マリノス戦~完敗

2022年7月6日 横浜Fマリノス vs サンフレッチェ広島 日産スタジアム
 
 新横浜駅の雑踏には青いマリノスのシャツ姿が混じっていた。そんな中にわずかながらの紫の姿に勇気づけられる。上位対決、共に戦おうと胸の内にエールを贈るのだった。
 そんな混雑した駅ビルの中を抜けるとスタジアムに向けて歩いていくに従ってサッカー観戦客だけになっていく。そして現地にたどり着くもそこからコンコースをぐるっと回らないといけない。ああ、無駄に大きくて疲れる。そんな徒歩の徒労感も相まってムアっとした蒸し暑さを感じるのだった。
 声出し解禁試合。一部エリアでは応援できるものの色々な制限の多さから面倒になり一般席に座る。改めて自分の根性のなさに情けなくなるもののゴール裏に立ったサポーターが響き渡る時、サッカーの臨場感に酔いしれる。これがアップで入ってきた選手にどれだけの後押しになるだろうか。
 アップが終わり照明が落ちる。ライトアップされたピッチに選手の入場。だだっ広くて臨場感に欠けるスタジアムだが、こういう演出だけには長けている。そんな音と光の渦巻きが溶け、試合開始のホイッスルが鳴った。
 DFから繋ごうとするサンフレッチェに対してマリノスの寄せが速く後ろに戻しまた戻しとして最後にはGK大迫まで戻されるとロングキック。それが見事に前線に繋がらずマリノスの攻撃が続く。やたらと左サイドから崩される。最後ゴール前へ入れられたとこで何とか食い止める。ピッチの半分だけで試合が進む。一方的。序盤からのあまりもの一方的な展開にもはや勝負はあったような気がしていた。
 ところが満田のドリブルで粘り強引にでもシュートまで漕ぎ着けるとそこから徐々に前に押し寄せるようになる。相手のビルドアップにたいしてもプレスが嵌まりロングキックがアバウトになる。そして再びボールを拾い前を向ける。マリノスのゴールへ襲い掛かる。組織だった守備網はなかなか突き崩せないもののミドルシュートを放っていく。が、枠に入らない。攻めてはいるけど決めきれないという得点力の低さが露呈してしまうのだった。
 そこに気を良くしたマリノスは再び前を向く。中盤で潰しにかかるも逆に潰された。そのこぼれに再びアタックするとそれも潰された。その2つのプレーはマリノスの視界を完全に広げてしまい左サイドに展開される。間髪入れずクロスを入れられるとファーサイドにピンポイントで合わされる。そして狙い澄ましたヘディングシュートを綺麗に決められてしまったのだった。
 潰しにいった中盤が2人続けて裏返された時点で勝負あった。そしてサンフレッチェがあれだけ攻めてもこじ開けれなかったゴールをいとも簡単にこじ開けられてしまったことに徒労感を感じざるを得なかった。
 それでもまだ1点差。後半にかけて右サイドに藤井を入れスピードによる打開を試みる。これにより前半全く右からの展開ができなかったのに反して活性化が始まる。前掛かりになり攻撃への比重を高める。が、決まらない。セットプレーでも全て競り合いで負けてしまう。そして何よりトップのベンカリファがシュートすら打てないのだった。
 そんな攻めあぐねがまたしてもマリノスに反撃の機会を与える。早めに潰そうとCB荒木が当たりにいくと逆に潰された。それによりあっさりと裏返されると左サイドへ展開。そこからクロス。そしてファイサード合わせられ簡単に追加点を決められる。呆気ない、あまりにも呆気ない失点だった。
 2点差。これに追いつくべくベンカリファに代わってサントスが入る。松本に代わって柴崎が入るとますます前への推進力が増していきゴールへの予感は高まる。が、やはり決めきれない。せっかく藤井が絶妙なタイミングでクロスを入れたものの中で合わせた柴崎のシュートはバーのはるか上を超えていく。そうやって時間がなくなっていくと遂には満田を棚田に代えてしまう。あと一押し、あと一押しまで迫ってるゴール。だが棚田はペナルティエリアで受けたボールをバックパスをしてしまう。それによりみすみすチャンスを潰してしまったのだった。
 そんな不必要な慎重さは藤井にも見られ、ボールを持つとまず止まって考えてしまう。それが相手守備陣に時間を与えいくらクロスを入れようとはじき返されるポジショニングを取られてしまう。更にサントスは相手のミスにより完全にGKと1対1になったのに決めきれない。肝心なとこでオフサイドになる。余計なとこで変なフェイントを入れて手詰まりになる様子には哀しみすら覚えてしまうのだった。
 そんな攻めあぐね、またしてもマリノスに躍動感を与えカウンターから決められる。攻めて攻めて攻めまくってシュートも打ってるのに決められないサンフレッチェに対して実に効率よく綺麗に決めてしまう。もはやこれはストライカーの能力の差を認めざるを得ない。サントス、ベンカリファ、2人で3点しか取ってないという事実が全てを物語ってしまったのだった。
 3-0。ぼろ負けである。いい試合をしてたという弁護はついていくだろうがノーゴールというのは辛い現実に違いなかった。虚ろな感情のまま仲間と帰路へ向かう。当然のことながら愚痴の言い合いになるものの、それでも最後は昨シーズンよりはマシだという結論に達した。そう、夢も希望もなかった昨シーズンに比べれば。だけど永井が移籍し、ドウグラス・ヴィエイラが負傷してしまった今、ベンカリファとサントスでどうやって戦っていくのか考えていくと気が遠くなっていきそうなのだった。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?