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銃器:"CRYBABY JOSH"の銃器解説/1

謝辞・そして始まり

どうも、slaughtercultです。
【泣き虫ジョッシュと惨劇の館】をご覧いただき、ありがとうございます!
お読み頂いた皆様のお陰様で、どうにか完結までこぎつけました。

作中の登場銃器の拘りは、ご覧頂いた皆様の承知のことと存じてます。
描写に関して分かりにくい部分も、多々あったものと自省する次第です。
当記事では、拙作の登場銃器を、主に動画紹介の形で説明させて頂きます

【重要】
銃器画像に関しては、製造元のサイトが参照できる場合に限り転載します。
転載に関しては、転載元の転載規約に従って行って下さい。


1.【Remington Model 95 "Double Derringer"】

【作中での所持者推移】
”シルヴィア” ⇒ ジョッシュ(物語終了時点まで)

作中では『デリンジャー拳銃』と称した、携帯性に優れる小型拳銃。
日本ではエアガンの存在もあり、知名度は高い方なのではないでしょうか。
実銃は1866~1935年にかけて製造され、現代ではコピー品も多数あります。

全長:4 7/8in(12.38cm)重量:11oz(311.85g)と、極めて小型軽量。
3in(7.62㎝)銃身で130gr(8.42g)弾頭を425fps*(129.2mps*)に加速。
”ME”……銃口エネルギーは『52.15ft-lbs*/70.28J*』に到達します。

*fps=feet per sec/毎秒フィート、mps=meter per sec/毎秒メートル
ft-lbs=foot pound/フットパウンド……『重量(gr)×初速(fps)^2 / 450,240』
J=Joule/ジュール……『重量(g)×初速(mps)^2 / 2,000』
何れの公式も、速度を2乗することに注意。重量より速度がより力を生む。
**gr=grain/グレイン……0.0648g、ft=feet, foot/フィート……0.304m

銃の威力は、現代の軍用ピストルで概ね、ME『300~400ft-lbs』前後。
射撃競技・レジャーで一般的な.22LR弾だと、ME『100ft-lbs』前後。
.41ショート弾は更にその1/2程度ですから、いかに弱装か良く解ります。

理由は、黒色火薬の量を減らし、薬莢を極端に短くした設計にあります。
薬莢長.467in(11.86mm)は、現代の弾薬と比べても明らかに短いです。
おまけに.41弾の装薬量13grに対し、当時の軍用拳銃の装薬量は30~40gr

装薬量だけを見ても、2倍~3倍の差。これでは威力が弱くて当然ですね。
この性能は携帯性を鑑みた妥協であり、黒色火薬の限界でもありました。
現代版のコピー品だと、僅かな大型化で段違いに強力な弾薬が撃てます。

上記の動画では、2発中1発がプライウッド(合板)を貫通したようです。
離れた距離から、急所を外して撃てば、確かに一撃必殺ではないでしょう。
しかし、それでも拳銃は拳銃。その小さな威力を侮ってはなりません。

作中では、額に被弾した*フェリックス君は、運良く軽傷で済みました。
弾頭が眼球を貫き、脳まで食い込んで*いれば、死んだ可能性もあります。
しかし残念ながら、怪物『餓鬼』に通用する威力ではなさそうです。

*低速弾が頭蓋骨で停止・また骨に沿って流れた現象は現実に存在します。
鋼鉄のヘルメットに被弾、頭を一周するハチマキ状の傷で済んだ稀な例も。
また弾頭が脳に達したからと言って、必ずしも死ぬとは限らないようです。
生きながら前頭葉の一部を破壊・切除する、ロボトミー手術がその例です。


2.【Colt M1883 ”Hammerless”】

【作中での所持者推移】
”女王” ⇒ ジョッシュ ⇒ アシュリン ⇒ ナレク(廃墟脱出)

コルト社……拳銃とライフルで有名な企業が、かつて製造していた散弾銃。
因みに、この構造を利用したダブルライフル『Model 1878』も存在します。
いずれにせよ、富裕層向けのバカ高い銃器であったことは確かです。

ダマスカス銃身が印象的。内臓ハンマー式のModel 1883は、動画奥の銃。
銃身長28~30in(711.2~762cm)薬室は12ゲージ2 3/4in(70mm)。
見た目はともかく、銃の構造は現代の水平二連銃と大差ありませんね。

この時代のショットガンを語るにあたって、最も困るのが弾薬の扱いです。
現代の散弾薬莢は、真鍮の台座にプラスチック筒であることは周知の通り。
……では、上記の銃が製造されていた19世紀末はどうだったのか?

―――――以下、長い講釈。興味の無い人は3.まで飛ばされよ―――――

数十年前までは『紙筒薬莢』、もっと時代を遡れば『真鍮薬莢』……。
現代市場の真鍮散弾薬莢は、2 5/8in2 1/2in……まさかの旧式寸法(笑)
(2 5/8"=66.68mm、2 1/2"=63.5mm。2 3/4"=70mm薬室で下位互換

当然、低圧の黒色火薬を用いますが、装薬量はどの程度なのか……?
ここで、散弾と黒色火薬に関する考察を記した、興味深いサイトを発見。
そして……新しい度量衡ドーン! その名も『dram(ドラム)』!

『The avoirdupois dram is the unit of weight used to measure black powder. There are 256 drams in a pound avoirdupois, 16 drams in an ounce, and 7000 grains in a pound. Take care not to confuse 'dram' with 'drachm' or 'dram apothecaries' which are not the same things at all.

