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ラディカル・アクセプタンス【実践】

出版社のサンガがサンガ新社として再出発してまもなく、タラブラック著の「ラディカル・アクセプタンス」が再販される気配がなく、まだまだメルカリあたりでは定価の倍値で中古本が出回っているレベルなので、今回は「ラディカル・アクセプタンス」に書かれている内容で実践的なものを、私の解釈のもと、ここに記したいと思います。

以前書いたラディカルアクセプタンスについての説明はこちら

また、タラ・ブラックの日本語字幕付き講和動画はこちら

※この本を読んだ私なりの解釈で説明します。
※ラディカルアクセプタンスをセルフでやる場合、個人的にはある程度健康レベルの高い方が良いのではないかと思います。
※酷いトラウマがある方は、かえって酷い副作用が起きる可能性がありますので、主治医などに相談されて下さい。

ラディカルアクセプタンスは、マインドフルネスをベースに、それを利用して「気付き」のセンスを磨き、受け止めていく練習方です。

夫婦喧嘩などの対人関係トラブルでも使えると思いますし、自己肯定感が低くて悩む方にもできるのではないかと思います。

それでは順を追ってラディカルアクセプタンス(根本的な受容)の実践方法を説明します。これらはトレーニングですので、筋トレのように、一歩ずつやっていって脳に癖を付ける必要があります。

1.自分の内側に耳を傾ける基礎を作る

さて、巷でよく聞く「マインドフルネス」ですが、実際なんなの、どうするの?と思う方が多いと思います。坐禅をやってるお寺はちょこちょこあっても、瞑想リトリートをやっているお寺はなかなか無く、そういった施設もあまり日本にはありません。

そこで現代日本で私がオススメしたいのはマインドフルネスアプリです。決して回し者ではありませんが、「リルック」というアプリが一番無料コンテンツが多くオススメです。

アプリを使って、マインドフルネス瞑想をすることに、まず慣れることから始まります。姿勢はリラックスできるのであれば、別に足を組まなくても構わないと私は思っています。自分の内側に耳を傾けることになれることが重要です。

2.いつでも瞑想状態(マインドフル)になれる自分になる

タラ・ブラックは著書の中でこういった方法をオススメしています。

1週間、自分に約束して下さい。1日1回、なにかの習慣の前の前後などに、瞑想状態に入るようにする。

例えば歯磨きの前に、必ず瞑想状態に入るようにする、など、日常生活のどこかで1週間は練習してみます。忘れてしまったときは、責めることなく、忘れてしまったことに気づきましょう。

ルーティンを1週間程度作ってトレーニングをすることで、自分がその気になったときに、いつでも瞑想状態に入れる自分を作っていきます。

瞑想状態に入るということは、アプリで気に入ったワークを思い出すことでも構いません。

私のお気に入りはブッダが菩提樹の下でマーラ(煩悩)とお茶をするシーンを思い浮かべることです。

ブッダのエピソード
ブッダは元々とても高貴な家の王子でした。家族は街が危険で溢れていることを知った上で、彼をずっと城に閉じ込めていたのでした。城を飛び出したブッダは街に病気や貧困があまりに多いことに絶望をし、旅に出ます。
そしてブッダは菩提樹の下で悟りを開く時、それまでずっと影のように付き纏っていたマーラ(煩悩)を受け入れることにしました。その結果、悟りを開くことができたのです。
ブッダはこう言いました。「また来たのかい、マーラ。どうぞお茶を飲んで。」そういってマーラをもてなしました。マーラは気づいたら消え、気づいたらまたそばに居たりしましたが、ブッダはマーラに出会うたび、「どうぞお茶を」ともてなしたのでした。

マーラ(煩悩)はあらゆる恐怖や不安、過去の記憶、自分に厳しすぎる言葉を吐いたりもしますし、甘い誘惑もします。それらが現れても恐れる必要はないのです。ただ、「やぁ、来てたんだね。」と、もてなすのでした。

毎日の習慣の中に、立ったままでも、外界の感覚を感じながらも、自分の内側に集中することができるようになれば、いつでもマインドフルになることができるようになれば、OKです。

3.あらゆる「気付き」を受け流す

マインドフルネス瞑想をする中で、あらゆる思考の脱線が起きても、それは問題ではありません。「坐禅」は思考を無にする修行ですが、瞑想はあらゆる思考を受け流すという修行です。

瞑想の中で「あぁ、私はこういうものを求めていたのか」「私はこれが怖かったのか」と気付いても、あまり深掘りはせず、善悪をジャッジせず、不思議に思いながら、ただ受け流します。

