京都戦~新井のハットトリック

2024年5月19日 京都サンガFC vs サンフレッチェ広島 サンガスタジアム by KYOCERA


 屈辱的な2連敗の後になるこの試合、スタメンは大きく替わっていた。何かを変える必要はあった。2戦連続の3失点での敗戦の傷跡は大きくチームを立て直す為にも同じ轍を踏むことだけは避けなければならなかった。それだけにこの大胆なメンバーの入れ替えは納得のいくものでありつつも逆にこれで負けたらもう打つ手はないという背水の陣でもあるのだった。

 スタートからロングボールを入れ前を走らせる。通ることはなく京都のゴールキック。それも同じように前線を狙ったロングボール。それには荒木がヘディングで跳ね返す。そして続いて放たれたロングボールも佐々木、中野が競り勝つことで弾き飛ばすと5分を過ぎようとした。3試合続けて開始5分で失点する訳にはいかない。早い失点は試合を壊してしまう。それだけに守備陣の集中は切れることがなかった。

 それでも後ろで揺さぶりを掛けながら前線へ送るタイミングを図る京都。だがそんなパス回しへのチェイシングで大橋がカット。一気にカウンター。縦に走り抜く。前が詰まり右に出たピエロスへ。エリア内で受けるも角度がなくゴールを横切るグラウンダー。そこに飛び込んだ川村。身体ごとガツンと押し込んだのだった。

 先制!3連列目の川村が長い距離を走って仕留めた。3人による連動。速く力強く勢いのある攻撃。ああ、こんなゴールをどれだけ待ち望んでいただろう。だがこれで気を抜いてはいられない。

勝ちを逃した試合が脳裏を過ぎるのだった。

 まずは相手の攻撃を食い止める。高い位置からのプレッシャー。パスで前を向かれるもパスコースに入った野津田。堪らず相手のファールを受ける。攻撃の芽を潰す野津田の守備によりFKを貰うと縦へロングフィード。松本泰志が最前線で頭に当てるとそのまま裏のスペースに溢れる。ピエロスが追いつきライン割らず残す。そこからサイドに流れ折り返し。中央触れず。が、その後ろに走り込んできた新井。左足一閃。地を這うシュート。次の瞬間、ゴール隅に突き刺さっていたのだった。

 決まった、決まった、決まった。新井、サンフレッチェのデビュー戦で決めたゴールの再現だ。正直それ以降目立った活躍がなかっただけに先発での起用は不安があった。だがそんな懐疑の目を払拭してしまったのだった。

 2点差。これは大きい。気持ちの上でも余裕が出てくる。だけど気の緩みを出したらまたやられてしまう。相手に隙を見せてはいけない。続けて強く、激しく当たっていく。中盤でも前を向かせない。そしてボールホルダーが時間を掛けてる隙に大橋が身体を入れて掻っ攫うと再びカウンター。前に前にドリブル。ピエロスが右に走るが左の泰志に出す。ワンタッチで折り返し。これはクリアされるもののCKを得るのだった。

 キッカーは左サイドに入った志知が務める。左足で放ったボール。低い弾道。それをニアに入った新井がヘディングで逸らす。軌道の変わったボールはそのままゴールに叩き込まれていったのだった。

 決まった、決まった、決まった。またしても新井。まさか2点も決めるとは思わなかった。これにより前半の内に3点。かなり有利になってきた。これでイケイケムードになりそうだった。だがこの後ハーフタイムを挟むと大橋、野津田を下げて加藤、東といういつも出てる選手が入ってきた。大橋がカードを貰ったのが気になったんだろう。だがこれで勢いが落ちることはなく、連動した守備から連動した攻撃が始まるのだった。

 その中でも右サイド新井はドリブルで持ち上がるとサポートを受けながらもペナルティエリアまで侵入する積極さを見せた。ただこれは京都のDFにクリアされてしまうもフリースローを中野が投げる。斜めに伸びていくボールはエリア内のピエロスに向かうも触れず流れるとそこに飛び込んできたのは松本泰志。DFと競りながらもゴールに流し込んでしまったのだ。

 入った、入った、入った。これで4点目。泰志2年振りのゴール。これまでバーやポストを当てるシュートは何度も打ちながらも決めきれなかった泰志がやっと決めた。この試合でも攻守に渡って中心となるような動きを見せ、結果を出させてやりたかった。目に見えるゴールという結果を残したのだった。

 そして4点差がついたことで前線の起点となっていたピエロスに代え若い越道が入る。本来のポジションではないシャドーだが実践を積ませたい判断だろう。馬力を持って前に突き進もうという姿勢は見せるものの最後で止められてしまう。だがそういうチャレンジは清々しくもある。それに呼応するように最後列の中野も攻撃参加すると競り合いでファールを受けるのだった。中野にとっては痛かっただろうがいい位置でのFKを得ることができた。

 位置的には左足のキックの方がいい。その為志知がボールをセットするも右利きの新井も立っていた。キッカーを特定させない常套手段であるがここで新井が撃つ。壁の外をスワーヴするボール。鋭い速さのボールにGKク・ソンヨンの反応も追いつかず入ったのだった。

 入った、入った、またしても決めた。新井ハットトリック。一体チームでも何年振りのことだろうか。新井自身も初めての記録。FWが決めれない中、WBの新井が決めてしまった。これは誰も想像してないことだった。

 もはや勝利は確実になった。ただここから失点はしたくない。疲労のせいかチームにも徐々にプレーが雑になったせいで徐々に攻められる時間が多くなったもののGK大迫はシュートに対しても的確なポジショニングでストップを繰り返す。そして後ろのプレッシャーがあれば割り切ってロングフィードを送る。とにかく無失点で終えるということを意識してるようだった。

 そしてこのまま0-5というハイスコアでの勝利で終わる。久々の大勝に浮かれていると京都のゴール裏からは自チームを応援する声が鳴り止まなかった。こんな試合になってしまったというのにそのサポーターの後押しにはグッとくるものがあった。

 ただ、今回は奇策が実っただけのような気もする。メンバーを入れ替え相手にボールを持たせながらカウンターを狙うような戦術。先制したからプランが実ったが、追う展開だったらこうはいかなかっただろう。そして後半メンバー交代をしていくと段々とプレーが雑になっていったとこ。大勝ではあるがたまたまという感もなくもない。ただそれでも結果を出しただけに今後のメンバー編成どうするのか予想がつかないのは喜んでいいのかどうか測りかねるとこであった。

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