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鹿島戦~結果を出した交代選手

2022年8月6日 鹿島アントラーズ vs サンフレッチェ広島 カシマスタジアム


 原爆の日。試合前に黙祷。静粛に包まれたスタジアム。サッカーができる幸せを噛み締めつつ平和への祈りを捧げる。

 黙祷後、ピッチに広がった選手。その顔ぶれは3日前と一緒だった。この日は幾分気温は落ち着いてるものの連戦は無理があるような気がした。それにも関わらず開始のホイッスルが鳴ると前線高い位置から高強度のプレスを仕掛けるのだった。

 しかし、上手くすり抜けられる。しかも前線の鈴木優磨やエベラウドに入ると巧みなフェイントで抜けられる。単純な高さ勝負だったら荒木は跳ね返してしまうものの胸トラップしたボールは収めてしまい味方の押し上げを助けるのだった。

 鹿島の攻撃は続きサンフレッチェ陣内ばかりでボールが回る。やはり連戦の疲れがあるのだろうか。だがせっかくマイボールにしてもトップのベンカリファが収めてくれない。どことなく機能してなくて空回りしてる。そんな焦りからか相手のクリアにアフターチャージをするとイエローカード。その後藤井、荒木も守備で後手を踏むことでファールをしてしまいカードをもらってしまうのだ。前半の内に既に3枚。スコアは動いてないもののそれだけで劣勢になったように感じじるのだった。

 ハーフタイムを迎えぼくらは前半について語り合う。

「五分五分ですねえ」

「やっぱり鈴木優磨とエベラウドは恐い」

「満田せっかくゴール前まで行ったのにパス出すんだもんなあ。あれを打ってこそ満田なのに」

「森島の角度のないとこからのシュートもいいシュートだったんだけどな」

 ボールをつなげる鹿島に対してカウンターでチャンスを演出するサンフレッチェという構図だった。それだけに満田が自分でシュートせず得点力のないベンカリファへ横パスを出してカットされたことについては誰もが落胆を感じているようだった。

 後半、そのベンカリファに代わってドウグラス・ヴィエイラが入る。これは定番の交代であるが、これによって前線にターゲットができ前線でタメができるようになる。競り合いのボールも頭で合わせて味方につなげる。それによりチームが前向きになることができた。切り札となりながらも怪我が多くてフルで使えない。なんとも悩ましい選手である。

 これにより右サイド藤井も縦へ勝負するようになった。抜けなくてもアーリークロスを入れる。そのほとんどが跳ね返されたり中で合わなかったりするのだが前半中途半端なプレーをしては相手にカットされるプレーを繰り返してただけに清々しさを覚える。何度もチャレンジする藤井にぼくらは湧き上がるのだった。

 セカンドボールを拾い圧倒的に攻撃の時間が続く。とはいえ鹿島の守備は崩れない。その打開の為に最終ラインから上がった塩谷がミドルシュートを放つもののことごとく枠外。そんな攻めあぐねをしてると鹿島はロングボール1本でエベラウドに繋いでしまう。それをスイッチに怒涛の逆襲を受けてしまう。サイドに出た鈴木優磨が入れたクロスを合わされる。やられたと思ったものの枠を外れて助かった。試合を有利に進めてるようで鹿島はその隙を虎視眈々と狙っているのだった。

 最後のひと突きが欲しい。その為のメンバー交代としてエゼキエウと野上が森島と藤井に代わって入った。スピードとドリブルを持つエゼキエウはまだしもスピードで何度も右サイドからのクロスを送ってた藤井を下げるのは勿体無い気がした。野上も攻撃力あるとはいえ本職がDFなだけにこれでどれだけ活性化できるのか疑問もあったものの藤井がカードを貰ってるというのが気になったのかもしれなかった。

 CKも取れるが跳ね返されてしまう。ヴィエイラが抜け出してシュートするも力無く外れてしまう。満田もボックスに入り今度は打ってくるもののGK真正面。やはり最後の最後で食い止められる。そこで左サイド柏に代わって本職ボランチの川村が入る。確かに左からの崩しがなかったものの他にピースがないのでしょうがない。

 だがその川村、攻撃に出た鹿島のボールを左サイドで奪いエゼキエウに出したことでカウンターが始まる。中央をドリブルで駆け上がるエゼキエウ。途中相手からのチェックを受けるもののスルッと抜け出すことで前が開く。右に上がった野上に出す。ダイレクトでクロス。そこへ飛び込んだヴィエイラを通り越すとその後ろを走ってた川村。足に当てるだけであったがぼっかり空いたゴールに捩じ込んでいったのだった。

 決めた、決めた、決めた。先制点が決まったというのもあるが川村のJ1初ゴールに震えた。しかもエゼキエウのドリブルに始まり野上のクロス、ヴィエイラの潰れに川村という全部途中交代の選手で決めたというのが凄かった。これはマジックである。采配のマジック。こういうの昨シーズンはなかったなと思い出しつつもぼくらはお互いにこのゴールを祝福し合うのだった。

 残り時間は少ない。このまま逃げ切るのも現実的な時間だ。だけどそんな逃げ腰だと鹿島は逆に猛攻を仕掛けてくる。事実、そこからの鹿島の追い上げる気迫はすざましかった。一人を止めたとしてもこぼれ球を拾われ再びゴールに向かわれる。密集地に入れば巧みな技を使ってマークに着くDFを剥がそうとする。鹿島は守備でも粘っこく隙がないが攻撃においても粘っこく焦点を定めさせてくれないのだった。

 アディショナルタイム5分。長い。何としてもこの1点を守りたい。ただ、開始から獅子奮迅の動きをしてた鈴木優磨も流石にスタミナが切れてきたみたいだ。中盤でフリーで受けた際に出した縦パスの精度が悪く佐々木がカット。そこからエゼキエウに出す。単独でドリブルで上がるエゼキエウ。左のボックスまで持ち上がった。味方の上がりを待つか。DFとの駆け引きの中更に戻ってきた相手DF。そこで一瞬の駆け引きの中、たった一点できたシュートコースに打った。速い弾道。ファーサイド。弧を描くことでゴールに叩き込まれていったのだった。

 ゴール、ゴール、ゴール。決まった、決まった、決まった。エゼキエウもJ1発得点。今まで大した活躍をしたことのないエゼがこんなにも決定的なプレーのできる選手だというのを初めて知ったのだった。

 流石にこれは勝利を確信した。残り時間も無失点のままやり過ごしこのまま0-2で終わることができ、アウェイゴール裏は立ち上がって勝利を祝すのだった。

 連戦になっても変えなかったスタメン。それで打開できず頭打ちかと思ったら交代した選手が試合を動かした。これによってまたスタメンも変わってくるかも知れない。一度は沈みかけたかと思ったチームもまた再浮上してきたのだった。

 試合を終え挨拶に来るサンフレッチェの選手を待ってたがその前に鹿島の選手がアウェイゴール裏を通った。思わずノリで拍手をしてしまったが敗戦にも関わらず鈴木優磨は相手サポーターのぼくらにも手を振っていた。態度が悪いということで批判の対象になることの多い選手だが実はいい人なのかもしれない。そんなほんの些細なことでちょっと親近感を持ってしまった試合後の幸福感なのだった。

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