湘南戦~数的有利の中での辛勝

2023年5月27日 サンフレッチェ広島 vs 湘南ベルマーレ エディオンスタジアム広島


 薄曇りの空は快晴になり、気温の高さは夏への装いを呈していた。それでいてスタンドの客入りの悪さはいいことなのか悪いことなのか。ただ、これから闘う選手たちへの後押しという面においてはマイナスの要素であることは間違いなかった。

 ほぼメンバーを変えない中での公式戦3連敗。それを受けてこの試合はガラッと替えてきた。トップはナス。シャドーは森島とエゼキエウ、左WB柏、右WB茶島、ボランチ川村と松本泰志、DFに塩谷の代わりに住吉が入った。昨シーズン重用されてたのに出れなかった選手。ある意味ではチャンスである。だけどこれを落とした時の精神的ダメージはかなりの大きさがある。そう考えれば諸刃の剣のような布陣であった。

 だが試合に飢えたメンバー。試合開始と同時に仕掛けたプレスに早くも主導権を握る。相手ゴール前へ押し寄せ茶島がシュート。が、これがナスに当たることによって跳ね返されてしまう。セカンドボールを拾い尚も押し込む。2人目、3人目の動きで相手を出し抜きゴールに迫る。が、入らない。シュートが入らないのだった。

 まずはナスがゴール前にアサイドでのシュートをポストに当てた。その後がバーに当て松本もバーに当てた。そして茶島の折り返しをシュートしたエゼキエウに至っては枠にすら入らない。そもそも茶島も自分で打てばよかったのにという気もしてくる。決定力のなさはやはり解消されることはないのだった。

 そうこうしていると湘南も反撃に出てきた。サンフレッチェがショートパスを繋いで崩してこようとするのに対してこちらは手数を掛けずにシンプルにトップの町野に入れてくる。そして入ると常にゴールを狙うモーションに入る。そこはDFで食い止めたものの恐さがある。そこにナスとの違いを痛烈に感じていたその時だった。前線へのパスが引っかったルーズボールへと猛然とダッシュしたナスはサイドへと繋げたものの舘のアフターチャージでのスライディングを受け転倒。ファールの判定に提示されたのはレッドカード。湘南に退場者が出たのだった。

 数的有利になった。ただ、正直このレッドは少々厳しい気もしておおっぴらに喜ぶこともできなかったものの連敗してる中においては大いに助けられた。これで心置きなく攻撃に専念することができる。

 ところがここで膠着状態に陥る。確かにボールを支配してるのはサンフレッチェ。だけど崩しきれない。左サイド柏のカットインからのクロスがファーに流れると右サイド茶島は突っ込み過ぎたことで合わない。逆に茶島が右サイドからクロスを送るも精度が良くない。更に悪いことにプレイスキックを茶島が蹴ってるもののまるで可能性がない。ああ、野津田や東がいないというのはここまで影響あるのかと思ってしまった。

 そしてスコアレスのまま前半を終え後半もメンバーは変わらなかった。どことなく一人多いという感じはしなかった。後半はもっとボールを動かして相手を疲れさせることによりチャンスを演出させるはずだった。だがやはり相手守備ブロックの前で停滞してしまう。一旦やり直しで後ろに下げて攻撃を組み立てる。この辺は一人多いだけに余裕を持ってできる。が、その余裕を持ち過ぎてか、松本の横パスがカットされる。湘南のカウンター発動。両チームの選手が全速力で走る。住吉が止める。荒木が止める。どういう訳か数人掛かりで攻めているサンフレッチェの攻撃より2、3人でカウンターを仕掛ける湘南の攻撃の方が迫力があるのだった。

 この点の取れないこの状況についにヴィエイラと東が呼ばれた。ナスと柏に代わって入る。ジョーカーとしてのヴィエイラ。当然ボールをそこに集めたい。が、どうにもここに入らないのは湘南のDFが嵌まってるせいだろうか。左サイドを軸にショートパスを繋げていく。森島も疲労の溜まる時間にも関わらず足を止めずボールに絡んでいく。クロスを入れると見せかけて縦へ出しそこから中へ落とし松本シュート。ブロックで弾かれる。が、ここでホイッスルが鳴り響く。ハンドの判定。ペナルティスポットを主審が指すのだった。

 VARでも判定は覆らず。ペナルティスポットにセットしたヴィエイラ。ゴールを真正面に見据えた。湘南GKソンボムグンは長身でゴールが狭く見える。笛がなると呼吸を起きゆっくりとした助走を始めたヴィエイラ。ステップを刻み長い足を振った。左へのグラウンダーだが読まれた。が、タイミングが合わずゴールに吸い込まれていった。

 先制。ヴィエイラ、ヴィエイラ、ヴィエイラ。やはりヴィエイラはPKが上手い。そして3試合先発するも結果が出せなかったものの途中出場で結果を出した。ジョーカーとしての役割が嵌まっている。

 そして虎の子の1点を守るべくマイボールの時間をつくるのにヴィエイラのキープ力が効いた。これで一人多いし安泰だろうと思ったら湘南に阿部が入ることによってペースが変わった。ボールにはチェックに行く。マークは外してない。それなのに中盤でフリーで受けられそこから前線へ展開される。DFの隙間を見出されシュート。GK大迫が飛びファインセーブ。危なかった。決められてもおかしくなかった。

 そこからのCKは無難にクリアでき時間を費やす。そしてそのまま1-0のまま終えることができたのだった。

 勝った。勝った、勝った、勝った。とても1人多いとは思えなかった。湘南の守備は最後まで崩れることはなく最後まで走り切った。それにはサンフレッチェの選手も消耗させられ川村でさえ足をもつれさせるシーンがあったほどだった。

 どんな形であれ勝ち点3を取ることはできた。数的有利でありながらもPKの1点だけというのに物足りなさはある。それでも出場機会に恵まれない選手を使っての勝利は大きかった。連戦の中、選手起用のオプションが増える。そこからまた新たな競争が始まるのを期待するのだった。

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