川崎戦~点を取れないサンフレッチェ

2023年6月11日 川崎フロンターレ vs サンフレッチェ広島 等々力陸上競技場

 霧のような小雨が舞い降りてくるのはもう梅雨の季節に入ったことを伺わせる。武蔵小杉駅からスタジアムへの順路は傘を差さなくてもいいような気がしながらもやはり時々落ちてくる大きな水滴が気になって折り畳み傘をバッグから取り出す羽目に陥ったのだった。
 なんとなく足が重い。そう思わせてしまうのはサンフレッチェが川崎に滅法弱いことから来てる。毎回毎回大差での惨敗を喫する。もはや川崎に勝つイメージどころかせめて恥ずかしい得点差にならなければいいというくらいの後ろ向きな感情を持ってしまうのだった。
 アウェイゴール裏のゲートを潜りスタンドに躍り出るとそこに屋根が掛けられてることに安堵する。陸上競技場の為ピッチまでの距離が離れてるというマイナス面があるもののやはり雨を避けれるというのはありがたく、適度にまとめられたアウェイエリアは応援が合わせやすく一体感が生みやすいのだった。
 そんな中で発表されたスターティングメンバー。トップにヴィエイラが入り右サイド越道、右CB住吉というとこに注目してしまう。ヴィエイラのスタメンの試合、今シーズンは1回も勝ってない上に本人も1回もゴールを決めてない。そして前回対戦でPKを与えてしまった住吉。最終ラインに置いたというのは正直不安を感じたのだった。
 だがアウェイゴール裏の声援の塊は気持ちを前向きに変えてくれた。そしてそれに呼応するかのように試合に入った選手は攻撃的に前に突き進むのだった。左サイド東が縦を向く。エゼキエウがドリブルで攪乱する。そして川村は3列目からの飛び出しで攻撃に顔を出すのだった。あの川崎を圧倒してる。それは近年全く観られない光景だった。いける、いける。このいい時間帯の内に決めてやりたい。
 ところが最後の最後で制度が落ちてしまうのがサンフレッチェだった。押し込んでる状態でヴィエイラはシュートを打てない。相手ブロックの周りでパスを回し前が空き川村がミドルを放つ。が、GK上福元に弾かれる。そこからCKになるもののまるで可能性のないプレーで終わってしまう。ああ、これはまたいつものいい時間で決めることができないでその内ペースを持っていかれるパターンかと思っていたら徐々に川崎がボールを握る時間が増えていった。そしてじりじりと前進してくる。細かいパスでつないで崩しにくる方は必ず右サイド。これは住吉が狙われてるのは明白だった。確かに越道を含めた右サイドには守備の不安定さがあるのだった。
 詰めれば叩かれ放つとドリブルで仕掛ける。どこをどう守っていいか分からない混乱に陥り次第にチームの重心が重くなり引いて守るだけの展開になる。だがここを住吉は食らいついた。縦へ抜けると素早い寄せにより折り返させない。ドリブルによりカットインされるとそれも食いつきシュートコースを限定さすことでGK大迫はキャッチすることができた。崩されてない。崩されてないものの問題はボールを奪った後だった。越道との縦の関係はボールが行き詰ってしまう。それはパスが弱かったり微妙にコースがずれたり。そこにGK大迫もゴールキックをミスしてラインアウトしてしまうものだから猶更調子が悪くなる。そんな押された展開では東までもが縦パスをラインアウトしてしまって落ち着かない。なぜかこの後はパス速度が遅いなどのつまらないミスが出てしまう。それが更に川崎へ勢いを渡してしまうことになるのだった。
 ただしエゼキエウのドリブルはこのピッチでは誰よりも群を抜いていた。防戦一方な中でも右サイドでボールを受けるとそのまま全速力でゴールへ向かう。長い距離を走りペナルティエリアに入った。が、ここで撃たずに折り返し。逆サイドに味方が詰めていたもののへなへなへなという緩いパスはトラップした時にはもうコースを塞がれていた。ああ、エゼキエウ。なんで最後のプレーがいつも雑なんだよ。類まれなる技術を持ちながら今一つ実績を残せてない理由をまざまざとみせつけられているようだった。
 そしてこのまま前半を終えるとスコアレスのままであることに安堵する。だがやはり最後が決められないことに悔やみもある。そんな葛藤を抱えつつもスタンドの人の表情は明るい。それは毎回毎回まるで手も足も出ない負け方をしてる相手に対して互角には戦ってるという事実によるのだろう。ただ、右サイド越道のミスが目立ち住吉の守備が狙われてることもあってテコ入れがあるかと思いきや後半のメンバー交代はなかった。どう考えても煮詰まってる気がするだけに疑問をかんじていたものの始まったと同時に仕掛けることができた。早いタイミングで左サイドを抜けヴィエイラがゴール前へ詰める。その電光石火の攻撃は相手の意表を突いたもののやはり決められなかった。やっぱりシュートが決められないのだった。
 決められない。決められない、決められない。そうとなればチャンスの数を増やすしかない。そこで人数を掛けて攻め込むも守備ブロックを割ることができない。そこで左サイド東がドリブルでカットイン。そこからシュートを打とうとしたのかもしれないがこれを奪われるると速攻で中盤に出されてしまう。これに野津田が突っ込む。あっさりかわされ左サイドへ展開。ドリブルで速攻。全速力で戻った佐々木。ペナルティエリアに入ったダミアンのマークに着くもそこから落とされ脇坂がシュート。斜めから放ったシュートは見事にゴールに突き刺さったのだった。
 やられた。それほど多くなかったチャンスできっちり決める川崎。それに対して100万開チャンスがあっても決められないサンフレッチェの違いがはっきりと現前化してしまったのだった。
 追いつきたい。だけどこの後の攻撃でも左右のクロスは山なりでクリアされまくる。たまにヴィエイラが頭で捉えるも威力がない上に枠にいかない。そして何度も訪れるCKではまるで可能性のないキックばかりが繰り出され誰もそれに合わせることができない。ただそんな中でも相手が出てきたところで奪ってのカウンターが森島に渡った。中央からごーるに向かって突き進む。DFが追走してるものの右足で撃つには理想的な位置関係。そこで放ったシュート。が、飛んで行ったゴールはるか上にとんでいった。森島はこの前のFKでも蹴った瞬間入らないとわかるキックを蹴っているしキック精度のなさが目立ってしまった。
 それでもメンバーを替えなんとかこじ開けようとするものの依然とスコアは変わることなく時間ばかりが過ぎていく。そして最後にはハイボールの競り合いは全部サンフレッチェのファールにしてしまうという主審の迷走ぶりに苦しめられる。更に川崎は不必要に選手が倒れることにより時間を稼ぐ。その主審と一体になった時間稼ぎにより結局最後は攻め切ることもできずに終わってしまったのだった。
 1-0。負けにしてはマシなスコアである。でもまた川崎に負けたということに変わりはない。川崎に勝てない。川崎には負ける。この屈辱は今回も晴らすことはできなかった。もはや川崎もサンフレッチェには勝ち点3を最初から計算してるのではと思ってしまうのだった。
 屈辱の中、それでも選手を労う応援の声。どんな時も前向きに。そんなアウェイゴール裏の姿勢に救われるものがあった。本当に点と取る選手が見当たらない中、それでもまた次に期待しようという前向きな気分になったのは現地に行ったからこその恩恵かもしれなかった。

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