セレッソ戦~崩れなかった均衡

2023年10月21日 サンフレッチェ広島 vs セレッソ大阪 エディオンスタジアム広島


 スタンドには工藤壮人をしのぶ弾幕が掲げられてた。

 ああ、そうか。工藤が亡くなったのはこの頃だった。そして昨年のこの時期はルヴァンカップの決勝だった。見事優勝を果たしたのは工藤の恩恵があったような気がした。ただ、先制したのはセレッソだった。そしてもはやこれまでというとこでピエロスの奇跡の2得点により逆転したのだった。その時セレッソで先制ゴールを決めたのが加藤陸次樹。そしてその加藤は今シーズンサンフレッチェに加入し停滞していた攻撃陣に活力を与えた。セレッソとの試合はいつも均衡したものとなり色んな面で因縁が付き纏うのだった。

 その厄介な相手にあるにも関わらずピエロスとマルコスの欠場のニュースが流れる。そしてワントップにヴィエイラが入ったもののどうもスタメンになると空気になる傾向があるのが不安だった。ただ満田がシャドーに入ってアタッカーになることによって欠点を補えるという目論見があったのだろう。が、そこはヴィエイラの空気感の方が優った前半となってしまった。

 前からのプレスは嵌らない。追えば追うほどセレッソはボールの引き出しを増やしていく。そして上手くGKまで下げさせたと思ったらGKキムジンヒョンのロングキックで一気に裏を剥がされる。右サイドクロークスを起点にカウンターに入る。そこからボックスに入り折り返される。またはクロスが入る。それらを懸命な戻りとGK大迫のセーブによって抑えたものの首の皮一枚で助かった。プレスに行けばかわされ追い込んだと思ったらカウンターへ繋げられる。まるで攻め手がなく後ろへ下がってブロックを敷くしかならない展開となるのだった。ただ、そこから奪っての前線への長いサイドチェンジには中野が上手く走り込んでいた。右サイドを駆け込んでクロス。セレッソのDFは戻りが速くブロックもセカンドボールを満田。ライナー性のミドルシュートはGKキムジンヒョンがガッチリと押さえつけるのだった。

 それが唯一あったチャンスだった。間違いなくセレッソの前半だった。そこでペースを変える為にボランチの野津田を東に代える。全体が押し込まれてる中、その交代は焼け石に水のような気がした。が、そこからパスが前線へと回るようになったのだった。

 最終ラインから中盤へ経て左サイド志知が高い位置で受けるとクロス。そこは不発に終わったものの明らかに前半には観られないシーンだった。ヴィエイラも中盤でのポストプレーに絡むようになり全体が前を向ける。バイタルエリアで受けた加藤が単独でDFを引き離しながらシュート。これもGKキムジンヒョンのセーブ。すると今度はセレッソが反転。右サイドを抜けて来るとカピシャーバのドリブル。そこにマークに着くもののスピードとパワーを持ったドリブルで押し切られる。中へ入れられるとカバーに入ったDFによりカット。よく防いだ。攻めれば反転される。かといって守りに徹すると逆に攻撃に勢いを与えてしまいそう。故に攻めるもののなかなかゴール前まで辿り着けないチャックの速さがあり例えフィニッシュにたどり着いてもGKキムジンヒョンの壁は突き破れないのだった。もはやこれは1点の勝負になる。そんな様相を呈してきた時、志知を下げエゼキエウを入れる。そしてその後にはヴィエイラを下げナスを入れるのだった。攻撃的なメンバー変更。これはまさしく点を取れというメッセージだった。

 お互いに勝ちに向かう中でオープンな展開に。中盤にスペースができエゼキエウへ縦パスが入る。最終ラインを前にしてシュート。が、これをGKキムジンヒョンが止める。そして今度はセレッソが左サイドから侵入してくる。縦を塞ぐとカットイン。シュートコースを切ると更に中へ、中へ。2人、3人のブロックが追いつかずシュート。GK大迫、片手一本で防いだ。両者、最後の最後はGKが止める。崩れない。最後の砦はどちらも崩れないのだった。

 少ない残り時間。攻撃参加に上がった塩谷がボックス内縦へ抜ける。クロスを送るもクリアでCK。満田の蹴るボールはこの日どれも不発。時間がない。そして今度は逆サイドのCK。これに飛び込んだ荒木。が、バーを超えてしまう。荒木のヘディングはやっぱり入らない。あとひと突き、このあとひと突きが限りなく硬いのだった。

 そしてこのままタイムアップ。スコアレスドローの結果に両者へたり込む。最後のひと突き、やはりそれを考えるとピエロスとマルコスの欠場は大きかったかもしれない。それでも右サイド中野はこの硬い試合において長いランニングから大きなチャンスを創り出したし加藤は球際での粘りを見せた。願わくばそれらのプレーに対して続きのプレーがあったらよかったのだが。

 勝ちたかった。引き分けといった結果には満足はしてないもののそれでも気炎の立ち昇るプレーの数々は熱くさせてくれた。これを勝ちにつなげるもの。シーズン終了が近づく中、来季に向けてその解答を下す時期に差し掛かってるのを意識してしまうのだった。

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