横浜FC~首の皮一枚つながった引き分け

2023年7月16日 サンフレッチェ広島 vs 横浜FC エディオンスタジアム広島

 夏の日差しは容赦なく地表を照りつけ気温を上昇させていった。それがナイトゲームとしては早い時間だった故に高温の中での試合となるのだった。
 体調不良者により戦線離脱したメンバーもあらかた戻ってきてほぼ正規のメンバーが組めたもののワントップだけはいなかった。その為2年目の棚田が入ったものの本人にとっては思いがけない出場のチャンスだった。ここでどれだけインパクトを残せるか。それによって今後の起用の有無も決まってくるのだった。
 そんな気負いもあってキックオフから棚田は飛ばしていった。相手のバックパスにはプレイスバック、ボールホルダーへはチェックを怠らず高い運動量を保つ。が、それが味方のパスの受け手という場面になるとまるで機能を果たしていない。中盤からトップに当てたボールはことごとくロストしている。相手のプレッシャーに潰されてしまう。その前線での収まりのなさのせいで前線への縦パスを出せない。それによって各駅停車のような手数を掛けたパス回しからのビルドアップに頼るしかなくなるのだった。
 中央は通せないのでサイドから組み立てる。横浜FCの守備ブロックがボール方向へと寄せてくる。守備への圧力をかい潜ろうと佐々木もオーバーラップを仕掛けてくるものの崩れない。そしてその内パスミスが生じると一気に左サイドからカウンターへと持っていかれる。佐々木が戻るも追いつけない。そして折り返しにシュート。完全に崩された。が、バーの上に飛んで行った。助かった。助かったがやられてもおかしくない場面だった。
 だがその危ない場面は何度となく訪れる。それはサンフレッチェの攻めあぐねによるところも大きかった。ボールを回してるだけで一向に恐さのない展開なだけに横浜FCは守りつつも常にカウンターを狙っている。2、3人でゴールに進む様は迫力がある。一方サンフレッチェは相手の速攻を止めたとしてもそこから速い攻撃に移れない。その為ボールを持ってる時間は長いものの攻撃の圧力としては比べ物にならないくらい小手を踏んでしまうのだった。
 その為に前半を終わった時点でシュート3本しかなかった。棚田も反転してからのシュートというシーンはつくりだしたものの存在感としては希薄だった。それ故にハーフタイムで交代かと思ったものの後半もピッチに現れた。まだチャンスは与えられたのだった。ここで何とかしたい。すると前線へとボールが入るようになっていったのだった。
 それは棚田がトップでボールを収めた訳ではない。人数を掛けてる中央を避けて森島がサイドに顔を出すことになっていったからだった。そこにエゼキエウが巧みなターンで切り返す。そこでスペースが生まれ後ろから沸き上がった川村や野津田が展開に加わるとボールを散らす。そしてサイドからのクロス。が、これがことごとく跳ね返されてしまう。セットプレーもあるもののそのどれもチャンスとはならない。それはキッカーの茶島のキックにパンチ力がないのもあるだろう。ただ、ここでも荒木がヘディングで競り勝ちはするものの枠に飛ばせないという決定力不足が露呈してしまった。そう、サンフレッチェの選手はゴールにねじ込むことができないのだった。
 あと一押し。そんな想いから選手交代。野津田、棚田に代わって柏、ピエロス。すると左サイドに入った柏が1対1での守備の局面を迎える。ボールキープした相手に体を寄せるもあっさりターンからえぐられる。佐々木がフォローに入るもそれもあっさりかわされグラウンダーパス。それをファーから入った林に押し込まれる。決められた。あっさり決められてしまったのだった。
 ペナルティエリアには人数は揃っていた。それをたった一人のドリブルを止められずに決められた。点を取る為の交代をした後の失点。ダメージは大きかった。しかも残り時間を考えても絶望に近かった。
 ここにきてしりに火のついたことで怒涛の攻撃に入る。ただ、ゴール前に人数を掛ける守備に関しては横浜FCの方が上である。サンフレッチェの攻撃はまるで脅威を与えてない。いよいよ時間が無くなってのCK。これもGKブローダーセンが余裕でキャッチ。本当にセットプレーに望みがない。そしてここから攻撃につなげようとボールを落としたその時だった。ブローダーセンの背後から飛び出してきた柏。ボールを掠め取ると折り返し。そこに入ったピエロス。足の面に当てまっすぐとゴールに向かうボールを蹴るのだった。
グラウンダーで入った。決まった。追いついた。激流が走る。この土壇場で決めたことに雄たけびを上げる。そして再開を急ぐピエロス。引き分けでは納得していない。
 横浜FCボールだったもののすぐにマイボールとし、相手陣地へ押し上げる。ギリギリのプレーに局面で押し切りボックスにまで入れる。そして森島のグラウンダーのシュート。枠ギリギリを狙ったシュートは入ったかと思ったもののそのまま通り過ぎていった。入らなかった。ボール2個分といったとこだろうか。その最後の最後に入らなかったシュート、これこそがまさに今のサンフレッチェを象徴するかのようだった。
1-1の引き分け。またしても勝てなかった。でも負けなくてよかったとも言える。中断期間に入る前に負けと引き分けでは大きく印象が違う。ただ2か月もの間勝つことができなかった。得点力不足への打開が見られなかった。そして安い失点はなくならない。それらの課題にこの中断期間で改善が見られるだろうか。改善への最後のチャンス。ここで駄目なら残留争いを覚悟しなければならない。重要となる中断期間を迎えるのだった。

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