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胃ろうを選択するか家族の迷い・レビー小体型認知症

『胃ろう』とは口から食べ物が食べられない、飲み込むことができない、1日に必要とする栄養を十分に口から摂取できない方へ行う栄養補給手段のひとつです。

『胃ろう』を始めるにはまず『胃ろう造設術』という手術が必要になります。
手術は胃カメラをしながらお腹にメスを入れて、お腹から胃まで短い管を通します。

胃に入った管を使って、医師の指示である時間に決められた栄養剤を必要量注入する医療行為となり『胃ろうによる経管栄養』といわれます。

私は看護師としてこの医療行為をたくさんの方に行なってきました。
現在では医療的ケアとして介護職に『胃ろうによる経管栄養』を指導する講師でもあります。

看護師として『胃ろう』の考え方や、ご本人とご家族への関わり方について今まで一生懸命考えて業務してきました。

でも、今回改めて考えさせられて、悩む状況になりました。
私の夫の母が、現在『胃ろう』を作るかの選択を迫られています。

私は嫁そして家族という立場で『胃ろう』について考えることになりました。

『胃ろう』を選択するには夫の母の年齢や病状、家族の関係性ということも含めて、そして何より母がどう思うかということを考える必要があります。

夫の母はレビー小体型認知症と診断されてから8年ほどになります。

介護老人保険施設での転倒で大腿骨頚部骨折と上腕骨近位端骨折をしたことをきっかけに車椅子生活となり、特別養護老人ホームに入所しました。
どんどん体の機能は失われ入所時要介護3であったものが一気に要介護5となりました。

生活の全てに介護が必要な現状

コロナということで面会制限が厳しく、家族との関わりもほとんど持てなかったことが認知症である症状に拍車をかけることになったのは間違いありません。

夫の母は現在、家族を見てニコニコ微笑むことはあっても、自分の息子や娘であることは認識できていない様子です。
手足は固くなり、自力では動かすことはできません。リハビリをしようとしても痛みを訴えるため困難です。

手指は固く握り締められた状態、足は縮こまりオムツ交換自体大変な状況。
レビー小体型認知症の症状をコントロールする薬も今では効果を発揮することなく、日によっては無表情になってしまうこともあります。

食事には全く興味を示さず、介助しても口の中にモゴモゴとしているだけでなかなか飲み込もうとしません。
現在はゼリー状のものを口に入れて、飲み込みを介助見守りするのみです。

入所中の施設看護師からも『胃ろう』の言葉が聞かれました。
体重はみるみる内に減り、さあどうしたらいいものか・・・。

夫の母は元気であった頃、自分に何かあったときは延命しないで欲しいといっていました。

自分の最期を考えて家族へ伝えておくことが大切

夫の家族関係といったところも、関係性が良好とはいえず、何かと問題のある家庭です。

それでも家族それぞれに母への考えがあり思いがあるのです。

私も医療者としてなら、いくらでも話はできます。
でも、嫁としては夫の気持ちを尊重するものだと考えています。

私には到底分かりし得ないものがあるからです。
家族が正しい知識の中で、後悔のない選択ができるよう私はフォローするだけです。

現状から『胃ろう』で栄養補給して生きることが本人にとって本当にいいことなのか。
もしかしたら、延命となるだけではないか。
『胃ろう』を入れることで、家族それぞれの時間や金銭面で負担になるということを本人は拒否するのではないか。

家族の誰かに負担が偏ることはないか。
現在は加齢と病気による自然な体の変化であって、このまま看取りも含めて考えるべきではないか。

様々な考えを身近に強く感じています。
実の家族が迷うのは当然のことなんです。

私は夫と共に『胃ろう』と今後に関して入所中の施設医師との話し合いに近々行ってきます。
夫にとっても夫の母にとっても、家族みんなにとって納得いく選択をしてもらいたいものです。

今は暗くてもきっと明るい未来に繋がる

これもまた、私の貴重な経験です。
看護師として、嫁として、家族として支え合って未来へ進みます。



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