札幌戦~蟠りのできた開幕

2023年2月18日 サンフレッチェ広島 vs コンサドーレ札幌 エディオンスタジアム広島


 開幕。それは毎年毎年胸踊る瞬間である。今シーズンを占う試合。ある意味順位にとらわれることもないために心から楽しめることができる。スキッベ監督の2年目。果たしてどんなチームに仕上がっているのか。

 対戦相手はミシャ率いる札幌。これは因縁めいてる。今のサンフレッチェの基礎を創った監督。それは札幌にも絶対に負けられないというプライドを与えてるはずだ。しかも昨シーズン後に移籍した浅野が早速スタメンとして現れた。これは熱い。感情は熱くなるものの天候はそれに水を差すように小雨が降り注いでいた。もしかしたらこれが観客動員にマイナスの影響を与えたのかもしれないのだった。

 靄がかったピッチは視界がぼやけている。それでもトルコ大地震に対する黙祷が行われた後、時間通り試合は始まったのだった。前線から追い込むプレッシング。高い位置からのプレスによって相手を押し込める。やはりそのコンセプトは今シーズンも変わらないようだった。

 そんなサンフレッチェに対して札幌は中盤に当てると裏へ引き剥がすようなパスを狙ってくる。が、そこは3バックが危なげなく跳ね返す。そして塩谷が果敢に攻撃にも参加してくることで前を向くことができる。ただ右サイドに渡すとそこからの展開ができない。大卒新人の中野。縦へ抜けることができない。寄せに対していなすことができない。ああ、やはりプロの壁は大きかったか。昨シーズン初戦に出場した時と何ら印象は変わらないのだった。

 それだけに満田がサポートで右に入る。そして右のポケットに入りクロス。ゴール前を横切るクロスは誰も合わせることができないのだった。

 その後も満田のCKを荒木が合わせるもポスト。相手クリアを拾った塩谷の展開によりナスが右サイドに流れクロス。これも中で誰も合わせられない。そして塩谷の持ち上がりから前線へ流れるようなスルーパスを川村受けるもシュートは枠の上。決められない。本当に決められないことに歯噛みするも試合を優勢に進めていたことで後半へと期待をつなげていくのだった。

 依然として続けるハイプレス。後ろからのパス回しさえも全身全霊をかけて追いかけていく満田。走る速度よりもパスの方が速い。徒労に終わるかもしれないがしぶとくまとわりつくプレスは相手を追い込み奪い切った。そこから縦へ抜ける浮き球。そこに反応した川村はペナルティエリアを切り裂くとDFを引き剥がし折り返し。ゴール前にナス。シュート。が、これが枠上に逸れてしまうのだった。

 これは入れたかった。入らないにしてもせめて枠には入れて欲しかった。前線でボールを収めることに関してはこの上ない能力を持つもののフィニッシュができないのである。そもそもその両方が備わっていればサンフレッチェには来ていないので致し方ない面もあるものの、ワントップに得点力がないというのは苦しくもあるのだった。

 それだけにシャドーに入った川村がシュートを狙う。相手カウンターの芽を摘むようなパスカットを野津田を見せると一気に前線を切り裂くパス。全速力で受けた川村はその勢いのままシュート。が、これをGK菅野がブロック。更に左サイドから野津田の左足による鋭いクロスに飛び込んだのも川村。が、これもGK菅野のブロック。枠には入れてるもののその都度GK菅野が立ちはだかるのだった。

 そして左からのCKは野津田のアウトスイングのボール。これを中央でフリックするとファーで飛び込んだ川村。叩きつけたボールは再びGK菅野によって掻き出されてしまう。ああ、またしても菅野かよ。そう頭を抱えたもののある疑念が浮かぶ。あれ入ってなかったか?当然のことながらVARのチェックも入ったもののノーゴールの判定。だがその時流れたリプレイの画像では入ってた。明らかに入ってた。ミスジャッジ。明らかなミスジャッジである。一体VARの人は何を見てるんだろう。ついでに主審もあそこまで明確に入ってるものが見えてなかったんだろうか。様々な疑念が浮かび上がってはくるもののチャンスが続いてるだけに明確なゴールが生み出されることに注力していくのだった。

 後一押し、後一押しである。開始直後では消極的に見られた中野も段々と存在感を増すことで右サイドも生きている。そしてワントップをピエロス、シャドーにエゼキエウを入れることで得点を狙いにいくと前掛かりになった札幌からのボール奪取からピエロスを走らせるボールが出る。ゴールに向かって突き進むピエロス。が、これを右足方向へとボールを持ち替えたが為にDFにカットされてしまう。ああ、ナスより得点力があるはずのピエロスだが残念ながらその決定力は訪れてはくれなかったのだった。

 そんなもたつきをしている間隙を縫うかのように札幌はスローインから一気に逆サイドへと展開されゴール前まで運ばれる。ペナルティエリアに入るとシュート。対峙したGK大迫。身体を倒すも掌には収まらずすり抜けるもポスト。跳ね返ってことなきを得たのだった。

 攻めて攻めて攻めまくっていてもたった1発のシュートによって決められてしまう。そんなサッカーの恐ろしさを味わう羽目にならなくてよかった。が、どんなに優位に進めてようと決めることができなければ勝つことができないという理不尽さを噛み締めるかのようにこのままスコアレスドローに終わってしまう。勝ちたかった。シュート13本打ってるのに決めれなかった。そしてここにきてやはり川村のシュートは入っていたという記憶がぶり返されるのだった。

 勝ち点1。負けなくてよかった。長いシーズンの初戦。そう考えることによって何とか平静を装うとするのだった。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?