※同じ瞑想系心理療法のフォーカシングでは、これらの思考や気付きをwelcomeの姿勢で受け止め、もう少し深掘りしていきながら、肯定的に受け止め、「出てきてくれてありがとう」と感謝をしたり、褒めたりします。
※ラディカル・アクセプタンスのアレンジとして、自己肯定感が低いことで悩む方は、瞑想中に浮かんだ気持ちや思考にwelcomeで肯定的に受け止めるアレンジを加えると良いかもしれません。

しかしラディカルアクセプタンスやマインドフルネス瞑想では基本的に深掘りはせず、受け流します。自分を否定したくなっても、ただ、受け流すのです。

瞑想を続けるうち、自分の内側に耳を傾けるうち、気付くセンスは磨かれていきます。それは多くがマーラの声かもしれません。それでも、ただ受け流す練習をしていきます。改めて瞑想の時間を作ってルーティンでやってもいいですし、気が向いた時に寝る前にだけ、でもいいと思います。

4.思い込みに気づく

瞑想を続ける中で、自分の思考の偏りに気づくかもしれません。それは例えば「自分には価値がない」という思い込みかもしれません。いつも「結局自分には価値がないからだ」というところへ来てしまうのならば、それが「思い込み」です。ラディカルアクセプタンスのラディカル(根本的)なところです。

それがあくまで「思い込み」であり、現実(real)だけれど真実(truth)ではない、ということを軸にしていきましょう。その正体はマーラ(煩悩)であり、本体(自分そのもの)ではないのです。これがマーラとの出会いです。

5.実践の場が来るとき

実践の場はマーラが大暴れするような場面です。

例えば、夫婦喧嘩が勃発しそうな空気の場面など。
こういったときに、これまで練習してきた1〜4の成果を試すチャンスです。

いかなる場合であっても、マーラが大暴れしてしまうような場面であっても、瞑想状態に入るのです。一時的にその場を離れて、吐く息の方を長く、鼻で吸って口から吐く深呼吸をしながら、瞑想状態に入ります。そうして、この事態の根本的な課題を探ります。例えば、その瞑想の結果こんなことに気づくかもしれません。

「私は彼が離れていくんじゃないかと思って怖くなる」
「私は価値がないから、捨てられても当然だって自分のどこかで思ってる」
「でも1人になるのはとても怖い」
「いいパートナーであることに自信がない」
「相手が本当のところ何を考えてるのかよくわからないし、確信が持てない」
「信じてないわけじゃない、ある程度信じている、けれどまだ怖い。」

そんなことが浮かんだら、一度冷静になれたあとに、パートナーに根本的に気付いた自分の恐怖や不安を伝えましょう。

冷静な会話の中で、上手いディスカッションができれば、気付きは深まっていくことでしょう。一方で、相手が感情的なままで、会話が冷静にできないようであれば、あまり長く続ける必要はありません。自分自身が冷静でマインドフルな状態になれないくらいになれば、会話は終了したほうがよいでしょう。

このようなディスカッションで、すぐに喧嘩が収まるときもあれば、何度も繰り返していかなければお互いに冷静に話し合えない、ということもあります。

ただ、自分が感情的な会話をしない、という姿勢を貫けば、挑発をされても乗らない姿勢を貫けば、相手も変わっていくことでしょう。

おわりに

マインドフルネス瞑想は、仏教の修行から来ています。ブッダを崇拝し、皆ブッダのようになりたく、煩悩にお茶を出せるようになる修行です。
ここまで読んでくると、修行という言葉の意味も理解できたかと思います。僧侶を目指すなら別ですが、あまりストイックにやり過ぎる必要はないと思います。
※人間ですから、たまには感情的に動くことも、心身のバランスを取ることには必要なことだと私は思っています。

ただ、自分の中にある解決したい課題(夫婦関係の改善や、自己肯定感の向上など)に取り組むひとつのプログラム、ひとつの手段としては多いに役立つと思います。本の帯には「受け入れる技術」という言葉がありますが、トラウマなどに苦しむ人だけでなく、あらゆる課題に応用できる技術・プロセスだと思います。

また、マインドフルになれるようになるということは、あらゆる場面で活かすことができると思います。マーラが忍び寄ってきたと感じた時にいつでもマインドフルになることができれば、必要以上に恐れる必要がなくなるからです。

これらは私の治療スキルや方針などを孕んだ私の解釈なので、純粋なラディカル・アクセプタンスを学びたいのであればタラ・ブラック著の「ラディカル・アクセプタンス」を読むのが一番だと思います。本には彼女の12のケースの話や彼女自身の体験談なども入り、かなりボリューミーではありつつもラディカル・アクセプタンスをより深く学べるかもしれません。

サンガ新社御中、どうか再販を…。

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