福岡戦~ピエロス初ゴール

2023年5月7日 サンフレッチェ広島 vs アビスパ福岡 エディオンスタジアム広島


 体温を奪う体温が容赦なく降りつける。そのせいでやはり観客は少なめ。4位、5位の直接対決という舞台はいささか寂しいものとなってしまった。

 この試合、サンフレッチェは切り札のドウグラス・ヴィエイラが出場停止。粘り強い守備の福岡は守備の要であるドウグラス・グローリの出場停止。お互い盾と矛を欠いてる中でサンフレッチェはピエロスとナスの2トップをスタメンとして持ってきた。

 7試合ぶりのスタメンとなるピエロス。起用の意図は不安定なピッチコンディションであるが故にサイドからのクロスが有効という判断だったんだろう。確かに前線で2枚ターゲットがいれば不確かなボールを収める上でも有利かもしれない。ところがいざ試合が始まってみるとピエロスのところでボールが収まることがないのだった。

 細かくパスを繋いでいこうとするとズレが生じてしまう。ピエロスのパスは意図が合わない。そしてボールが収まらない。前からのプレスがいなされる。その分ナスの方が簡単にボールを失わないので起点となりやすい。もはやピエロスが出ることによりピッチに1人いないのと変わらない状況となってしまった。

 そんな中で満田が負傷。後ろから激しいタックルを受けてしまった。一度はプレーを続行したもののその後断念。越道と交代してしまう。負傷交代。戦術以外での交代というのもあるが中心選手がいなくなるというのも大きな誤算であった。

 そんな不穏な空気が漂う中、福岡はシンプルにボールを前線に出してくることによって攻撃への圧力を強めていった。弾いても弾いてもセカンドボールは福岡の元に落ちていく。サイドで森島が1対1を抜かれクロスを上げられるとゴール前でクリア。だがそのルーズボールが福岡の選手に落ちシュート。荒木のブロックで跳ね返す。すると逆サイドに展開されアーリークロスを入れられると山岸に合わせられる。人数が揃っていたにも関わらずいいタイミングで飛び込まれて決められてしまったのだった。

 早くも追う展開になってしまったサンフレッチェ。だが反撃の狼煙はたちそうもない。福岡のゲームプランは見事なまでに的中し、まるでシュートまで辿り着けない。もはやこのまま前半を終えることを願った。後半への巻き返しの為にピエロスは下げてワントップに変更するだろ。そんな予想を立てたものの実際にピッチを退いたのはナスの方でピエロスは残っている。しかも野津田も下げ志知、エゼキエウの投入には予想を裏切られたのだった。

 これにより本来のワントップ2シャドーの陣形に戻ることにより勢いを取り戻す。ボールを支配できるようになってきた。最終ラインまで下げGK大迫に戻すとそこから縦パスが入る。それを右サイドに展開すると越道が縦へと運んでいく。相手のDFが戻る前にクロス。そこに飛び込んだピエロス。刺さった。ゴールネットに刺さった。手数の少ない速い攻撃で決めたのだった。

 ピエロス、ピエロス、ピエロス!

 あの前半の絶望的状況を救い出したのはピエロスだった。本人にとっても今シーズン初ゴール。やっと奪えた得点である。前半までこの試合に起用したこと自体失敗だったと毒づいてたことに申し訳なさを感じた。あの飛び込みのタイミング、ヘディングの威力。まさにこれはピエロスでならのゴールであった。

 これにより振り出しに戻ったものの勢いはこれで終わらなかった。エゼキエウが至るとこでボールに絡み巧みなボールキープからの展開をする。それにより全体の押し上げが図られる。ショートパスで繋ぎどこでギアを入れるか模索する。するとそんな流れから相手のファールを貰いFK。右サイドの浅い位置だった。東がキッカーとしてセットする。左足でのライナー性のボールを蹴った。ゴール前へ飛ぶボール。佐々木の競るライン上に向かうと次の瞬間入った。佐々木のゴール。いや、そのマークをしてた相手の頭に当たりオウンゴールとなったのだった。

 逆転。記録はオウンゴールであるものの佐々木の競り合いによってもたらされたのでほとんど佐々木のゴールと言っていい。セットプレーではあったもののこれもシンプルな形での得点。一向に止む気配のない雨の中、やはりこういう攻撃が有効であることを思い知らされた。

 これで逃げ切るか。福岡は攻勢に出るべくフレッシュなメンバーを入れてくる。サンフレッチェもここは抑えていきたい。そこでピエロスに代えて守備の山﨑を入れて後ろを厚くしていく。残り少ない時間にあって手堅い交代であった。が、前がかりで向かって来る相手は更に圧力を高めることになる可能性もあった。ここで食い止めるたものの中盤では相手の網が張り巡らしている。川村に預けたもののすぐにチェックが入る。が、ここで川村は巧みなボディフェイントで相手と入れ替わると一気に前線にスピースができたのだった。

 駆け上がる、駆け上がる川村。DFは2人が後退しながらも付いてきてる。逆に走ったエゼキエウへパス。そっちに振られたDFの動きを見て川村に出す。ゴール前空いてシュート。GK横跳びするも触ることできず。逆サイドにバシンと打ち込むことができたのだった。

 入った、入った、入った。3点目。残り時間のなさから考えてもこれで勝ったも同然だった。前半あれだけ一方的にやられてた試合は後半になって様変わりし、ついには2点差にまで引き剥がすことができたのだった。

 そしてこのまま試合終了。3-1での勝利となり2連勝をあげることができた。完全に失敗だったと思ったピエロスが同点にし、そのアシストのクロスを上げたのは満田の負傷交代で入った越道。更には野津田が交代することにより東が蹴ったFKにより2点目が演出され守備固めの選手交代の後でのダメ押しゴール。出来すぎている。出来すぎているがその3点どれも速い攻撃によって決めている。このスリッピーなグラウンドではやはりそうあるべきだった。それができないから前半は苦戦を強いられたのだった。

 この試合に勝ったことでヴィエイラがいなくても逆転できたという自信を持つことができた。そして守備のチームだと思ってた福岡があそこまで攻撃で迫力を見せたことは驚きだった。やはりチームというのは絶えず進化を辿らなければならない。その為にもヴィエイラ以外にも点を取れる選手が必要だった。その為の光が見えた試合となったのではないだろうか。

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