浦和戦~敗戦への引き金

2023年5月31日 浦和レッドダイヤモンズ vs サンフレッチェ広島 埼玉スタジアム2002

 7連戦の4戦目。前節大幅にメンバーを入れ替えた上に勝てたというのは大きな収穫だった。ただ正念場はこの試合だった。浦和は1か月前ACLに優勝してクラブに大きな自信と箔をつけている。もしその決勝で浦和が負けたらサンフレッチェがACLの出場権を得ていた。過去に主力選手をごっそりと引き抜かれた経緯もあり何かと因縁のある対決ではあるのだった。
 アウェイの地での対戦。キックオフは通常のナイトゲームより30分遅い。が、埼玉高速鉄道に繋がる南北線がダイヤの乱れによって大幅に遅れたこともあって多くの人がギリギリ間に合ったような形になったことで開始時間が遅いことが幸いしたのだった。
 アウェイゴール裏に入るともうみんな立ち上がって応援している。ぼくも後ろの方で席を確保してた仲間に合流するも立っての観戦となる。前方では懸命に声を出してるサポーターがいるのでぼくもその調子に合わせようとする。が、ほとんどのチャントが浦和の応援にかき消されてしまう。厚みと熱量の籠った声量がスタジアムを支配しているのだった。
 そんな中に入場したサンフレッチェの選手はアウェイ用の白ユニフォームだった。メンバーは野津田が先発した以外に前節と変わらず。結果を出した選手は続けて使うというスキッベ監督の哲学が伺える構成となっていた。
 サイドを起点に力強い攻め上がりをしてくる浦和。真正面から向かってくる相手に対して住吉はガツンと食い止める。そこに塩谷不在の不安定さはなかった。が、攻撃面ではやはり塩谷ほどの攻撃参加はできない。その為同じ右サイドの茶島にボールが渡ってもそこからの展開ができない。それなのにビルドアップは右に偏っていた為にそつなく蓋をされてしまったのだった。
 まるで浦和ゴールに向かって山が聳え立ってるかのようだった。その中でも左サイド東が上げたボールに松本が反応。アウトサイドに当てたボールは浦和ゴールへと向かっていく。が、外れた。枠には入らなかった。入ればスーパーゴールだったがあまりにもシュートが入らない光景を見慣れてるので打っただけでも盛り上がることができたのだった。
 その後、カウンターから川村が単騎でゴールに向かってドリブルで駆け上がるもぺナルティエリアで伊藤に絡めとられてしまう。更に相手陣内に押し込める場面ではこぼれ球をナスがシュートするも当たり損ね。ただ、CKにはすることができたものの茶島のプレイスキックは相変わらず精度がなく山を越してしまう。流れの中でも駄目、セットプレーも駄目、点を取るということに関しては打つ手なしだったものの相手にもそれ程チャンスを与えてなかったことで前半スコアレスで折り返すことができたのだった。
 そして後半、初っ端からナスに代えてヴィエイラを投入した。ナスも前線でボールをよく収め相手ボールへのチェイシングを怠らなかったことで試合を安定させてくれた。だけどヴィエイラを入れたということは完全に点を取るというメッセージだった。すると中盤でそのヴィエイラ目掛けた縦パスが入る。それをフリックで落とすと川村が拾ってゴールへ突き進む。DFに追走されながらもシュートを放つ。GK西川が止める。が、逆サイドに詰めた森島により押し込むことができたのだった。
 先制。電光石火のような速い攻撃による得点。川村のシュートが防がれた時、よく森島はあのポジションにいた。ここで畳みかけたい。引きはがしたい。
 ところがここで逆襲を受けてしまう。サイドからのクロスに入り込まれると住吉が足を投げ出しクリア。そこで安堵したもののGK大迫が相手との激突により倒れる。駆け込む医療スタッフ。長い中断時間を経て下した判断は続行。事なきを得た。ところがこの後からGKK大迫のキックが乱れに乱れるのだった。
 ゴールキックを蹴ればラインアウト。パントキックもラインアウト。そして味方のバックパスもラインアウト。それらがプレッシャーのない状態でやってしまうものだから浦和は俄然ペースに乗ってしまったのだった。逆サイドに展開されそこから中央から裏へ通されシュート。その一連の速い展開についていけずなす術もなくやられてしまった。対峙した佐々木は全く対応できなかった。そして最後の砦であるべくGK大迫に至っては反応することすらできてなかったのだった。
 同点。せっかく先制したのに勿体ない。全ては大迫のキックにより始まった。ここまで酷いキックを蹴るのなら住吉にでも蹴らせた方がよかったのではないか。野津田が蹴ればいいのだろうがしょうもないアフターチャージによってカードを貰った為にエゼキエウに交代してしまった。だがそれによって中盤がスカスカになって尚のこと攻められるようになってしまいほぼサンドバックのような状態になるのだった。
 もはやこのまま引き分けで終われば御の字かもしれない。そんな気もしていたもののアディショナルタイムは8分。クリアしてもトップのヴィエイラは空気のように存在感がない。確かに先制点の起点にはなったもののハイボールを収めることができない、ボールを引き出すことができないでまるで一人いないのと変わらない状況となってしまった。
 そして続く浦和の猛攻。右サイドからの侵入に住吉が対処。だがあっさりとマイナスクロスを入れられ伊藤に詰められることにより逆転ゴールを許してしまう。呆気ない、呆気ない逆転劇。正に両社の力の違いを見せつけられたのだった。
 このまま2-1での敗戦。怒涛の声援が鳴り響く埼玉スタジアム。敗戦の中挨拶に来た選手の中に大迫が足を引きずる姿があった。恐らく接触した時に痛めたんだろう。あのキックの酷さはそのせいだったんだろう。そしてシュートへ対する反応も鈍かったような気がする。だけどそれならそれで交代すべきだった。ムキになって出場を続けたことがこの結果に繋がったと言っても過言ではない。
 この1か月、上位チームにはきっちりと負けた。そしてそれは満田が離脱した時期とも被ることでたった一人の選手の不在が大きく影響を及ぼしたようだった。今いるメンバーで切り抜けるしかない。一体この先どうやって戦えばいいんだろう。もはや上を見る余裕も感じなくなり、歓喜で沸く浦和サポーターの群衆に紛れて帰路にたつのだった。

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