湘南戦~希望なき敗戦

2023年8月5日 湘南ベルマーレ vs サンフレッチェ広島 レモンガススタジアム平塚

 熱い熱い日中だった。それでも日が落ちてくると日差しがない分マシになるだろうとスタンドに上がるも観戦客に挟まれた席では熱が籠ってるような感覚があった。湘南といえば以前のJ2の頃の記憶からもっと客席がガラガラというイメージがあったものの両ゴール裏はぎっしり詰まり、互いの応援が熱量を発しているのだった。
 その歓声の中、アップで出てきた選手。加藤の加入、ピエロスの復帰で攻撃陣が活性化されるはずである。特にピエロスはサイドからのクロスをガツンと入れる能力を見せ、得点力不足への解消への突破口へとなることへ希望を見出してくれるのだった。森島が移籍したことによるマイナス要素はこれで補って余りあるとも考えられた。
 ところがいざ試合が始まってみるとボールが前までいかない。後ろで回してばかりで中が閉じられてしまっている。そこで右サイドを使っていくものの中野のところで詰まってしまう。そこで中盤を飛ばし一気にロングボールで裏を狙ってもこれもDFに悠々と回収されてしまう。打つ手なし。せっかく前線に加藤、ピエロスというアタッカーを入れたのにシュートシーンまでたどり着かないのだった。
 ただ、そんな中でも新戦力加藤は前線でのボールキープで粘りを見せる。2人囲まれ3人囲まれても離さない。この間誰かサポートがほしい。が、来なかった。誰も来なかった。加藤の前線での踏ん張りは単独のプレーで終わってしまい何の打開にも生かされなかったのだった。
 そういうチーム全体の攻撃への姿勢の乏しさは湘南に活力を与えた。マイボールにするとがッと沸き上がるように前線へ人数が掛かってくる。そして右サイドから崩しにかかると中野は対応に苦慮するも塩谷が上手いポジショニングとボールさばきで奪い取る。が、そこからカウンターへつながればチャンスになるもののそこで詰まってしまう。奪ってもパスの出しどころがない。ここで相手陣地に向かって走ってる選手がいない。その結果守備が固められ得点力のないチームは余計得点しにくい状況に陥ってしまうのだった。
 膠着状態の前半だった。何かで打開したい。その為に後半メンバーを代えるのは予想できたものの唯一攻撃にアクセントを与えられてたエゼキエウを上げ東だったのには驚いた。しかしこれは後の情報によると脚を痛めたということでの負傷交代だった。とはいえそんなことを知らないぼくらはこれでギアを上げると思ってたその時、つまらないミスパスで一気にカウンターを食らってしまう。バイタルエリア真正面へ出たパスを佐々木は追いつけない。そしてワントラップからシュート。強い弾道がゴールに向かって飛びGK大迫も止めることができないのだった。
 失点。また先に失点。それまでピンチらしいピンチがなかったのにほぼ初シュートで決められたようなものだった。そしてそれがメンバー交代後だったことも大きなショックだった。上手くいかない。何もかも上手くいかない。かくして得点力のないチームは早くも追い込まれてしまったのだった。
 攻撃に軸を移しスクランブル体制に。後ろを削りヴィエイラを入れ柴崎を入れ柏を入れてきた。だが打開の目途は立たずロングボールに頼るようになる。そうするとゴール前を固めた湘南は余計のこと守りやすくなり跳ね返す。跳ね返して跳ね返して跳ね返す。頼みだったピエロスはというと単純なパスすらも足元に収めることができず完全に流れを止めている現状にナスとの交代を告げられた。得点力のないナスに代えられてしまう辺り完全にピエロスのパフォーマンスは期待外れだった。
 攻めて攻めて攻めまくるも簡単にクリアされる。最後はGK大迫までCKに加わったものの全く意に返すことなく防ぎきると試合終了してしまった。1-0、点差こそ1点差だったもののその内容は天と地ほどの差がある屈辱的なものだった。
 どうしてこんなサッカーしかできないのだろう。中断期間何をしていたのだろう。選手たちは負けた試合を振り返って改善点とか考えないのだろうか。監督はこんなサッカーに未来があると考えてるのだろうか。そもそもこれがお金を払って見に来てもらうサッカーなのだろうか。そんな疑問が浮かび上がっては渦巻いていくのだった。
 歓喜に沸く湘南サポーターの声援を尻目にそそくさとスタジアムを後にしたのは惨めだった。そして失意の中、平塚駅に着くと今度は電車が不通。回復の見通しが立たないとのアナウンス。打ちのめされた。あらゆることで打ちのめされた。恐ろしいまでの絶望の中、翌日まで夜を明かす場所を求めて平塚の街を徘徊していくのだった。

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