磐田戦~ピエロス2ゴール

2024年6月1日 サンフレッチェ広島 vs ジュビロ磐田 エディオンピースウィング広島


 夏に向けての最後のデーゲーム。日中は半袖でもいいが夜になると肌寒いという着るものに迷う季節の転換期。そしてサンフレッチェはこの試合を皮切りに9連戦が始まる。その初戦。いいスタートを切っていきたい。

 この試合、累積警告により荒木が欠場。代わりに中野がCBに入る。そしてワントップにピエロス。前節からの変更はその程度であまり違和感のないスタメンとなった。ただ、気になるのは磐田の方だった。

 磐田の監督は長いことサンフレッチェでコーチをやってた横内さんである。言ってみれば手の内を知り尽くしている。だがそれ以上に磐田を全く補強なしで1年でJ1に昇格させた手腕は見事である。その横内監督がやってきたのはブロックを敷いて待ち構える守備体制だった。

 DFラインでパスを回しながら相手の隙を窺うサンフレッチェに対して針の穴一本も通さないような守備ブロックはまるで岩のようだった。中に入れると素早い寄せを受け戻す、その繰り返しになかなか相手の懐まで飛び込めない。前線の選手が裏を狙う動きを入れるもそこもマークが外れることがなくラインを割ってしまう。どこをどう攻めればいいのかわからない。無理にこじ開けようとするとまるで蟻地獄に嵌っていくようにボールを奪われてゴール前まで迫られる。もはや磐田は攻められることを望んでいるかのようだった。

 そんな磐田に対してシュートすら打てない。逆に磐田はトップのペイショットにボールが収まりそこを起点に押し上げをはかってくる。なのでそこにはボールを出させたくない。磐田の低い位置でのパス回しにはなるべく自由にやらせたくない。そこで中盤の底にパスが出た瞬間松本泰志が食らいついた。その危険を察知すると中央へバックパス。それが泰志の寄せの勢いによって足元が狂いゴール前のスペースへ。そこで待ち構えていたピエロス。パスの軌道に合わせるとダイレクトシュート。ゴールの隅、GK川島も掌の届かない箇所へきっちりと打ち込んでいったのだった。

 先制。

 ピエロス。思わぬところで思わぬゴールだった。試合の優劣で言えば磐田の方に分があった。完全に手詰まりだったサンフレッチェにとってこのゴールは大きい。確かに相手のミスはあっただろう。だけどそれを引き出したのは間違いなく対しのプレスであった。そしてそれを決め切ったピエロスのシュート精度。加入3年目でありながら毎年2ゴールくらいしか実績のあげれないピエロスはもしかしてハズレだったかもという懸念もあった。だけどこのシュートの技術は本物だった。ダイレクトだからDFも対応できなかった。そしてあのコースでないとGKに反応されていたのだった。

 これによりリードした状態で前半を終えることができた。これにより磐田も前に出てこざるを得ない。今度はその圧に屈しないようにいないといけない。特に今シーズン先制しながらも追いつかれみすみす勝ち点を落とした試合が何試合あったことか。まだ勝った訳ではない。むしろこれからが本番だった。

 だが後半に入り思ったほど磐田は前から来ない。それによりある程度ボールは持てると左サイド東へ出すと早いタイミングでクロスを入れる。ゴール前に駆け寄る両選手もそこは磐田DFによりクリア。が、セカンドボールを拾うと再び左サイド東へ。更に深い位置からクロス。ゴール前に並ぶDFライン。が、その頭越しにピエロスが飛び込んだ。ガツンと地面を叩きつけるヘディング。ワンバウンドしながらもゴールに叩き込んでいったのだった。

 決まった、決まった、決まった。ピエロス2点目。今まで上げても上げても決まらなかったクロスが簡単に決まった。それは相手DFがクロスに対して待ち構える状態になる前に上げたのが大きい。動きながらのディフェンスは人とボール両方を捉えるのがどうしても難しくなる。その意味でも早いタイミングでのクロス、そしてクリアされてからの2次攻撃の速さも良かった。得点力のないサンフレッチェにとってこのゴールは何らかのヒントとなりそうだった。

 2点差。これはかなり有利になった。だがここで磐田に火がつくとサイドを起点に深く侵入される場面が増えてくる。特に右サイドに渡るとなかなか止めることができない。2人掛かりで追い込むも個で引き剥がし中を抉ってくる。そしてボックス内でシュート。が、GK大迫の反応が速くボールを押さえ込む。更にFKではゴールに向かうボールは危うい軌道をしたもののダイビングキャッチ。ああ、今日の大迫は安定している。やはり失点を免れるのにGKは大きいんだと知らされるのだった。

 残り時間が少なくなると右サイド新井が脚をつり志知と交代。途中出場でなかなか試合に入り込めないとこのあった志知だがこの日は無難にこなすことができた。そしてピエロスに代わってヴィエイラが東に代わって柏が入るも残りはアディショナルタイムだけ。アピールの時間は限られてるもののここはアピールよりもこのまま時間を費やしていきたい。が、このまま無難にやり過ごすことができ久々にホームスタジアムで勝利で終わることができたのだった。

 やはりこの試合ピエロスの2得点が大きかった。前半あれだけ相手が有利な戦いをした中でもそれほど苦労した気がしなかったのはやはりFWが得点をしたからだった。2列目、3列目の選手が得点するのはそれはそれで嬉しい。だがゴールに一番近い位置にいる選手が決めるというのはこんなにも試合を楽にするんだということを思い知らされた。このままピエロスがゴールを量産してくれればいいんだが。だけどそれ以上に怪我なくシーズンを戦い抜いてもらえればいいんだが。9連戦の序盤を制したことに安堵しながらもいかにコンディションを維持できるかがこの連戦を乗り切る鍵となるのだった。

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