鳥栖戦~充足感に満ちた勝利

2023年9月2日 サガン鳥栖 vs サンフレッチェ広島 駅前不動産スタジアム


 鳥栖のスタジアムは閑散としていた。それが上位でも下位でもない無風地帯にいる緊張感のなさによるものなのかはわからない。だが中位という意味ではサンフレッチェも変わりはしない。そうなった大きな要因はアウェイで勝てなかったこと。7戦連続未勝利である。この流れを断ち切りたい。そんな想いで乗り込んだもののスタメンに驚いた。不動の3CBの真ん中が荒木ではなく山﨑なのだった。その意図が窺い知れない。今まで山﨑の出場した試合では守備のぬるさから失点したシーンが思い起こされる。致命的な守備の決壊への不安が湧き上がってしまうのだった。

 だがサンフレッチェボールでキックオフされた試合は大きな山﨑の蹴り出しを序章に前線の攻撃陣がボールを収め連動した攻撃を見せるのだった。鳥栖も最終ラインで跳ね返す。だがセカンドボールは奪い再び前を向ける。ボランチに入った満田が前線のスペースに放り込む。左に流れながらマルコスがヘディングで中へ。そこへピエロス。ダイレクトで当てるとそのままGKパクイルギュの脇を抜けゴールに入ったのだった。

 先制。開始わずか3分。幸先がいい。相手が守備を整える前に攻め切ったことが仕留めるに至った。これは勢いづく。追加点を狙っていきたい。そして実際この後サンフレッチェの一方的な展開が続いていくのだった。

 その快進撃の中、相手DFラインを切り裂く縦パスが満田から出る。最前線で収めたピエロスはDFを交わしながらもシュート。ファーサイド頭上を狙ったシュートで軌道もいい。が、これをGKパクイルギュがパンチング。その後幾度となくパクイルギュの好セーブによって阻まれてしまうのだった。

 右サイド中野も攻撃の色彩を強め高い位置でボールに絡む。そこからの展開で川村が中央を切り裂く。DFに阻まれながらも抜け出しシュート。これもGKにブロック。跳ね返りを左に展開して再び川村が受けクロス。こぼれをゴール前に詰めた中野がシュート。が、これもGKパクイルギュに止められてしまうのだった。いつ点が入ってもおかしくない状況が続いている。それなのに点が入らないのは最後の牙城として聳え立つGKパクイルギュの存在が大きかった。

 そう考えると開始直後に先制したのは大きかった。だがそれだけに早く追加点が欲しいとも言える。これだけ攻め込んでいても仕留めることができない。1点ではどこで何が起こるかわからない。そんな時中野が右サイドを突破した。サイドを駆け上がるとクロスではなく中へ折り返す。そこから中盤への落としで相手をいなすも飯田主審に当たる。だがそれでも左サイドに展開すると志知がフリーで受け絶好機へ。するとここで笛で止められた。主審に当たってドロップボールという判定だが納得はいかない。サンフレッチェとしては止めてほしくなかった。その止めてほしくなかったタイミングで主審のせいで止まったのだった。

 そんな絶好機を潰された後、波が鳥栖に行ってしまった。それまでほぼワンサイドゲームだったにも関わらず鳥栖のボールが奪えなくなってしまった。サイドに追い込むも粘り強いキープからボールを出されると裏返される。それによりフリーの選手が生まれどんどんゴールに近い位置に押し寄せてくる。圧倒的に右サイドが狙われる。中野が1対1で対応する場面が増えてくる。そしてシュートを撃たれるも枠には飛ばなかった。中は十分締めている。山﨑の入ってるCBは崩れることはなかった。が、明らかにこの流れの悪くなったのは主審がプレーを止めてからだった。そこから鳥栖にスイッチが入ってしまったのは間違いないことだった。

 後半に入り仕切り直し。それでも流れは若干鳥栖に傾いている。チームの重心が低くなる。DFに戻されたボールにはピエロスが食らいつくも引き剥がせない。それでも右サイドに流れた加藤にボールが入ると相手の寄せもフィジカルで跳ね除けることにより持ち上がりが生まれる。それにより全体に押し上げが生まれる。こういうとこが加藤の利点であった。単純なパスワークだけに頼らず個での打開ができる。そこで再び息を吹き返すもフィニッシュに至らない。その為にピエロスからヴィエイラへとワントップの交代を行いターゲットを据えるのだった。

 すると右サイド中野が切り返しで相手マークを外す。ゴール前の最終ラインへ向けてクロス。大きく弧を描いたスワーブしたボール。そこに当てたのがヴィエイラ。頭でファーへ流し込む。GKパクイルギュが飛びつくも追いつかずバウンドしたボールが入ったのだった。

 決まった、決まった、決まった。跳ね返され、跳ね返され、跳ね返された最後の牙城をやっと突き破ることができた。そして久々のヴィエイラのゴールだった。勝てない時期、もはやヴィエイラは終わったかと思っていた。それでもこうして決める時は決める。やはりこうやってジョーカーとしての役割が一番生きるのを改めて認識させられるのだった。

 2点差にしたことでかなり有利になったことでもはやイケイケムードとなる。すると中盤からの縦パスを最終ラインで受けた満田がターン。そのままゴールに向かう。そしてGKと1対1。そこを巧みな溜めからGKの動きを誘いシュート。見事仕留めたのだった。この3点目に歓喜する。が、VARの干渉。絶妙なタイミングだと思ってた満田のターンはオフサイドの判定が出てしまったのだった。

 トドメを刺したかと思ったもののこれで余裕はなくなることでヴィエイラはサイドでボールキープの時間稼ぎをする。2人に詰められるも上手くスローインに逃げる。そしてそのスローインも再びキープからスローインへ。こういう時のヴィエイラは本当に頼りになる。そして最後はCKにすることでタイムアップ。0-2で終えることができたのだった。

 アウェイ8試合ぶりの勝利。しかも山﨑が出場したことで経験も積むことができた。同じ今シーズン加入の中野も縦への意識が強く観られシュートを打つ場面も観られた。チームに上積みができ、大きな1勝と充足感に満ちることがきるのだった。

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