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ガンバ戦~2度追いつき逆転

2022年8月20日 サンフレッチェ広島 vs ガンバ大阪 エディオンスタジアム広島


 開始2分。パトリックとペレイラ2人の馬力のある突進に薙ぎ倒されてしまい決められてしまった。残留に向けていよいよ厳しきなってきたガンバはとにかく点が欲しかった。美しさも華麗さもないが単純でもありもっとも確実な方法で先制点を叩き込んだ。パトリック、ペレイラをターゲットにして戦車のような強引さでゴールをこじ開ける。たったそれだけで決めてしまうことに愕然とするのだった。

 早くも追う立場になったサンフレッチェ。後ろからのビルドアップで左サイドに出すとワンタッチで縦へ。そこへ満田が抜け出しすかさずクロス。ニアに飛び込んだナス。ヘディング。ゴールに向かったボールはバーに当たる。が、中へ跳ね返った。ゴールの中でバウンドする。決まった。開始早々の失点は早々にして振り出しに戻すことができたのだった。

 これにより平常心を取り戻す。ここから新加入のピエロス・ソティリウのパフォーマンスをじっくり観察する余裕が生まれるのだった。

 キプロス代表でありヨーロッパのクラブで得点を量産してる触れ込みで3日前に入団したばかりのピエロスだがまさかいきなりスタメンで来るとは思わなかった。それにより前線はナスとの2トップとなり中盤は野津田のワンボランチである。そしてこの日はなぜか藤井がベンチにも入ってなく右サイドに茶島が今季初スタメンで入った。茶島にとってはアピールのチャンスである。元々高い技術力を持つ茶島はサイドからパスを供給してゲームをつくることができる。自らも中央へ入ることで攻撃参加をすることができる。が、どこか物足りない。縦へぶち抜ける爆発力がないのだった。それにより右サイドからのクロスは簡単に跳ね返されてしまいせっかくの2トップが生かせない。その分必然的に攻撃は左サイドに偏るのだった。

 ボールは支配できる。中盤での野津田の素早いチェックが効いている。が、そのクリアの時の接触で倒れてしまうもサンフレッチェは構わずそのままプレーを続行。左からの崩しに森島に預けるとそこにガンバは猛烈な勢いで挟み込み奪い取る。間髪入れず逆襲。そこへチェックに行くはずの野津田は未だに倒れたままでノープレッシャーでペナルティエリア前まで運ばれてしまうのだった。

 3バックで対応するもゴールへ向かってなだれ込んできたガンバの選手を捕まえきれず齊藤未月に振られシュート。野上の必死な寄せにもGK大迫の横跳びにも防ぐことのできない正確なキックを叩き込まれてしまったのだった。

 ああ、またやられた。何となく弛緩した空気があったかもしれない。野津田が倒れてるのを知りながらも攻撃を続けたこと。そんな後ろのリスクがある状況での安易なボールロスト。引いて守ってカウンターというガンバの戦術にまんまと嵌ってしまったのだった。

 対してサンフレッチェは期待のピエロスがボールを持つ機会が少なくいきなりの先発は失敗だった感が漂う。そして右サイドの攻撃が物足りない為そこにテコ入れをしてくるだろうと思った。が、後半に入ってもメンバーの変更はなかったもののやはりスコアは動くことがなかった。そんな中ガンバはペレイラを交代で下げてしまう。それに対しサンフレッチェも動いてきてピエロスと茶島を下げヴィエイラとエゼキエウを入れる。満田が右サイドに移動することで2人の中央での崩しに期待をかける。

 圧倒的なボール支配の中ガンバの守備ブロックが崩せない。長身のヴィエイラをターゲットとして生かしたい。すると左サイドで受けた野津田が中央へ向けてシュート性のキックを入れる。そのボールはあまりにも強烈でヴィエイラは素通りしてしまった。が、その先にいたナス。ワントラップでボレーシュート。一瞬のプレーだった。その一瞬のプレーでゴールに向かった弾道はGK東口の触れることのできないコースへと叩き込まれてしまったのだった。

