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浦和戦~スコアレスドロー、打たなかった松本

2022年5月13日 浦和レッドダイヤモンズ vs サンフレッチェ広島 埼玉スタジアム2002


 朝から降り続ける雨はじっとりとした湿気の不快さを蔓延させていた。スタジアムに入りレインコートを身に纏うと身体に湿り気が滲み出る。荷物もゴミ袋に包んだりと何かと手間がかかる。ああ、何でこのスタジアムはゴール裏に屋根を付けなかったんだと今更ながら怨嗟の念に駆られるのだった。

 そんな中入場してきた選手。メンバーは前節と変わらずである。快勝しただけに継続を選んだのは当然の判断ではある。ただ、それだけに最初から畳み掛けていきたい。主導権を握っ手行きたいと思っていた。が、蓋を開けてみればスリッピーなグラウンドが災いしたか、どうにも前への推進力がない。サイドを閉じられた結果浦和がボールを支配するようになった。サイドを深く抉られゴール前まで侵入される。前を向かれシュート。枠を大きく外れた。コースに寄せてたこととボールコントロールがままならないことで救われた。だがそれは枠にいった場合のリスクの大きさも感じさせるのだった。

 依然としてボールの取れないサンフレッチェは自陣で引いて対応するしかなかった。野津田が激しい当たりでボールにアタックする。するとそれが相手の背後からのチャージとなりFKを与える。右サイドバイタルエリアの前。ゴール前に合わせるにはちょうどいい角度と位置。ヘディングを狙ってずらりと並ぶ浦和の選手。ラインを揃えて備えるサンフレッチェの選手。両者が最終ラインとして揃うと主審の笛と共に蹴った。馬渡の深くスワーブするボール。そこに合わせる浦和の選手の動きにGK大迫反応。が、ボールはそこを通り越しファーへ飛ぶとそのままゴールへ吸い込まれてしまったのだった。

 ああ、やられた。よりによってサンフレッチェで出場機会の得られなかった馬渡に決められるとは。失意の中、悪天候の中でのFKを与えることへの危険度を認識させられる。早くも追う展開になってしまった。ボールも満足に奪えない中、それは気の遠くなるような難易度を感じるのだった。

 だがここで主審が試合を止める。VARの介入があった。オーロラビジョンに映し出されたリプレイ映像。キックをされた瞬間のゴール前の動きが映る。するとゴール正面の選手が早く飛び出していた。ボールには触ってないとはいえGK大迫は明らかにその選手の動きに反応してしまっていた。つまりは守備側に影響を与えたプレーということでオフサイド。サンフレッチェボールでのリスタートとなったのだった。

 その瞬間アウェイゴール裏はゴールが決まったかのような盛り上がりを見せる。一旦は終わったとばかり思ってただけに確かにこれは大きかった。これにより息を吹き返したサンフレッチェは徐々に攻撃への重心を高めていく。満田が運動量を駆使してボールの受け手へアタックする。それがイーブンな状態になると満田は強引に回収する。そしてゴールへ向かう。味方の上がりも追いつかない中で相手DFも立ちはだかってる中でシュート。流石に枠に入る角度ではない。が、確かに入りはしなかったもののゴールポストを叩いた。ボールが内に巻いた。瞬間にしてそういうキックを蹴った満田のプレーに再びアウェイゴール裏は湧きあがった。

 それからというもの、野津田もミドルレンジのシュートを放ちCKを得る。スリッピーなグラウンドを生かしていきたい。だが勢い余ったベン・カリファは相手への接触でカードを貰ってしまった。この選手は能力は間違いなく高いもののまだ日本のジャッジの基準に適応できてないのが残念である。ハーフタイムに入り後半に入った時、早々に松本泰志との交代を告げられたのだった。

 攻撃の起点を失った。そんな気がしたもののそこから俄然前に進めるようになった。最終ラインからの繋ぎから中盤を経由してサイドを切り崩していく。右サイド藤井がボールを持てるようになってきた。1対1で仕掛ける。クロスボールが入る。クリアされても雨により何が起こるかわからない。どんどん速いボールを送ってやりたい。が、なぜか藤井はクロスを上げるのに慎重になる為、ゴール前の守備がガッチリと整ってしまうのだった。

 入れても上手く防がれる。ボックスの中へサントスが入り個人技を見せるも人数を掛けて対応されてしまう。そんな浦和の集中力の高い守備からのカウンターがサンフレッチェゴールに襲い掛かる。追走する荒木も佐々木も追いつかない。そこでフリーでシュート。やられたと思った瞬間、GK大迫により弾き出されていたのである。

 大迫、大迫。そんなエールを叫ぶ代わりに拍手を響かせる。最後は大迫が守ってくれる。それによって再び攻撃へと重心が傾いていくのだった。

 人数を掛けた浦和の守備を崩せない。だがやはり最後は右サイド藤井の突破が効いてくる。スピードで縦へ振り切ってクロス。ゴール前を通過した。が、ファーへ柏が突っ込んだ。ボールは捕らえた。が、ワンバウンドしたボールはあり得ないくらいバウンドしてゴールの枠を超えていってしまったのだった。

 完璧なタイミング、完璧なポジショニング。それが最後の最後で決まらなかった。この試合最大の決定機に歯噛みする声が漏れる。決めたかった。あれは決めたかった。だがそれ以上の決定機がこの後あとずれるのだった。

 人数を張ったゴール前ながら松本が真正面でボールを受ける。その決定的チャンスにパスをした。シュートではなくパスをした。それによって浦和は余裕でブロックしてしまいチャンスをみすみす潰してしまったのだった。

 打てば何が起こるかわからなかった。そもそもシュートのイメージのない松本があそこでパスを出しても誰も引っかからない。結局スタメンに選ばれない選手というのはそういうとこで差があるんだというのを認識させられたのだった。

 その後は浦和のCKを中心にゴールに迫られる展開が続いたもののGK大迫のファインセーブによって救われる。結果スコアレスドローで終えたもののやられなくてよかったという感覚の方が大きかった。いや、せめて松本がシュート打ってれば違ったかもしれないとも思う。何で打たなかったのか。そればかりが残像として残ってしまったが、もっとチームとしても早いタイミングでのクロスを入れるという強引さがあってもいい気がした。

 天候を利用できない。雨が降った時の勝率の悪さが全てを物語っていた。雨の多い日本。今後この条件での戦いに適応できるかという課題を突きつけられたような気がするのだった。

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