福岡戦~4試合ぶりの勝利

2024年7月14日 サンフレッチェ広島 vs アビスパ福岡 エディオンピースウィング広島


 激しい雨が降り注ぐ。まだ何もプレーしてないのに頭はぐっしょり濡れ、ユニフォームは水を含み肌にピッタリ張り付いてる。これは天皇杯いわき戦と同じ。2試合続けての大雨での対戦となるのだった。

 この試合に当たってメンバーはいわき戦とほぼ同じだった。違いといえばピエロスがスタートから入ってるところだがそこは予想通り。サプライズだったのはボランチだった。松本泰志に代わり中島洋太郎が入っている。ついに来た。途中交代では何度か出場したもののついにスタメンとして名を連ねた。考えてみればレジェンド森崎和幸も18歳で試合に出てた。それだけの才能のある選手なら試合で使っていきたい。そんな中島の出場にすでに胸が熱くなるのだった。

 そんなサンフレッチェに対して福岡は同じ配置であるミラーゲームで臨んできた。開始と同時に高い運動量で球際を激しく競ってくる。出足が早くパスがインターセプトされてしまう。そして奪ってからの攻撃も止められない。強く行けば逆を取られ距離を取れば簡単にパスを回され取り所がない。その為ゴール前にブロックを敷いて構えるもののドリブルでの引き剥がしに数人でマークに着くとパスを出されシュート。なんとかそれはブロックしたもののCK。それを弾き飛ばしマイボールにしたもののそこからの速攻が繋がらない。果たしてこれは雨のせいで精度が落ちてるんだろうか。それとも福岡の守備がそれ以上に嵌っているのだろうか。

 完全に押されてる展開である。もはや中盤を飛ばしトップのピエロス目掛けてキック。胸トラップで収めた。ピエロスが起点となり前を向くことができ、パスの連動から満田のミドル。が、DFに当たりCK。これを満田が蹴るとピエロス。中央でのヘディングだったものの枠の上に浮いてしまったのだった。数少ないチャンスだっただけに枠には入れておきたかった。

 その後も福岡の激しいチェックは変わらずなかなかマイボールにできない。頼みのピエロスに浮き球が入るも多少もたついたことで相手のチェックが入るも預けることができた。が、ここでピエロスは倒れてしまう。どうも相手の膝が入ったことで痛めたようだ。無念の負傷交代。ヴィエイラが交代で入ることになるのだった。

 またしても負傷者が出てしまった。そしてピエロスがターゲットとして効いてただけに勿体なかった。いつしか雨も止んでいて視界が開けてきた感がある。そのせいかヴィエイラの長い足にボールが吸い付けられる。いささかもっさりとした動きであるがこれはこれで機能していることはありがたかった。

 ただ、攻撃を完結させるにはスピードは重要である。攻められてるだけにカウンターの場面は何度かあったもののその都度精度のなさが仇となった。東は左からのクロスを悉くキックミスしてしまい、大橋は縦のドリブルでパスの方向の選択を誤る。それらのプレーがフィニッシュまで至っていれば福岡に脅威を与えられたのだろうが失敗することで逆に勢いを与えてばかりいる。特に紺野のドリブルは止められない。3人掛かりでマークに行ってもかわされ、かわされ、ついにはペナルティエリアに侵入された。ゴールライン際での折り返し。中央からのシュート。やられたと思った瞬間ボールはゴールの脇を逸れていった。間一髪でGK大迫の伸ばした左足にあたったのだった。

 助かった。もはやこの試合は1点差で決まりそうな様相を呈している。これが決まっていれば終わりだった。そして間も無くスコアレスのままハーフタイムに入ると救われた気分になった。

 このペースをどう変えるか。それは選手交代という形で行われた。中島から松本泰志への交代。いつしか雨は上がっていて後半が始まる。するとあれだけ相手にボールが握られてたにも関わらずマイボールの時間が多くなる。そこは雨が上がったことでボールを扱う正確性が出てきたのかもしれない。だがそこは松本泰志の動きもあるだろう。3列目から最前線へ飛び出す動きは相手に捉えどころになさを与える。それがフリーの選手を生むことでプレーに余裕が出てくる。そして左サイドで満田がボールを受けるとゴール前を確認してクロス。DFが2人陣取ったスペースに速い弾道。ファーに待機してた大橋。DFの背後にから飛ぶとヘディング。ガツンと放たれたボールは逆方向のゴールに突き刺さったのだった。

 決まった、決まった、決まった。あの停滞したような流れの中で決めたというのは大きい。満田のキックの強さと正確性、そして大橋のDFとの駆け引きとヘディングの技術。それらが融合して生まれたゴール。今までシュートを打っても打っても入らなかっただけにこのゴールは暁光として感極まってしまうのだった。

 だがまだ差は1点。油断はできない。福岡は切り札のザヘディ含め攻撃の選手を入れてきた。何度かあったクロスからのヘディングシュートもザヘディなら決めるかもしれない。依然として今野のドリブルは歯止めが効かない。そんな時、浮き球を収めようと飛んだ満田が相手との競り合いの中でまたしても痛めてしまった。足首を押さえたまま立ち上がらない。一旦はプレーに戻ったもののやはり交代。この日2人目の負傷交代である。2年連続ホームでの雨の福岡戦で満田は負傷してしまった。たまたまではあるが縁起の悪さを感じざるを得ない。

 交代で入ったマルコス。攻撃で違いの生み出せる選手。相手も切り札を出してきたがサンフレッチェも切り札を出してきたという形である。依然として紺野にボールを集める福岡。中盤からドリブルで打開を図ろうとする。絶対に奪われないという自信があるだけに何人来ようが前を向く。が、引っ掛かった。ボールが取れたのである。奪ったのはマルコス。完全に前掛かりになった福岡に対してカウンターが発動する。これはゴールに繋がらなかったものの少なくとも絶対的にボールを奪われないという前提は崩れていった。

 そしてマルコスが入ったことでそこを起点に押し上げをはかれるようになる。相手が2人掛かりでマークに着くもファールを貰うことでチームに落ち着きを与える。そしていよいよ終了時間が近づくともはや時間稼ぎに入るとここでもマルコスの技術力は相手にボールを渡さない。CKからのボールキープ。そこを切り抜けたと思うもヴィエイラが絡むと余計にボールキープに粘り気が出てくる。そしてそのままタイムアップ。4試合ぶりの勝利で終えることができたのだった。

 危ない場面はあった。シュート精度に助けられたと言えなくもなかった。対してサンフレッチェの得点は高い技術力に裏打ちされた得点だった。大橋はこれでリーグ戦10ゴール。昨シーズン最高がヴィエイラの8ゴールということを考えるとやはり点を取る選手が必要なんだと思い知らされた。

 攻撃陣に怪我人が重なってしまったことが不安となる中、それでもこの勝ち点3は大きかった。願わくば怪我人が軽傷であることを祈りつつ久々の勝利の余韻を噛み締めるのだった。

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