 決まった、決まった、決まった。あんなゴールを決めるとは。2点目も決めたナス、もしかして覚醒したのか。得点力がないともはやゴールへの期待はしてなかったナスがここのところゴールを続けてるのである。しかもこんなスーパーなゴールを決められるとは。

 追いついたことで再び振り出しに戻る。ここで過ちは繰り返したくない。安易な失点は防ぎたい。でもそれ以上に勢いが増した。ガンバのクリアボールを再び野津田のクッキで右サイドへ振る。拾った満田が駆け上がる。そして自ら中央へ向かってドリブル。ゴールを狙ってると宣言してた満田。相手のブロックに遇おうが打ってくる。そんな勢いで突っ込んでくるもガンバのDFが寄せる。そこで左へ出すとナスがフリー。ダイレクトでファーに流し込む。ギリギリのコースに入って行った。

 逆転、逆転、逆転。ナス、ハットトリック。いよいよ覚醒したか。得点力不足の為にピエロスを獲得したもののそれによってナスが点を取るようになってしまった。これは嬉しい誤算だった。

 ところが喜んだのも束の間、ロングキック一本でサイドをえぐられ折り返し。中央からシュート。GK大迫の掌も届かなかった。完全にやられた。が、その背後には柏がカバーに入ってたことでクリア。失点の危機を免れたのだった。

 やはり1点では危ない。だが変な奪われ方をするのはもっと危ない。そんな葛藤の中、高い位置を保ちながらもゆっくりしたボール回しを始める。ガンバのプレスも疲労からか前半のような機敏さを感じないものの左サイドで受けた柏は勝負をせず佐々木にバックパス。もう時間稼ぎに徹するのかと思ったその時縦への浮き球が入る。抜け出た柏。ペナルティエリア深く侵入し折り返し。中央のナスが触れない。すり抜けたボールに満田が走り込み振り抜いた。対角線に飛ぶシュート。強烈な弾道が飛ぶとゴールの隅に突き刺さったのだった。

 追加点。満田、久々のゴール。最後まで足を止めることない満田はチームの勝利に多大なる貢献をしてたもののこうしてゴールという数字で現れたのは至高なる瞬間だった。跳び上がらんばかりに喜んだもののこの歓喜は試合の勝利も確信したものでもあった。

 明らかに運動量の落ちたガンバの守備。それでもペレイラがいれば適当なロングボールで危機に陥ることができただろうがもはやその脅威もなくなってしまった。それにより森島を下げ松本を入れることで試合をシャットアウトに入る。だがボール支配が続くことで尚も前を向けるのだった。

 再び左サイドで柏と佐々木が揺さぶりをかける。無理はしない。崩せなければ再び背後に下がり安全策を取る。が、ここでペナルティエリアへとスルーパス。ここに走り込んだ松本。カバーに行った昌子の方が早いかと思ったもののボールを収められず松本が入れ替わりゴール前。ここで流し込む。そしてダメ押しとも言える5点目を決めたのだった。

 泰志、泰志、泰志!途中出場ながらすぐに結果を出してしまった。しかも2試合連続のゴール。この日はスタメンじゃなかったもののいよいよ出場メンバーの選考が難しくなってきた。そんな嬉しい悩みをスキッベ監督に与えることができた。流石にこれで試合は決定的になってしまったのだった。

 5-2。大量点により試合は終わった。2度追いついての逆転。そんなしぶとさと逞しさを持つに至った。これにより公式戦5連勝。昨シーズンでは考えられなかった成績である。

 長らく懸案であったFWの得点力不足も解消されつつある。そして途中出場の選手がスーパーサブとして機能する。昨シーズンとそれほどメンバーは変わってないのにこうも変わることにサッカーの醍醐味を感じる。対するガンバもいい選手が揃ってるのに上手くいかないということにサッカーの難しさを感じる。それだけにまだまだ浮かれてばかりはいられない。目の前の1試合1試合をこなしていく、そんな決意と充足感を感じているのだった。

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