FC東京戦~怒涛の追い上げを逃げ切る

2024年8月31日 サンフレッチェ広島 vs FC東京 エディオンピースウィング広島


 台風10号の影響は大きく新幹線を始め多くの交通機関に支障を与えた。その為一旦は試合の中止も危ぶまれた。幸い広島での天候は回復したもののFC東京の選手が来れるのかが心配だった。何とか交通機関の目処をつけて駆けつけてくれたことに改めてJリーグも対戦相手があってのものと思い知らされた。敵ではあるが来てくれてありがとうという気になるのだった。

 対戦相手が移動に四苦八苦してコンディションの不備を懸念する一方でサンフレッチェも過密日程による疲労感は抱えているのであまりその面でのアドバンテージはないような気がした。が、唯一塩谷だけは使わずトルガイをスタートから持ってきた。トルガイはジョーカー的な役割をしてきただけに試合が膠着した場合頭打ちになってしまうような気がした。それでいて5大リーグでの実績を残してきたこの選手のスタメンには胸躍るものもあるのだった。

 両ゴール裏の応援がこだまする中、試合は始まった。まずは無難に繋いでいく。前に圧を感じたら後ろに戻す。DFで詰まるとGK大迫に下げるとそこから逆サイドへと振る。が、このパスが緩かった。エヴェルトン・ガウディーノが食らいつく。逆サイドに上がったディエゴに出すと荒木のマークを振り切りシュート。これをGK大迫止める。ファンブルしたのを見逃さずガウディーノが詰める。が、すんでのとこでGK大迫は再び手中に収めた。

 危なかった。入ってもおかしくなかった。時々こういう後ろでのパス回しでパスミスをやらかしてしまう。実際にそれで失点をしてしまった試合もあるだけにここは大いに気をつけたいのだった。

 そんな反省もままならない内に前線をボールは繰り出すことができた。そして右のバイタルエリアで満田が持つとゴール前へクロスを蹴る。が、DFに阻まれコースが逸れると逆サイド加藤の下へ。中へ入れる。DFクリア。が、味方に当たってリフレクション。こぼれ球を拾ったのはトルガイ。ゴール前、チャンス。だがDFの寄せも速くコースに入られた。するとトルガイが放つ。ドリブルの動きから相手の股下を通すグラウンダー。すーっと地を這うボールはゴール片隅に入って行ったのだった。

 決まった、決まった、決まった。なんと呆気ない。相手の守備を無効化するシュート。シュートコースを消す動きを利用してしまった。冷静沈着。力の抜けたプレー。開始5分で決めてしまったがこの選手はいつも出場してすぐに決めてしまうことに溜息が漏れそうになるのだった。

 まずは1点。ただこの1点が守れなかった試合は一杯ある。ましてやまだ開始早々であるだけにこの先制点はあまり大きなアドヴァンテージではないのだった。

 ただそれでもトルガイが中盤でボールに絡むことで展開していく。マークに2人来られたとこで取られない。それによって味方の上がる時間がつくれる。そして右サイドに出た加藤へボールが渡る。そこから簡単にゴール前へ入れるも跳ね返される。が、再び加藤の足元に来たことで再度ゴール前へグラウンダー。ニアに入ったトルラン。トラップした瞬間前を向きシュート。ブロックに入ったGK野澤の股下をスルスルスルッと抜けていきそのままゴールに吸い込まれて行ったのだった。

 2点目。チームの2点目でありトルガイの2点目でもあった。この決定率の高さはレベルが違い過ぎた。本来はボランチの選手かもしれないが前で使われるのはこの決定力の高さを期待してるのだろう。

 2-0となった前半を終え後半のメンバー交代は両者共なかった。それなのにどうも東京の方がボールを持つ時間が多くなった。前半は圧倒してただけにこの変化を切りたかった。相手の攻撃を食い止めると左サイド東にボールが渡る。オーバーラップした佐々木とのパス交換で相手をいなす。そして縦パスを入れると松本泰志が抜け出しドリブルに入る。ペナルティエリアに侵入し切り返し。ここで足が相手選手に引っかかり倒れてしまったのだった。

