天皇杯京都戦~決勝進出

2022年10月5日 天皇杯準決勝 京都サンガFC vs サンフレッチェ広島 サンガスタジアム by KYOCERA

 お互い紫をチームカラーとするチーム同士の為、アウェイを含めて全て紫で覆われた試合となった。ホームの京都はリーグ戦からガラッとメンバーを替え、サンフレッチェは出場停止の塩谷を野上に替えた以外に固定メンバーである。コンディション面では京都の方に分があることで京都は試合開始から猛烈なプレスを掛けることで優位性を生もうとするのだった。
 そんな京都の圧力に戸惑ったものの時間の経過と共にボールをコントロールするようになり気づいたらサンフレッチェのペースで試合が進んでいくのだった。ただ、高い位置までは運んでいけるもののゴール前の厚い守備を崩すことができない。そんな攻めあぐねをしている内に挟み込み奪われるとトップのウタカを目指したロングボール。これを収められるものだから京都はぐんぐんと上がりをみせる。DFがチェックにいくものの止めることができない。最後の最後、シュートまで持ち込まれた時には素早い寄せによって枠を外させることで助かるのだった。
 正直なとこチームの完成度はサンフレッチェが上だ。だが、ゴールに迫った時の迫力が明らかに京都の方が迫力がある。その為にも早めに先制点を取りたい。サイドを起点にショートパスを繋げていくものの崩せない。そんな時、満田が強引にドリブルで割って入った。敵に囲まれる中、右のペナルティエリアに入る。そこからクロス、もメンデスがブロックに入る。リフレクションのボールはラインを割りCK。そしてCKの体制に入ったところで中断が入る。VAR。確かにメンデスの腕には当たっていた。だが一瞬のことで判断できなかった。長い沈黙。そして主審のVARチェックの後下された判定。ペナルティスポットを指した。PK、ハンドという判定が下ったのだった。
 激高する京都の選手。対して涼しい顔でペナルティスポットへボールを置きに行くヴィエイラ。そして落ち着きを戻したピッチでそれぞれがPKの配置につくと主審の合図。ヴィエイラの助走。ステップを入れたキック。GKウッドが飛ぶとコース読みは合ってる。それでもタイミングのズレとコースの際どさにより掌に振れることもなくバシュッという音と共にゴールに吸い込まれたのだった。
 先制。さすがはヴィエイラ、PKは上手い。これにより攻めなくてはいけなくなった京都には隙が生まれる。更なる追加点で畳みかけることができる。そんな期待に胸膨らませたものの前半はこのまま終え、メンバー交代なしで後半を迎えるのだった。
 前線へボールを出せばヴィエイラが長身を生かして収める。それにより森島、茶島が前を向くことで右サイドを上がっていくことができる。それにより逆サイドの柏も上がりクロスが流れても拾いにいくことで攻撃に連続性が生まれる。そこに満田が絡みオーバーラップした佐々木が縦へスルーパスを出すも柏は追いつけずに終わってしまう。攻めてるようでシュートまでいってない。京都の守備は粘り強く奪ってから前線めがけてロングボールを蹴ってくる。だがそれも難なく対応してたものの交代でイスマイラが入ったことにより雲行きが怪しくなるのだった。
 それでもウタカが下がった時には正直安心した。これで前線での脅威は提言されたと。だがイスマイラはそれ以上の存在感を発揮し、ウタカ以上のボールの収まりとゴール前での迫力を見せるのだった。これは不味いとばかりに追加点を狙うもののやはりシュートまでたどり着かない。そんなもたつきを見せてるとフィニッシュにたどり着かないままボールを奪われる。そこからボールホルダーへのチェックは怠らないものの京都のパスはそれらの選手をするすると抜いていく。あれよあれよという間に前線のイスマイラにボールが渡りドリブルで仕掛けられる。立ちはだかる。荒木と野上。中央へ流される。荒木がブロック。が、リフレクションがイスマイルの下へ落ちるとダイレクトでシュート。ゴールに叩き込まれてしまったのだった。
 追いつかれた。試合は完全に制圧してたものの決めきれず残り時間10分というとこで決められてしまった。勢いに乗る京都。対してサンフレッチェは負傷でヴィエイラからナスに交代したばかり。そして逃げ切りへと森島、茶島をエゼキエウ、住吉の交代を準備してる最中だった。それでも予定通り交代を進めるも前線のターゲットとしてヴィエイラがいなくなった影響は大きく京都も引いて守るのではなく前に出る守備をしてくるようになりボールが行きかう場面が増えるようになる。そしてそのまま90分を終え延長戦へ。次々に若手選手を入れてきた京都はよりアグレッシブにゴールへの圧力を高めてくるような空気があった。
 前後半15分の延長戦。逆転できるという機運を持った京都がよりアグレッシブに向かってくる。それでも自陣への戻りを怠らず人数を掛けて蓋をする。だがボールを落ち着ける先がない。住吉がエゼキエウへの縦パス。大胆な試みだがそんなパスが通るはずがない。が、最前列で待ち構えてたエゼキエウはこれをヒールで流す。走りこんだナス。だがゴール前に味方の上りはない。そう思った瞬間放ったシュート。それはファーに向かって地を這っていきそのままゴールに突き刺さったのだった。
 入った、入った、入った。ナス、こんなシュート打てるんだ。住吉、エゼキエウ、ナスという交代で入った選手だけで決めた。采配も当たり役割も全うした素晴らしい得点だった。
 完全に逆を突かれた京都に焦りが生まれた。それにより前掛かりになるものの局面のデュエルでボールを奪いきると満田が単独で持ち上がる。重心が重くなってるサンフレッチェはサポートがないもののゴール前まで運ぶことによりそれで時間を稼ぐことができると同時に満田の底なしの体力に感服するのだった。
 延長戦の後半に入りいよいよ圧力を高める京都。セットプレーでは2mもあるGKマイケルウッドまで上がってくる。それを抑え込むと松本、ピエロスを入れ残り時間を使っていこうとする。前線へボールが来るとピエロスがコーナー身体を張ってボールキープ。粘る、粘る、粘る。ピエロスの身体の強さが頼もしい。そして奪われはするもののスローインに持ち込むことができる。アディショナルタイム2分過ぎたはずだと思ったもののもう1分延長とのこと。一体いつまで伸ばすんだ。ボールを入れると再びマイボールのスローイン。また時間を稼げる。そしてサイドでスローインを繰り返していく内に鳴った。タイムアップの笛。延長戦を制し、見事1-2で勝ち切ることができたのだった。
 歓喜する選手とサポーター。それは疲労感からの解放でもあった。最後の最後まで本当にわからなかった。土壇場で追いつかれ明らかに相手の方が勢いはあった。そこから勝ち越したチームには改めて畏敬の念をいだいてしまうのだった。
 ルヴァンカップ、天皇杯、2つのカップ戦で決勝。今回は本気でタイトルを獲るつもりだったが為に最低限のノルマを果たしたというとこ。歓喜に揺れる中、そんな冷静な視点も持ち合わせながら決勝の舞台に思いを馳せるのだった。

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