湘南戦~チームを生き返らせた2人

2022年7月10日 サンフレッチェ広島 vs 湘南ベルマーレ エディオンスタジアム広島


 青山を先発で使う。早くから発していたそのコメント通り青山を始め9人もメンバーを入れ替えてきた。長らく実戦から遠ざかってる選手も入ることでそういった選手にとって絶好のアピールの場となった。逆にここで結果が出なければ厳しい立場に追い込まれる。それだけにモチベーションの高い、気力溢れる試合になるはずだった。

 ところが実際に試合が始まってみると安定感のなさばかりが目についた。何処か物足りない、迫力に欠けるものだった。マイボールになってもDFとGK大迫でばかりでボールを回している。相手の穴が見つからず業を煮やして中盤に当てると速い寄せに遭いやはり下げてしまう。その結果やはり後ろで回してばかりとなってしまう。更に湘南がプレスで押し寄せてくるとたまらずロングキック。それがことごとく相手ボールになってしまうという始末だった。

 こういう八方塞がりの時こそ、右サイド藤井が単独突破に出ていく。ところが流石のスピードも最初からわかっているだけに完全に蓋をされてしまう。もはや攻め手がない。そう思った時に浅野がフリーでボールを拾った。前を向くと同時にトップスピードで持ち上がる。追走する湘南のDFも追いつけない。自ら打てるとこまでいきそうだが逆サイドのスペースへと振ってやるとベンカリファ。完全フリー。だがここで右足に持ち替えることによりカットされてしまう。なぜあのままシュートまで行かなかったんだろう。ナスが1点しか取れてないのを象徴するかのような場面だった。

 だがそんな嘆きをする間に既に湘南はカウンターに入っていた。後ろ向きになるDF。バイタルエリアまで先行の速さで持ち込むと迷うことなくシュート。GK大迫のスーパーセーブで食い止めることができた。ナスがシュートに思い切りがなくそのままピンチに繋げてしまったのに対して湘南のゴールへ向かう姿勢は迫力に満ちているのだった。

 そんな攻めるとピンチに陥るという悪循環な前半を終えやはりトップをナスからサントスに代えてきた。散々シュートが決まらないと批判されたサントスであるがナスのワントップにはまるで脅威がない。その意図を汲み取ってかサントスは前線で身体を張る。ロングボールを収め一人でキープする。それにより味方の押し上げが図れるようになるのだった。

 セカンドボールも回収できるようになり前を向ける。相手ボールに対してもプレスが効くようになりラインアウト。スローインからであるがここでマイボールにできない。この以前からの悪癖が出てしまい右サイドを崩され折り返される。中央に通されスルーされるとドフリーでシュート。ゴールの端に綺麗に決められてしまったのだった。呆気ない、あまりにも呆気ない失点。しかもそれがあれだけ守備で人数の揃ったとこでやられたというのが虚脱感が大きかった。

 これに対して浅野、住吉から野津田、佐々木への交代で対処する。するとチームはここから生まれ変わった。守備では佐々木が食い止め野津田が至るとこに顔を出して配給する。それにより停滞してたチームが躍動し、どんどん前掛かりになると右サイド藤井もフリーになる機会が生まれ縦への勝負ができるようになる。それによりCKを得るとキックのスペシャリストの野津田がいるだけに期待感がグッと高まるのだった。

 左足で放たれる急角度で落ちるボール。ゴール前の混戦をサントス頭に当てるとフリックとなりファーへ。そこへ野上が身体ごと押し込んだ。ラインを超えた。入った。入った、入った、入った。

 同点。力業とも言えるゴールによりまずは振り出しに戻した。そしてしばらくスタメン出場から遠ざかってる野上にとっても大きなゴールとなり、いよいよ反撃の狼煙を強めるのだった。

 攻めて攻めて攻めまくる。再びCKを得て今度は逆サイドからのボール。これをまたしても野上がヘッドするもバーにぶち当ててしまう。ああ、何でボール1個分下げることができないんだろう。でもまだチャンスはある。決め切ること。あとは決め切るだけ。

 サントスが前線で強引に突破を図る。それを合図に前線に傾れ込む。クリアされてもセカンドボールは回収する。あともう一歩、あともう一歩のとこまで来ている。そこで左サイド長沼に代えて東を入れて勝負に出る。すると青山のスルーパスにより左サイドを抜け出た。自分で切り込むか、それともクロスを送るか。そんな様々な選択肢のある中、中央へ折り返す。そこへ猛然とダッシュした青山が入りシュート。抜群なタイミング。完全に裏を描いたプレー。だがシュートはゴールバー遥か上を飛んでいった。ああ、あれを決めきれない。決めきれないのが今のサンフレッチェを象徴しているのだった。

 いい攻撃はできてる。だけど決めきれない。それは絶妙なスルーパスを出しながらも最後のフィニッシュで枠に入れられない青山のプレーに集約されてるかのようだった。わずかなチャンスを確実に決める湘南の決定力とそれは大きな差があるのは明白だった。

 上手く機能しなかった試合、たった2人メンバーを入れ替えただけでチームが変わってしまった。かといってその野津田も今シーズン初めてレギュラーになった選手。浅野や住吉がこれを糧に今度は自分がチームの主役へと躍り出てくれるのを願うばかりなのだった。

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