ホイッスルが鳴る。指し示したペナルティスポット。そこにボールを持っていったのはトルガイだった。まあ流石に一番うまそうなのはトルガイ。である。ただ、それだけに外した時の被害も甚大なもののように思われるのだった。

 ボールをセットして助走の距離を取る。主審の笛がPKの合図を送る。コースを見極めるGK野澤。だがそんな渾身の守りもトルガイの技術は止められなかった。細かいステップの後繰り出したキックはGKの逆を突く力の抜けたシュートだった。

 3点目。そしてトルガイのハットトリック。まだフル出場してないというのにこの決定力の高さは異常である。そこに敬服しつつも他の選手もこのレベルを目指さないといけないという指標にもなる。改めてよくこんな選手来てくれたものだと陶酔するのだった。

 もはや3点差。交代のタイミングとしてはいいのかもしれない。連戦が続くだけに早目の交代をしたく、4人の選手を入れ替えた。そしてFC東京もメンバーを替えてきたのだがそこから俄然、東京が勢いを上げてきたのだった。

 特に左サイドを駆け上がってくる俵積田は厄介である。スピードがあり越道は縦への突破が止められない。それにより後追いになると折り返しを入れられる。すると中央に現れた小柏。真正面からズドンと決めてしまったのだった。

 ああ、何やってんだよとその場に崩れ落ちるのだった。残り時間は少なくなってる。なんとか踏ん張っていきたい。が、相手CKでは完全にサンフレッチェの気が抜けた。そのフッとした雰囲気を感じ取った仲川、CKではショートコーナーを使いリターンを貰い自らドリブル。守備人数の揃ったペナルティエリアに入ると角度のないとこからシュート。これが守備選手の体に当たったことでコースが変わる。するとゴール前に陣取っていた中野の体に当たることでゴールに入ってしまったのだった。

 1点差。もはやこうなるとFC東京は本気で追いつきにくる。交代で入った前線の選手がスピードを使って縦を抉ってくる。中でも右サイドは越道は抑えられないのだった。こうなるともはや守備に徹するしかなくとにかくクリアしていく。それでもセカンドボールを拾われ2次攻撃、3次攻撃と仕掛けてくる。苦しい。なんとか前線にボールをつなげることはできないのだろうか。

 相手の攻撃を止めた後、前線に預ける場所がない。そこで後ろでショートパスで繋ぐもののFC東京のプレスを掻い潜れない。だがここで中島がボールを持つことで時間をつくった。前に繋ぐことができた。カウンター発動。最後はDFにクリアされたもののCK獲得。こういう時ヴィエイラがいると時間稼ぎに威力を発揮するのだった。

 ショートコーナーからボールキープで身体を張る。その流れで再びCKを得る。そして次で相手のスローインになったもののこれで2分程度稼げた。あとは引いて守るだけ。後ろに人数を掛けてれば俵積田のスピードも活かせない。

 そしてアディショナルタイム6分を堪え無事勝利で終えることができた。3-2、ギリギリでの勝利である。FC東京は前線の選手を入れ替えてからの圧力がすざましかった。反面サンフレッチェは選手交代後に停滞してしまった。スキッベ監督がターンオーバーをしないことに疑問を感じることもあったがその理由をまざまざと見せつけられてしまったのだった。

 これによりクラブ初の7連勝。その数字は素晴らしい。更に順位も得失点差の関係で首位に躍り出た。そこも素晴らしい。だが浮き足立つことはなかった。それは3点差としながらも追い上げられた不安定さと追加点のチャンスがありつつも決めきれなかった決定力のなさである。更にこの後続く連戦を思うと厳しさしか感じないのだった。

 試合後FC東京のサポーターはチームを鼓舞するコールが続く。そんなサポーターにサンフレッチェの選手も挨拶に行くと大きな拍手で迎えられた。交通機関が麻痺する中であらゆることを駆使して駆けつけたFC東京のサポーターは実に紳士だった。そして楽勝ムードを追い上げていったチームも楽な試合はないと教えてくれた。改めていい試合だったと感謝の念を感じるのだった。

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