ボクシング・デイ

賞味期限を過ぎたおんなは返却されなければならない

十二月も二十六日、
店頭には
ケーキたちが
すました顔をならべて
わたしに視線を投げかける
その群れのなかから
わたしはショートケーキをひとつ
するりと皿に移す

置き去りにされた
無数のわたしが
顔をならべて
いる
本日はしんしんと雪の降るなか
素晴らしく病んでいくお日がら
ご機嫌いかがですか

返却台は
賞味期限を過ぎた
おんなでごった返している
子供が父親にケーキをねだります
父親は拒否します
子供は強情にケーキをねだります
父親は無視します
子供は機嫌を損ねます
なんて寒々しい
けれども
握られたその指は
あまりに切実な
熱を持っていた

めぐりめぐって
顔が欠損したおんなたちに
カウベルが奏でられる
そのたび
つぎつぎと返却されていく
おんなたちで店内は埋め尽くされ
わたしたちは
とても
居場所がない

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