1 ounce = 16 drams = 437.5 grains.
1 dram = 27.34375 grains = 1.772 grams.
1 gram = 15.432 grains = 0.564 drams.』
――Tom Bullock, Jan 28 2005『Black Powder Shotgun Shells』より引用。

私ね、前から『ポンド⇒オンス⇒グレイン』に疑問を持ってたんですよ。
『1lb=16oz=7,000gr』……ozとgrの間は、差が開き過ぎじゃないかと。
えぇ、違ったんですね。『1lb=16oz="256dr"=7,000grだったと。

……?????? 基準値から2回『1/16』したのに、なぜ最小単位は?
そもそも拳銃・小銃弾薬はgr準拠なのに、なぜ散弾銃だけdr準拠なのか??
ヤードポンド法の度量衡は神秘的で、常人の理解の斜め上を行きますね。

『12(ga) 6(dr) Blank 1 thin card wad over powder; nothing else
 12(ga) 2 1/2(dr) 1(Shot oz) Light
 12(ga) 3(dr) 1 1/8(Shot oz) Normal
 12(ga) 3 1/2(dr) 1 1/4(Shot oz) Heavy
――Tom Bullock, Jan 28 2005『Black Powder Shotgun Shells』より引用。
*註()書き強調部は筆者の後付け。

現代の通常装弾は7/8oz~1oz程度なので、装薬量の目安は2 1/2drとなる。
2 1/2dr=68.36gr(4.43g)なので……まあ大体、想像していた通りですね。
当時の軍用ライフル弾『.45-70弾』が、装薬量70grなのでほぼ同等です。

散弾1oz(437.5gr/28.35g)は、.45-70の405gr(26.24g)弾頭とほぼ同等。
黒色火薬時代の.45-70弾では、銃口初速が1,200ft(365mps)ぐらい。
火薬を多めに3dr詰めたとして、1oz散弾でも同等の銃口初速は出せたはず。

―――――以上、講釈お仕舞い―――――

結論(推測)。概ね、当時の軍用ライフル程度には威力があっただろう。
まぁ散弾銃ですからね。ゴリ押しで化け物を殺せても、驚かないでしょう。
ところで皆様……そろそろ大分引いてらっしゃるんじゃないですか?(笑)


3.【Merwin, Hulbert "Pocket Army" 3rd】

【作中での所持者推移】
アシュリン ⇒ ジョッシュ ⇒ ナレク ⇒ アシュリン ⇒ ジョッシュ ⇒ ナレク

キャーッ! マーウィン・ハルバートちゃんカワイー!
マーウィン・ハルバートちゃん、こっち向いてー!
 ……ウッ、ふう……。
【只今、不適切な音声が流れました。訂正してお詫び申し上げます】

長い動画ですけど、これを見てくだされば、この特異な構造が丸分かり!
なんか芸術的。これも、マーウィン・ハルバートの良さですよ。
第2世代までのオープントップも、第3世代のトップストラップ形状も良き!

口径表記が『Winchester 1873』(.44-40 WCF)であることに注目。
初期のモデルは専用弾を使っていましたが、普及品に変更されたようです。
耐久性は不明……中折れ式フレーム以上、一体型フレーム未満という感じ?

フロンティア7in(17.78cm)、ポケットアーミー3in(7.62cm)銃身。
実はこの銃……長銃身と単銃身を、簡単にスワップできてしまうんです!
そして、グリップ底部にはあの禍々しき『スカルクラッシャー』! 

合理性と美観を兼ね備えた構造は、画面越しに見ても溜め息が出ますね。
エングレーブは趣味じゃないですが、錆びたニッケル鍍金もまた一興。
これを見ると、コルト・SAAに正面切って中指立てたくなりますね!

長銃身、初期のアーミーモデルの実射! 口径は勿論.44-40(黒色火薬)!
1発、薬室を空にして装填しているのがお分かりになりますでしょうか?
そして何よりィ――ッ! 見よ、このセクスィーな排莢シーンをッ!

Cartridge: .44-40 Winchester Bullet Weight: 200gr
Bullet Type: LRNFP* Muzzle Velocity: *685 fps Muzzle Energy: 208 ft lb
* Velocity with 6.5" Cimeron 44-40 Revolver
――Buffalo Cartridge Company 商品ページより引用
*LRNFP……Lead (鉛), Round Nose (丸型弾頭), Flat Point (先端平型) の略。

上記は、カウボーイ射撃用に当時のスペックを再現した、復刻版弾薬。
24in(60.96cm)銃身では1,200fpsでも、6.5in(16.5cm)だと1/2程度
初速が1/2になれば、MEは1/4になるので……残念だけど、こんなもんか。

見た目はともかく、作中でも大して活躍していないのが実情(悲)。
ウィンチェスターライフルから撃っても、ME『640ft-lbs』程度ですから。
スタイルに一目惚れしたから、とにかく登場させたかったのが実情(笑)


中座・前半戦おしまいです

さぁさぁ皆様、如何でしたでしょうか?
単なる銃器解説と思いきや、いきなり算数が始まってビックリしたのでは?
というか、大部分の無知な一般人をドン引きさせる自信があります(爆)

ていうか、もー疲れたわ! チョー調べるのに時間かかったんだから!
どうしても銃器を語りだすと、寸法と数字が出てきちゃいますからね(汗)
リアルに話を寄せて行けば、算数の授業になるのは避けられない。

インチ表記だけでいいなら、もっと簡単に纏められるんですけどね……。
いや、流石にヤードポンド法オンリーだと、話が通じなくなるんで!
ft-lbsJ』の併記は、流石に鬱陶しいので1回だけでやめましたが(笑)

この時代の弾薬に関しては、まあまあ今回で掘り下げられたかと。
後半戦は面白くできるかな? ついて来れる人だけ、ついてきて下さい!
というわけで、ここまで長々と辛抱強く、御清聴ありがとうございました!

From: slaughtercult
THANK YOU FOR YOUR READING!
SEE YOU NEXT TIME!

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