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ミリオンダラー・サバイバル

SMASH!

錆びついたぶっといバールが唸りを上げて、ゾンビの脳天をフルスイング!
……したはずなんだが、赤紫の血飛沫は控えめで、手応えは今一つ。
腐った屍は数歩後退っただけで、何食わぬ顔で歩み寄ってきやがる。

刺さりが甘い。間合いが遠かったか。これだから接近武器は嫌なんだ!「ARRRRGH!」
クソッ、うるせぇな畜生! 叫びたいのはこっちの方だ!

俺はバールを握り直して脂汗を流し、暗い街角を後退して周囲を見回す。
……正確には俺自身じゃなくて、俺の仮想現実アバターが、だ。

「ARRRRGH!」
頭を不規則に動かし、よちよち歩きで迫るゾンビ。うるせぇ黙れ!
……よし、周囲に敵影なし。ここでの敵はフリークスばかりとは限らねぇ。

「ARRRRGH!」
「うるせんだよこのボケ! 黙れっつってんだろ!」
俺は苛立ちをマイクにぶつけると、バールを大上段に振りかぶって突進!

黙れ、黙れ、黙れ!
SMASH!SMASH!SMAAAAASH!
釘抜きの鋭い先端が何度も打ち下ろされ、フリークスの頭蓋をかち割った。

「ハァッ、ハァッ、ハァッ……今度こそくたばったか」
BAM!BAM!BAM!
俺は殺し直したフリークスの死体を念入りに殴ると、アイテムを漁った。

持っていたのは金、ゲーム内通貨だけだ。それもたったの20クレジット。
1クレジットで1,000円相当。俺が盗られた2,000,000円には全然足りねぇ!
所詮は一般人ゾンビと言うことか。しかも俺は金より銃が欲しいんだ、銃!

俺は相棒のバールを肩に預けて舌打ちすると、腹いせにゾンビを死体蹴り。
たかがゲームごときに、何で俺がこんなにキレてるかっつうとだな。
運営からのメールを開いたら、アカウントがハックされちまったからだ!

『参加無料! 初心者歓迎! ☆3以上のレア武器1種が入手確定!』
2,000,000円の電子マネーが忽然と消えた挙句、レア武器がバールだと!?
試合終了まで生き残れんのか!?

【続く/800字】

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