ヴェルディ戦~大勝による祝福

2024年6月15日 サンフレッチェ広島 vs 東京ヴェルディ エディオンピースウィング広島


 野津田がタイのBGパアトゥムへの移籍が決まってしまった。その他にも欧州からオファーを受けた選手もいる中でのスターティングメンバーはいつもの面子であったもののいつまでこのメンバーが揃っているのかわからない。そういう不安定さのある中での相手は城福監督のヴェルディだった。

 元サンフレッチェの指揮官。すでにルヴァンカップで対戦してるもののそれが逆にやりにくさがある。フォーメーションも一緒。そこに道のような策を仕込んできたのだろう。

 太陽の光が傾きかけてきた中で始まった試合、これから夕暮れになっていくという割には昼間のような明るさがある。やはり西の地域は日の入りが遅めであるのだった。それ故にキックオフではナイトゲームだということを忘れさせたのだった。

 ロングボールが行き交う中、お互い主導権を握ろうと競り合いで譲らない。ボールが中空を行き来して落ち着かず、DFがバックパスを貰ったことでようやく平定した。そこからビルドアップをしていくとヴェルディの速いよせ。その圧を受ける前に前線へと蹴り放つと大橋が落下地点で身体を張る。マークした選手を振り切ろうとターンに入ると倒された。FKを得たのだった。

 左サイドからにセットされたボール、東がゴール前に蹴り込むと壁となって構えてたヴェルディに弾き飛ばされてしまった。が、中途半端なクリアだったが為に加藤が収める、胸トラップから一閃、ゴールに向かって走るボールは壁の選手に当たったもののその勢いのままゴールに向かいそのまま突き刺さってしまったのだった。

 先制、先制、先制。開始1分という実に早いタイミングで決めることができた。このアドヴァンテー時は守りたい。あまりにも早く失点してしまうとすぐに振り出しに戻したという自信を相手に与えてしまう。高い位置からのプレスで相手ボールを押し込んでいきたい。

 ところがそのプレスが思うように嵌まらない。GKを使ったパス回しは掴みどころがなく追えば追うほど前線へ運ぶ隙をつくられる。それにより中盤でフリーで前を向かれ最終ラインでも裏を抜けるパスが出る。その都度守備が後追いになりファールで倒してしまい佐々木、中野と最終ラインの2人がカードを貰ってしまった。これにより際どい守備ができなくなる懸念が出てきた。

 優位にやりたいサッカーをやってるのはヴェルディ。ブロックをつくって守備に追われてるのはサンフレッチェ。だがサンフレッチェも奪った後は前線へ速い攻撃を仕掛けることで一気にゴール前へと駆け上がっていく。だがその悉くが決まらない。決めきれないことが余計にヴェルディのボール保持に自信を与えるのだった。

 それでも前半無失点で折り返す。ただヴェルディは後半に点を入れてくるチームである。染野や木村のボールの収まりには手を焼いた。彼らは個で引き剥がすので対応が難しい。そして勝負を賭けてくるべく後半頭から2人のメンバー交代をしてきたのだった。

 相手の気勢にやられてはいけない。まずは立ち上がり。一気に叩き込みまずはCKを得る。キッカー東が左コーナーにボールをセット。アウトスイングのボールを蹴る。高くスワーブの掛かったボールが舞い降りるとピエロス。叩きつけた。ガツンとワンバウンドさせたボールはGKの下を抜けゴールに打ち込まれたのだった。

 ピエロス、ピエロス、ピエロス!東のキックの軌道とピエロスの力強さがマッチしたゴールだった。この得点はデカい。相手の出鼻を挫くものだった。後半に向けてのプランが早くも瓦解させることができた。後半に点を取る相手を後半に引き離したというのはダメージは大きいはずだった。

 その点差の余裕からボールを握れるようになる。相変わらずイーブンのボールではお互い譲らない攻防が続くもののルーズボールにはどこからともなく紫の選手が湧き出てパスを散らしていく。そして左サイドの細かいパス交換からペナルティエリアに大橋が侵入するも倒されオーファール。この日2回目だったものの主審はPKを取らない。それだけヴェルディが上手く守ってるのかもしれない。

 そんな守備への信頼が大胆な攻撃を生む。最終ラインから縦パス一直線。一気に前線を狙うも僅かに届かなかったもののそのままボールを追うとGK大迫が出てクリア。縦へと低い弾道のロングフィード。これが最前線の加藤の元へ。ダイレクトでトラップしつつ反転。その勢いのままゴールへ駆け抜ける。追走したDFが追いつくと折り返し。ここに走ってたのはピエロス。流し込むことで3点目を決めたのだった。

 決まった、決まった、決まった。大迫のレーザービームとも言えるロングフィードはクリアボールだった。相手を一気に裏返すボールを加藤もよくトラップからドリブルに持ち込んだ。そして最後の折り返しも見事で一連の流れが高スキルで素晴らしかった。3点差、3点差は大きい。

 ここである程度見切りをつけてピエロス、加藤を下げてヴィエイラ、満田を入れる。投入された2人にしてみれば試練でもあった。ここでチーム力が下がってしまったら序列を上げることができない。途中出場でスタミナがある分よりアグレッシブに行かないといけない。満田は2度追い、3度追いで相手に圧力を与える。そして今度は大橋を下げてエゼキエウを投入していく。いずれもタイプの違う選手同士の交代だった。

 中盤の低い位置まで下がってボールに関わる満田から縦のエゼキエウに出るも千田がカバー。が、この処理が大きくなったとこで奪い返すとそのまま中央にいたヴィエイラへ預ける。前を向くヴィエイラ。左に駆け上がった東に出すとゴールライン際からクロス。ゴール前にに雪崩れ込んだヴィエイラ。GKマテウスの逆を突きヘディングで落とし込んでしまったのだった。

 4点目。ヴィエイラ、ヴィエイラ、ヴィエイラ。怪我で出遅れた為に結果が欲しかっただろう。そしてこの時満田もゴール前へ入っていた。数字には表れてないが、その動きがあったからこそマークが分散できた。交代選手が結果を残した。これはこの試合を決定づけたという以上のものがあった。

 もはや試合としては勝ったも同然だった。ここで松本泰志に代え松本大弥を入れる。最後の締めである。だがここでヴェルディも最後の意地を見せる。左サイドを抜け出しクロスを上げるとファーに出され折り返し。それを中央にいた木村が合わすとGK大迫の取れないゴール隅に流し込んでしまったのだった。ああ、失点。勝敗には関係ないとはいえやはり最後は木村だった。やたらとこの選手には手こずったがやはり厄介な選手だった。

 そして4-1で試合を終える。完勝と言えば完勝。だけど最後の失点は松本大弥にとってはしこりとして残ったはずである。そしてこの後川村が涙の内にチームメイトからの祝福を受ける。その意味することはチームを離れるということであるのは明白だった。まだ正式発表はされてないとはいえ恐らく欧州のチームに行ってしまうのだろう。ボランチで2人も中心選手がいなくなる。それだけに残った選手にはそれに代わる活躍をしてもらわないといけない。そんな危機感を憶えながらも今は川村に勝利によって最後の試合を全うできたことを祝うのだった。

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