柏戦~防戦一方の中の勝利

2024年6月22日 柏レイソル vs サンフレッチェ広島 三共フロンティア柏スタジアム


 一体なんだ、このスタメン。

 発表されたメンバー表は攻撃の選手で固められてた。これでどういう配置になるか、検討もつかなかったものの加藤がボランチに下がるのではと皆で言い合った時、アップで選手が現れると実際にその練習の光景からそれが確定的であることを窺い知るのだった。満田が出場停止の中、苦肉の策としての布陣である。が、トップに高さのあるヴィエイラが入りシャドーに大橋、マルコスが入るというのは嵌れば超攻撃的布陣にもなり得るのだった。

 ところが試合が始まると一方的に攻められてしまう。プレスが掛からない。トップのヴィエイラは必死にボールを追いかけてはいるものの特に意に介することなくすり抜けられていく。その結果中盤にボールが出され最終ラインを抜けていく。ポッカリ空いたゴール前のスペース。そこに出る度に塩谷がギリギリで詰める。身体を入れボールを奪うとクリア。おお、塩谷。改めて塩谷の守備の対応に救われる。危険を回避する度にアウェイゴール裏から歓声が上がるのだった。

 ところが一度は危機を脱したかに見えたそれらのプレーもクリアボールを拾われることでまたしても受け身にならざるを得ない。佐々木が戻り中野が戻る。DFラインに休息が訪れない。そしてゴールに向かう動きの中で中央へ振られミドルシュート。枠外で助かる。が、それ以降ゴールキックがマイボールにできずフィニッシュまで行かれてしまう。どうしてここまで歯止めできないんだ。やはりDFの前である。中盤の底で重石となる選手がいない。やはりアタッカーの加藤では守備に重みが与えられないのだった。

 またしても相手のシュートを受けるも外れたことでゴールキックから始められる。今度はDFラインからビルドアップ。だがこの時中盤の低い位置までマルコスが降りてくることでビルドアップに加わる。チーム随一を誇る技術を誇るマルコス。そこから繰り出されるボールはチームを動かす。途端に前線まで持ち上げることができるようになり両サイドも高い位置を取れるようになる。マルコスのボランチ、誰も想像したことのないポジションへいつの間にか移動することによってチームは躍動するのだった。

 それによりDFでボールを持った時も余裕が生まれる。柏も不用意に前からプレスに来ることがなくなった。それによってCB中野にも余裕が生まれると左サイド高い位置にロングフィード。その軌道に合わせるように走った東はワンタッチで中に出すと大橋が抜け前へドリブル。対応する柏DF。完全なる個での勝負。身体を寄せられ縦へ入られた。が、その瞬間逆に入るとボールを捕らえ折り返し。それをゴール前に入ったヴィエイラ。決まった、ワンタッチで当てた。DFから実に少ない手数で決め切ったのだった。

 先制、先制、先制。中野の正確なロングフィードが効いた。そして東もそれをワンタッチでよく繋げた。更にそこに反応した大橋はDFに負けることなくドリブルで道を切り裂いた。最後のヴィエイラもよくゴール前に詰めていた。80%くらいは大橋のゴールだったろう。だけどそこまでの過程で数人の選手も関わったゴールなのだった。

「ドウグラス・ヴィエイラ、ドウグラス・ヴィエイラ!」

 ゴールを決めたヴィエイラのチャントが鳴り響く。さっきまでプレスが掛からないだの収まりが悪いだの散々文句言ってたのにゴールを決めた途端ヴィエイラの名前を叫んでいた。本人にとっても今シーズンリーグ戦の初得点。大いなる弾みになったに違いない。

 そしてこのまま畳み掛けたかったものの前半終了。ハーフタイムを迎え後半にはマルコスを下げ志知を投入したのだった。左サイドに志知を入れ東をボランチに移す。マルコスを代えるのは勿体無かったものの恐らくコンディションを気遣っての処置だろう。ただ、この交代によってまたしてもペースは柏に持って行かれてしまうのだった。

 クリアしてもクリアしてもボールの落下点には黄色い柏の選手がいる。それにより防いだと思ってもほんの一時的なものでまた凌がないといけない。特に左サイドに出ると不安が拡大する。前節、志知が1対1に負けたことから失点に繋がったことが思い出される。志知、がんばれと思わず口に出てしまう。それでも時間さえかけさせれば佐々木がフォローに駆けつける。東も守備に入る。それでも低い位置で抜かれゴールライン際からシュート。この動きに対応したGK大迫はニアに入りブロック。ゴールを死守することができたのだった。

 その後も大迫は左右に振られたボールを中央で合わせられるもボールを掻き出しゴール前への放り込みもキャッチングで防ぐ。ワントップはヴィエイラからピエロスに代わったもののGKからのロングキックはやはり収まらない。その結果またしても守備に追われるようになりワンサイドゲームとなってしまう。もはやハーフラインの半分でしか試合が行われてないのだった。

 そんな状況だからこそ一度前線にボールが収まるとカウンターが発動する。手数を掛けずに前に進み出る。そしてペナルティエリア前からのラストパス。東が入りシュート。が、これがサイドネット。東のシュートは本当に入らない。かならずあの場所から打つと同じ場所に外してしまう。もはや東のシュートは入らないの割り切るしかない。かつて右サイドを君臨したミキッチを思い出してしまうのだった。

 耐えて耐えて耐えるだけの試合。その中で加藤がエゼキエウと交代し、アディショナルタイムで大橋も足を吊ってしまい小原と交代する。特に守備が強いというイメージのない選手なので安心感はない。だけどあと少し、あと数分耐えてくれ。ゴール前ブロックを敷いて守備を固める。クリアしたとこでまだ笛が鳴らない。いい加減時間じゃないのかとベンチがアピールする。柏のクロスが入る。それも弾き返した。そしてここで終了のホイッスル。無事、勝ち点3を掴むことができたのだった。

 苦しかった。相手のシュートが枠に入らなかったことで助けられた。だがそのシュートの不果実性を生んだのもDFの守備対応によりコースを限定してたことも大きかった。勝った喜びを爆発させはしたものの一方でグッタリと全身の力が抜けるような感覚もあった。

 やはりボランチの選手がいないことは影響が大きい。しばらくこんな試合が続くかもしれない。連戦は後2試合続く。ここさえ乗り切ればあとは筋道が見えるかもしれない。苦しい苦しい残り2連戦であるがどうにか乗り越えてほしい。それでいて今日はよくぞ0-1という接戦を制した。試合後の挨拶に来た選手にはいつまでもいつまでも拍手を送り続けてしまうのだった。

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