神戸戦~見せつけられた違い

2024年7月5日 サンフレッチェ広島 vs ヴィッセル神戸 エディオンピースウィング広島


 暑い、暑い、暑い。暴力的とも言える酷暑の日中の熱は日が落ちてからも留まったままだった。この中でのサッカーは確かに辛い。特に全方位でプレッシングで相手を嵌めようとするサンフレッチェにとっては厳しいコンディションである。とはいえスキッベ監督が引いて守るサッカーをやる訳がなく、体力的にどこまで追い込めるかが鍵でもあるのだった。

 この試合、勝たないと上位グループと大きく引き離されてしまう。それだけに勝たなきゃいけない。神戸にしても首位に躍り出る為に勝ち点3を重ねていかなければいけない。両者勝つことだけを念頭に置いた試合となるのだった。

 キックオフから前から嵌めに行こうとするサンフレッチェ。だが神戸の選手は強く速く巧みだった。寄せれば寄せる程パスを回されついにはトップに入れられると左に大きく振られてしまう。武藤がフリーで縦を進むと佐々木がマークに寄るものの切り返しからクロス。その速い弾道が中野の頭を超えるとそこに入り込んだ大迫。ガツンという力強い飛び込みで放ったヘディングシュートはゴールに打ち込まれてしまったのだった。

 失点。あまりにも呆気ない失点だった。手数を掛けず、マークがつきながらも上げたシンプルなクロスに飛び込み。たった3人くらいでこじ開けてしまうその攻撃力に選手の力量の差を感じざるを得なかった。もはやここまで。得点力のないサンフレッチェがこんなにも早く失点してしまったらもはや終わったも同然なのだった。

 ところがこれで一方的になると思いきや中盤から縦パスが入るとピエロス。DFをガードしつつペナルティエリアに入る。左サイドの東に預ける。そこからクロス。逆サイド、新井が入りヘディング。これが当たり損ねでフワッと上がる。そのボールはGK前川の守備範囲を超え逆サイドに入っていったのだった。

 ゴール、同点。

 新井、新井、新井!

 試合を振り出しに戻したことで再び熱を帯びる。新井は右サイドから質の良いクロスを入れることによってチャンスを演出するが、自身でもゴールできるというのが素晴らしい。今更ながらこの選手の存在はサンフレッチェにとって大きいのだった。

 そしてこのまま同点のまま前半を終える。まずまず均衡した試合であったろう。ここから相手を上回る為の交代は後半を迎えるに当たってなかった。勝負どこはまだ先と読んだのか、それともこのままのメンバーでもチャンスがあると踏んだか。

 ところが後半早々に相手の速い縦への攻撃をゴールラインへ向かってなんとかクリアすると相手CK。どことなく嫌な予感がしてきたせいかゴール前に皆んな守備に入る。そこにCKが入るとファーサイド。そこにプレッシャーを与えると逆サイドに振りそこから中へ。だがこれをピエロスクリア。ただクリアが不十分。そこに待ってた神戸の選手はゴール前へ入れるとそこに合わせた広瀬。ワンタッチで触れることで決めてしまったのだった。

 再び勝ち越される。なぜかサンフレッチェの守備は人数が揃っているのに簡単に崩される。そこが不思議で不思議でたまらないのだった。それでも失点してしまったことはしょうがない。取り返さなければ。攻めていこう。まだ時間は残されてる。

 そこから確かに攻めることはできていた。左サイドからゴール前密集地にボールが入る。ピエロスが頭に当てる。タイミングはいい。が、枠を外れていった。この最後のとこが違う。神戸はここを決める。サンフレッチェは決めることができないのだった。

 最後の詰めが甘い。精度がない。それを象徴する場面が再び訪れる。左サイドからのクロスが入るも簡単にクリア。タイミング早く入れたボールはDFにとってはそこに来ることが最初からわかってたかのようだった。するとそのセカンドボールを拾われカウンター。縦パスが入り中盤で大迫が受ける。中野がDFポジションを捨てマークにつくもボールは取れない。するとその何秒かのタメにより左サイドに武藤が駆け上がることができパスを出される。フリーの武藤にゴールに向かう選手が2人。塩谷がゴール前に入るもあっさりパスを通されるとシュート。決まった、決められてしまった。脆くも失点。またしても手数を掛けないままあっさりと決められてしまったのだった。

 この失点の原因はサンフレッチェの攻撃の精度のなさに起因していた。もはや神戸は守り切れる自信があったからこそカウンターの備えができていた。そして大迫のキープ力によって釣り出された中野がゴール前での守備ができなかった。そしてラストパスが出せたのもそこを埋めるボランチがいなかったことが大きい。松本泰志は戻ろうとランニングはしてた。だがランニングであった。全速力で戻っていればDF前のスペースを埋めることはできただろう。その辺の危険察知能力が乏しかった。ラストパスを通された時には塩谷にとっては2対1の状況。もうどうしようもなかったのだった。

 正直終わった。2点差は希望がない。でも1点返せばまだわからない。そんな希望を持つもののサンフレッチェが前向きにボールを持った時には神戸の守備はポジションを取っている。守備の構築が速い。そして粘りがある。そんな一つ一つの要素が個での戦闘に負けているのだった。

 ここで打開策にマルコス、ヴィエイラ、エゼキエウ、中島、茶島と入れていく。この中でマルコス、中島は2人で相手陣地まで食い込ませていった。だがその先が続かない。ゴール前固められた状況でボックスの中で違いを出せる選手がいない。それならば外からと満田がミドルシュートを狙うも枠に行かない。そんな中エゼキエウが筋肉系の負傷をすることで退場してしまった。負けてるのに数的不利な状況へと陥ったのだった。

 もはやこの時点で終わったと言ってよかった。本当ならマルコスをもっと早く使いたいのだが怪我が気になる。ヴィエイラもピエロスも怪我を考慮した起用をしないといけない。かといって実際にゴールを決めてるのは右WBの新井である。こういう制約の中で戦うのはそもそも無理があるような気がするのだった。

 完敗。1-3というスコア以上の差を見せつけられてしまった。大迫のボールキープには誰も対応できず武藤のキックも防げない。そして今やCBの要となっている中野もクロスのポジション取りを謝る場面が見受けられた。叩きのめされたことによってチームの課題がより鮮明に浮き彫りになってしまった。

 一番の懸念はボランチ。DFの前で相手の攻撃の芽を摘みたい。川村、野津田の移籍によってそういう選手がいなくなった。果たしてここをどうしていくんだろう。現有戦力でやっていくのか、それとも補強と行くのか。様々な噂が流れてる中、その不確かな情報に縋りたくなってるのはやはり今のままでは勝つことはできないという焦燥感から来るものなのだった。

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