神戸戦~リベンジを果たした勝利

2023年9月16日 サンフレッチェ広島 vs ヴィッセル神戸 エディオンスタジアム広島


 3試合連続の2万人越え。当初そんな観測もあったものの蓋を開けてみれば1万8千人と僅かに届かない観客数だった。ただそれでも多く入った方であり、その数字に貢献してくれたのはアウェイ神戸のサポーターがたくさん詰めかけてくれたからだった。地理的に近いというのもあるものの、首位を走る神戸にしてみれば1試合1試合目が離せない。しかも元スペイン代表のマタの加入は更にチームを熱くするのだった。

 そんな神戸に対して前回対戦ではっきりと力負けをしてしまったサンフレッチェ。前線の大迫、武藤には個で押し切られてしまった。更にウィンガーに位置する汰木にはドリブルでスカッと抜かれて決められたこともある。元代表選手を多く抱え改めて豪華なメンバーである。ただ、サンフレッチェも前線は変わった。あの時との違いを見せてやりたいという気運に駆られるのだった。

 両者のチャントの鳴り響く中でのキックオフ。サンフレッチェは前線からのプレスを敢行する。ただ神戸もここは織り込み済みでここを回避して裏返すという狙いがあるのは明白だった。そこの駆け引きでどちらが上回れるかだがサンフレッチェの推進力は勢いがあった。パスが連動しそれを追い越す選手がいることで更なる縦への推進力が生まれる。それに対して大きなクリアで対処する神戸だったもののそこも佐々木や荒木といった最終ラインが跳ね返すと再び中盤でボールが持て右に展開。ライン側で受けた中野。折り返しと見せかけるも縦へ突破。相手が追いつく前にクロス。ゴール前の山を越えていった。が、外に待ち構えてた志知。胸トラップからのボレー。逆サイドに刺さった。強烈なシュートが突き刺さったのだった。

 先制。早い時間の先制である。最高の出だし。神戸にリズムが出る前に仕留めた。志知はサンフレッチェでの初ゴール。そしてそこにクロスを送ったのが右サイドの中野。両ウィングにより仕留めたのは長らく課題だった両サイドが機能してないという問題の克服でもあるのだった。

 幸先のいいスタートを切ったもののこれで安心できるほど神戸は脆くない。有利に押し進めていてもそれを打開する個の力を持っている。常に前線にターゲットとなる選手がいるというのは大きい。ただロングボールに対しては荒木、佐々木が常に跳ね返してしまう。そこの競り合いで負けないというのは心強い。そして大迫に入ると2人、3人とで詰めてマークにつく。が、大迫はそんな人数を掛けたプレスでさえ掻い潜ってしまう。もはや日本人離れしている。今でもヨーロッパのクラブでもスタメンを張れる実力がある。相手としては脅威であるがこういう選手がJリーグにいるということに胸踊ってしまうのだった。

 それでもサンフレッチェの帰陣の速さは神戸の攻撃の自由を奪いシュートブロックからカウンターへと繋げていく。マルコスに出すとボールを奪われない。そして前線へ出すとヴィエイラが収める。これらが前線への推進力を高める。そしてシュートを放つもそこは神戸も守備が固い。素早い寄せでコースを塞いでしまうのだった。

 ただそうやって何度かカウンターに繋げたことは神戸の攻撃に過度な慎重さを与えた。バイタルエリアに入っても容易に縦パスを入れない。どとこなくこの日のサンフレッチェの守備網には穴がないように思われる。そしてサイドから打開しようと汰木がドリブルで抜きにかかるもののここを中野が防ぐ。昨シーズンここをスカッと抜かれてやられたことを思い返される。ゴール前での大迫、武藤に自由を与えない。それにより再び攻勢出ることができるのだった。

 中盤から右サイド中野へ。今度は縦へ行かず折り返す。フリーで受けた満田が持ち上がる。ミドルを狙うのかと思いきや前線へ角度のないクロス。最終ラインの混戦に入った加藤が飛ぶ。GK前川の逆を突くヘッド。ワンバウンドして入った。ファーサイドに決めることができたのだった。

 追加点。そろそろ加藤のゴールが観たいと思っていたところで決めることができた。常にハードプレスを行いいて欲しいとこに顔を出し黒子にも徹することのできる加藤は自身のゴールがなくとも貢献度は大きい。それだけに個人としての数字を上げて欲しかった。そんな時に崩さない中でのゴール。こういうゴールを決められると相手の守備は混乱を与えられるのだった。

 前半の内に2点差。このままハーフタイムを迎えたい。が、反撃に出る神戸に対して激しい守備がファールとなってしまいFKを与えてしまう。ボールをセットする大迫。巨木のような太腿から繰り出すキックは恐ろしい弾道を生み出す。が、これを壁に入った佐々木がクリア。無事無失点で前半を終えるのだった。

 ほぼ完璧と言っていい前半。それだけに後半の神戸の巻き返しが恐かった。すると後半早々に2人のメンバー交代をやってきた。これでペースが変わるかもしれない。当然最初から攻撃へと重心を傾けてくる。ゾーンを敷いて守備を固める。不思議なことに調子の悪い時期には人数が揃ってもスカスカだった印象のブロックがとてもソリッドなものに感じられる。それにはマルコスや加藤の攻撃陣の守備の参加もある。だが志知や中野の両サイドが破綻しないのも大きい。そして真ん中はガッチリと鍵を掛け一度ボールを奪うと塩谷はドリブルで剥がしていき守から攻へ転ずる。それができることによって神戸も思い切った攻撃ができないという流れになるのだった。

 このまま時間が経つことを願いつつも神戸は切り札のヴェーチェイを入れ、そしてついにマタを入れてきた。その実績に敬意を示しつつもこの流れを止めたくはないというとこで神戸のCK。キッカーはマタ。大きく上がったボールは急降下を描きピンポイントでクリアできないとこに落としてくる。それにより神戸の攻撃は続いていくのだが交代で入った松本泰志も越道も最後の最後まで粘りを見せる。そして同じく交代で入った東は相手のパスをインターセプトからゴールに向かう動きに繋げる。ヴィエイラに代わって入ったピエロスも最後まで走って相手にプレッシャーを与える。そして時間が進んでいく中最後に汰木のドリブルからのパスをボックス内で塩谷がカット。そこで響いた。終了のホイッスルが吹かれたのだった。

 2-0。無失点での勝利だった。前回対戦と逆をいくスコア。見事リベンジを果たした。この結果はやはり両サイドが機能したのが大きい。右の中野がクロスを入れて左の志知決めた先制点。そして再び右から突破を図るかと見せて中盤に返したことで加藤で中央で決めた追加点。少し前までどこからも手詰まりだったチームが点を取るヴァリエーション得たことが実感できるのだった。

 首位のチームに勝った。これはチームに勢いをもたらす。累積警告で出場できなかった川村の穴は野津田が全うした。そしてスタメンで出るとどうにもインパクトの残せなかったヴィエイラが存在感を見せることができた。そして交代を告げられた選手が皆物足りなそうな表情でピッチを退き入った選手はそれぞれに試合を完結させることができた。このいい流れ。このまま続くんじゃないだろうか。そんな期待に酔いしれてしまうのだった。

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