Intermission(本日はおやすみ)~今週のグーチョキパー~

梅雨という文字が、今年はそれをまだ思い付きもしていないわたしのところへ南の郷から届いて、はるかに北にあるこの地も気がつくと石畳の目地を流れついで靴を濡らすこともない緩やかな降雨の中に抱え込まれていて、真昼になってもまちはほの暗いままをゆずらず、明日にはもう開ききって新緑に仲間入りするだろう楓のシュートの先の芽玉達を綿いろの花のほころぶに似せて浮かびあがらせ、つつがなくながれる傘と車が時折光るなかで躊躇いもなく立ち止まり流れを分ける石になるようなだれかをそっと流れから掬い上げる…その手に載る幸運、一年間は何秒ですか、そして、そのカエデのグーがパーになってゆく時の間は…それで、ここには姿は見えないがあの谷むこうで今も振れている赤くて小さいチョキがたくさん…て、思い出す笑顔の訳はそんなこと。