柏戦~妥当なスコアレスドロー

2023年8月26日 柏レイソル vs サンフレッチェ広島 三協フロンテア柏スタジアム


 暑い、暑い、暑い。スタジアムへ向かう行路は残暑の熱に消耗させられる。その為、なるべく直射日光を避けるべく民家でできた影を通る。ただこうやって日陰が見つけやすくなったのは季節が確実に秋に向かっているからだった。それなのに弱まる気配のない気温にやるせなさを感じるのだった。

 スタジアムに着きゴール裏の立ち見エリアに入ると密集した人の体温で尚更熱は篭っていた。風を感じることもなくそれはピッチの上も同様であるはずであり、ハイプレスをするサンフレッチェにとってキツイ試合となるのは想像できた。しかも柏はカウンターや縦への速い攻撃を仕掛けてきていささかサンフレッチェにとっては噛み合わせの悪い相手であるなどと仲間と話していたのだった。

 メンバーの発表。累積警告によって出場停止の野津田に代わってマルコス・ジュニオールが入ってる以外には前節と変わりはなかった。が、こういう時に限ってボランチに体調不良の選手が出てしまった。不思議なことにこういう時必ず同ポジションの選手が出場できなくなる。その為アタッカーとして使いたい満田をボランチまで下げなくてはいけなくなった上にそこでの後退枠がないという事態に陥ってしまったのだった。

 そに為にも早目の得点が欲しい。体力の持続、ボランチの交代要員の欠如、切り札であるはずのマルコスをスタメンで使ってるという面においても前半の内に決めてしまいたい。そんな中でのキックオフだった。

 いつものように前からのプレスにはマルコスも献身的に走る。ピエロスも陸次樹も走る。それにより柏に自由なボールコントロールは与えなかったもののかと言ってサンフレッチェも有効な手立ては打ててない。特に左は閉じられてしまいその分右サイドへと展開される。右サイドの中野はフリーで受ける場面がありながらも効果的な攻撃を仕掛けることができない。そこにジエゴが相対するとことごとく負けてしまう。なので詰められる前にクロスを上げる。が、中で合わせる選手は皆無なのだった。

 そこからも硬直状態は続くもやはり狙われるのは中野のサイドであった。ただそこには塩谷がカバーをする上に最後にはGK大迫が守護神として君臨することで得点を許さない。相手の動きを予測してトラップ際を狙う。そんな守備が功を奏して速攻に向かう場面もできた。が、最後に右サイドに振ると中野はシュートを外す。ミドルシュートは枠の外。ヘディングはバーの上。そして最後はグラウンダーのシュートでは相手DFのスライディングで止められ決め切ることができない。決定力のなさを露呈した中野。だが皮肉なことに他の選手はシュートを打つ場面すら作れてない。もしかしたら柏もある程度守備を左に寄せていたのかもしれないのだった。

 スコアレスのまま前半終了。どちらかというと決めきれなかったという印象が強い。ワントップのピエロスはシュートを打っただろうか。何処と無く空回りしてる気がしたがやはり後半ヴィエイラと交代した。エンドを替えこちらへ向かって攻撃してくる。向かってこい、向かってこい、そんな気炎を込めゴール裏は声援を強めるのだった。

 長身のヴィエイラがターゲットになることにより前線での収まりができてきた。そこから展開することにより選手の押し上げが図れる。前半沈黙してた左サイド志知がボールを持てる。縦へ突破してクロス。が、中で合わない。そんな場面が何回か続くもクロスの質が悪い。相手GKへのパスじゃないかという緩いボールに愕然としてしまうとそれ以後はクロスも上げることができなくなってしまうのだった。

 選手交代でどんどんフレッシュな選手を入れる柏。そのスタミナを生かしどんどん押し上げの地力を得てきた。段々と防戦一方になるサンフレッチェ。左サイドをドリブルでえぐられクロスを入れられる。ゴール前で弾く。そしてシュートにGK大迫が食らいつく。果敢な飛び出し、ハイボールの処理に救われる。そこに安堵しながらもピンチは続く。それに耐えきれず山﨑を投入して塩谷をボランチに上げることにより安定感を取り戻す。再び攻勢に出たい。が、時間はあまり残ってないのだった。

 マルコスに変わったナスが完全に抜け出しゴールに突き進む。が、そこからシュートまで辿り着かない。残念なことにナスは左足でシュートが打てない為に切り返しをしてしまう。それが守備の戻りを招き行き詰まりを招く。あそこでもたつかなければ。得点力不足の理由の一端を見せつけられたのだった。

 両者共にピンチもありチャンスもある展開ながらいつの間にかアディショナルタイムに。あと少し、あと少しで辿り着きそうで辿り着かない。選手の消耗は激しい。ゴール裏の声援は一層熱を帯びる。ピッチ上に気炎が昇っているかと見紛うその奮闘にタイムアップの笛が鳴り響いた時、一瞬でスタジアムに静粛が訪れたのだった。

 勝てなかった。そんな落胆もあったもののよく無失点で抑えられたとも思う。それだけ際どいシュートもあった。なのでスコアレスドローは無難な結果だったかもしれない。頭ではわかっているもののやはりゴールが観たかったという想いは抑えることができないのだった。

 交代枠を全部使えばよかったのかもしれない。でもこのハードな展開についていくにはベンチのベテラン勢には厳しいという懸念が浮かんだのかもしれない。実際に塩谷がボランチに上がっただけに戦況を持ち直したというのもある。難しい。難しいが挨拶に来た選手には惜しみない拍手が送られるのだった。暑く熱い戦いは結果にもどかしさがありながらも讃えることができるものであったがそれはもしかしたら柏も同様だったかもしれない。妥当なスコアレスドローであったのかもしれないのだった。

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