見出し画像

従軍祈祷師アンゲラの戦場

永世中立の小国、リンドバーグ公国。
峻険なアルピナ山脈を挟み対峙する、帝政ラグランジェ共和国。
公国は現在、共和国の苛烈なる領土侵犯に、果敢にも立ち向かっていた。

主戦場である山脈の国境線より500馬歩ほど離れた、銃後の寒村。
農民の家屋は軍に徴用され、傷病兵を横たえる野戦病院となっていた。
そしてそこは、国立従軍祈祷師団の「戦場」でもあった。

アンゲラは、国家祈祷師修養過程を修了したばかりの新人シャーマンだ。
彼女は高名な祈祷師一族に生を受け、1歳で全身に祝福の刺青を施された。
アンゲラが祈祷師の道を選んだのは、他に雇い口が無かった為に過ぎない。
彼女は祈祷で人を治癒できるなどという世迷い事など信じてはいなかった。

――そう。手足の千切れた傷病兵に、初めて対面するこの時までは。
「死にたくない! 神様!」
その名も知らぬ傷ついた一兵卒を目の当たりにした瞬間、雑念は払底した。
助けなきゃ! まじないでも……何でもいい!

【続く】


頂いた投げ銭は、世界中の奇妙アイテムの収集に使わせていただきます。 メールアドレス & PayPal 窓口 ⇒ slautercult@gmail.com Amazon 窓口 ⇒ https://bit.ly/2XXZdS7