セレッソ戦~ヴィエイラの一発

2023年4月29日 セレッソ大阪 vs サンフレッチェ広島 ヨドコウ桜スタジアム


 上空は雲に覆われていた。いつ降り出してもおかしくない天候はピッチをスリッピーにさせてるように見えた。試合開始前に水を撒くチームが多い中でその必要性を感じさせないものがあった。

 そんな浮かない天候とは違ってセレッソには燃えたぎるものがあったはずだ。昨シーズン4度あった対戦で全て負けてしまった。しかもそのどれもがわずかな差でしかなかった。むしろチームの完成度としてはセレッソの方が上だったかもしれない。それだけにこの一戦に賭ける想いは並々なるものがあっただろう。

 対するサンフレッチェ。前節の負けで連勝が止まり、再び仕切り直しという感のあり、結果如何によっては上位にも下位にも向かう可能性が出てきた。それだけに重要な一戦である。とはいえスタメンは前節と変わらず。負けたとはいえ出来は悪くはない。確かに点さえ取れてれば勝てた。決めるべきとこで決めれないのは大きな課題なのだった。

 それだけに多くのシュートチャンスをつくるべく試合開始からプレスを仕掛けていくのだった。前線から追い込みGKまで下げさせる。後ろで繋いでくるがナスも満田もプレスの手を緩めない。そして中盤へと切り抜けられると今度は川村が走り野津田が狩る。それによりマイボールになる時間が多くなるのだった。

 左のスローインからナスが受けるもマークがつきつつも裏返す。ゴールまでの広大なスペースをドリブルで突き進みシュート。GKキム・ジンヒョンのブロック。リフレクションを越道。が、ゴールの上を越えていった。その後もCKからナスが合わせる。それもGKキム・ジンヒョン。こぼれを川村が追うもシュートはブロック。決めきれない。そんな決定力のなさに喘いでいるとロングボール1本、サイドに振られるとまた逆サイドに振られカウンターに持っていかれる。自陣深く抉られクロス。ゴール前で合わせた為田。飛びついたGK大迫。一度はファンブルしたものの抑え込んだ。守った。あれだけ一方的に攻め込んでると思ってたとこで乾坤一擲のようにゴールに結びつくプレー。やはりセレッソは油断できない相手だった。

 決めたい。前半の内に決めたい。ボールは持ててはいるものの最後の最後はやらせない。もはやセレッソも前半は耐えて後半に備えてる。そんな気がしてきた。それだけに前半の内に決めておかないと後半にペースを変えられるという不安に苛まれるのだった。

 ところがこのままスコアレスのまま前半を終える。そこに不安を覚えるも後半もメンバーは変わらなかった。あくまでもやってるサッカーは悪くないという判断。あと一歩。あと一歩で仕留められる。一層のギアアップをするべく尚も運動量を高めてプレスでのボール奪取、全体の押し上げをやっていくのだった。

 相手ブロックのある中、中央で川村が受けると自らドリブルで切り込む。スルスルっと抜けて前が開いてシュート。が、これもまたGKキム・ジンヒョンがキャッチ。すると今度はセレッソがワンタッチパスでゴール前まで侵入していくと折り返し。レオセアラに渡る前にGK大迫飛び出しキャッチ。食い止めた。セレッソは手数の少ない攻撃でまたしても決定的場面を作り出したのだった。

 やはり早めに決めたい。そこでナスに代え切り札のヴィエイラを出した。するとサイドからボールを引き出しリターン。それを満田がシュート。これも枠を外してしまう。ああ、満田、お前もか。後半に入り雨が激しく降ってきたとはいえ本当に最後決めきることができない。そこで最後の切り札としてエゼキエウを投入したのだった。

 巧みなドリブルがアクセントを生む。だがセレッソも残り時間が少なくなると防戦一方ではなくなってくる。速く鋭い攻撃。跳ね返したらセカンドボールからミドルを放つ。枠に入らなかったものの一発が恐い。そして時間が進む中、スローインからの流れで野津田がミドルを狙う。DFに当たりリフレクション。東のシュートはまたしてもGKキム・ジンヒョンの真正面。突き破れない。最後の壁がどうしても突き破れないのだった。

 切り札の投入もそう毎回毎回結果を出すことはできない。あれだけ攻めておきながら結局引き分けで終わるのか。もはや時間はない。中盤を省いて縦へ放り込んでいく。簡単にクリア。そのセカンドボールを野津田が拾い左へ出す。オーバーラップした荒木が更に縦パス。そこに抜け出したエゼキエウ。ゴールを横切るクロス。GKを素通りファーに突っ込んだヴィエイラ。押し込んだ。決まった、決まった、やっとこじ開けたのだった。

 雄叫びを上げるヴィエイラ。スタメンで起用されないフラストレーションを爆発させたような咆哮を上げる。寄り着くチームメイトを振り払うように尚もその激昂は治らないのだった。

 その勢い余ってコーナーフラッグを蹴飛ばしてしまいイエローカードを貰ってしまった。それはやり過ぎだったもののそれだけに溜まったものがあったのだろう。エゼキエウ、ヴィエイラのコンビは本当に結果を出す。それだけに限られた時間の出場というものにもどかしさを感じるのは当然のことなのだった。

 残り時間をやり過ごし無事0-1で勝利を収めることができたものの結局16本の枠内シュートがありながら決めたのはヴィエイラの一発。それなら最初からヴィエイラを出せばもっと楽に勝てるような気もする。だけど毎年怪我で長期離脱をしてしまうだけに慎重にならざるをえない。その為にもヴィエイラが出る前に点を取りたい。そんなジレンマを象徴するような試合となってしまった。

 川村、東、満田。みんなシュートは打っている。打っているけど入らない。勝っているけど悩みは続く。勝利に酔いつつも楽観はできない。だけど今日だけはこの勝利を祝いたいのだった。

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