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紀行文 20/01/03

津金山海岸寺

位置:山梨県北杜市須玉町上津金

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向かい合う地蔵
石段と石畳が連続する参道に向かい合う形式をもって地蔵の石仏が据えられている.青竹や杉の植樹の垂直性に緊張感がある.

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石灯籠の反花の半肉彫
正方形を基調とした石灯籠であるが基礎基壇に彫りかけか半肉彫かともとれるような返花が刻まれている.基礎の2/3が彫り出されるとともに,彫りかけの断面は竿部分の芯に合っている点も,前後のシンメトリーを崩したやや異形なタイプにもみえる.

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おでんの様に立てられた石
近代以降の遊びと思われるが,球状,方状の三石が意図的にコンポジションされている.土留めのような機能もあるようにもみえるが,転倒した石灯籠の転用や,現行の石灯籠が倒れた場合の補完用資材にもみえる.

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山門から鐘楼を望む
山門のすぐ裏に石段が続く.杉らしき巨木の根や凍結融解の作用ともとれる石段の歪み,石畳の乱張りなどが心地よい.山門と石段の近すぎる関係に仕組まれた伽藍配置には古刹を感じる.

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浮彫と線刻の中間体
近世前期の作の地蔵だろうか.手や宝珠?には浮彫が施されているが,全身や台座の蓮華は線刻の技術段階にある.顔面の三角鼻,眼窩を示す水平の陰刻の直線,眉の弧,ほうれい線の様子は,中央高地の近世仏の特徴を示している.採石された石材の元の形も生かしたプロポーションと思われる.
重ねられた餅が小さくも白く光っており,鏡餅の視覚性が強調されてみえる.

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如意輪観音?の頭部
頭部と胴部は,もとは別に彫られ合体された石仏と思われる.胴部は如意論観音の特徴を示す.頭部の丸彫は守屋貞治あるいは高遠石工の特徴を示している.高遠石工の手になる一連の石仏の通常の宝髻とは異なり,唐草文様?の宝冠がみえている.別の観音からの転用の可能性も考えられる.

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猫背型の丸彫石造物
表情や髪型,衣裳は女性の特徴を示しているようにみえる.手に葉のついた枝を携えているようにもみえ,養蚕や絹の信仰に関係した,例えば金色姫のバージョンとも考えられる.背から後頭部にかけての前傾の曲線が特徴的である.

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十一面観音
渋い表情の大きな顔に対し,変化ある表情の小顔はやや大きめにとられている.

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房状に連なる十一面
これも十一面観音だろう.大顔の上に,4つ,3つ,2つ,1つと十面が連なり,葡萄の房を逆さにして頭上に載せてみたようなユニークな形になっている.

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百体観音のうちの如意輪観音
諏訪の温泉寺や高遠の建福寺の西国三十三観音中の如意輪観音とほぼ同形を示し,守屋貞治の後期の作風の特徴が表れている.後背を含む幾何学性,彫りの細やかさと柔らかさ,頭部の絶妙な傾き,足先の重ね方などがそれである.

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忿怒相の三面八臂する馬頭観音
この石仏も上述の温泉寺や建福寺の姉妹品ともいえる近しさがある.風雨にさらされ白化も進んでいるが,貞治仏のリアリズムをよく映している.

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佉羅陀山地蔵菩薩のプロフィール
輪光背を欠いている.剃髪,肩,膝の各部が円頂状に丸みを対応させている.そして蓮座を含め,体の全体でそれらの小山を配した大山を表すような構成をみせている.これも貞治仏である.

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蓮華座の精緻なシンメトリー
幾何学性をもった蓮座で六弁が十五度づつずらされ五重に配された三十弁の蓮華となっている.下方に向かっての開き,各弁の脈の数などにも規則性がみられる.

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立像と座像用蓮座の齟齬
百体観音のうちの一体をみると,座には5mm程度の深さの窪みが彫りつけられている.これは座像の座りがよくなるように付けられた加工であり,その蓮座に立像が載せられている.このような座と本体の齟齬がいくつかみられる.19世紀前半の設置当初からの転倒や入れ替えなどの履歴を知る上で興味深い食い違いでもある.
基壇にもノンスリップのような斜交する刻みがみえている.

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水まわりの集まり
舟形光背をもつ石仏が数体,湧水ポイントのまわりに配されている.光背のすぐ後ろまで地山が迫っており,光背に土留の機能をもたせているかのようにもみえる.

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宝篋印塔,双体道祖神?,石祠などの石造物群
手前の舟形光背の中には二柱が収まっており,頭部は真円を象ろうという意志が感じられる.頭部の背後には,わずかに輪光背の陰刻もみられる.庚申塔などにみられる日月の円や弧とも関連した頭部と光背の形式にもみえる.左後方の丸彫座像の素朴な尊顔や,右後方の石祠の落書きのような線刻も印象的である.

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駒形に浮彫された二段に並ぶ六地蔵
上下二段の仏龕の中にそれぞれ三体ずつの地蔵立像が配置されている.駒の頂上からは左右にやや反りのある傾斜が確認できる.仏龕の上部に円形の陰刻がみえる.これを頭部に見立てれば,駒の中の一体の大きな地蔵像がみえ,その大きな地蔵のなかに六体の小さな地蔵が収納されているような図像をもつ.

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双体道祖神?と青面金剛
舟形光背の先端は欠落しているが,その下にはやはり輪光背を具えた双体の丸顔がみえている.この双体も向かって右の神体がわずかに低く彫られているようにもみえる.石仏の目の前にモミが生長しつつある.

津金学校へ

位置:山梨県北杜市須玉町下津金

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津金学校の正面
ストローブマツに隠れて望楼は見えない.ベランダ,幅のない唐破風の車寄せ,寄棟の瓦屋根,漆喰壁など明治初期の擬洋風建築の特徴がみられる.正方形の窓の開口のサイズが可愛くみえている.

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柱脚の飾りと土台
切石の土台の上に真壁を思わせる木造で造られているようにみえる.柱脚の飾りには洋風の意識が感じられる.

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車寄せの情況
塗装は水色と緑の2色が施されている.後の改修による塗装の塗り替えと考えられるが,初期の色のまま復元された可能性もある.柱脚,石段などには寺院建築の応用が示されているようにもみえる.

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望楼の左官仕事
軒下には漆喰による丁寧な左官が施されている.一見して土蔵の鉢巻のような技術が応用されているようにみえる.

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学校の間にのぞかれる神社
津金学校の最も古い校舎と隣の校舎の間から神社がのぞいている.近代の合社と学校配置がセットで計画的になされた可能性や,神社と学校のどちらか片方がもう片方を誘導した可能性がある.近くに鳥居はなく門柱のようなモダンな石塔に注連が張られている.

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諏訪神社の境内
学校の裏手の神社の境内には一対の石灯籠が設けられている.どちらも火袋が欠落した「クシャ」タイプである.拝殿の屋根の反りと灯籠の笠の反りが軌を一にしており,石造物と木造(屋根板金)の連繋がみられる.

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金色姫?の石造物
葉のついた枝(桑?)をもち,やや表情が固い女性らしき立像が浮彫にされている.養蚕に関係した信仰があるものと考えられる.乗っているのは舟だろうか,この部分は鏝で仕上げられた様な彫の細やかさもみせている.

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