浜に集め
火を放った
ごうごうと燃えた
海の奥から産声が聞こえる

わたしを発端として
せかいが揺れて揺れて
どうしようもなく
ベッドの枠にしがみついた
悠長なおとこの声に
全身を射抜かれ
わたしは
わたしの胎(はら)を
内側から
強く蹴り返した


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