『短歌ください』から好きな歌を挙げる

 穂村弘の『短歌ください 双子でも片方は泣く夜もある篇』を読んだので、その中から好きな歌を挙げます。概要は次の感じです。では行ってみましょう!

・全首2回以上目を通した
・「最強」「めっちゃ好き」「かなり好き」の三段階

最強

北山文子
 みそ汁がさみしいひとはいませんかここにえのきが落ちていますよ

原田
 散らかした物の用途がどれひとつわからないもう夜なんだろう

つきの
 貝殻と貝のちがいを識らぬ子が集めては腐らせるきらきら

めっちゃ好き

小山田
 星屑はこんなに色がなかったか射的後倒れた人形になり

大柴嶺子
 爪を切る なぜかあの人思い出す なるほどあの人 爪だったんだ

大石聡美
 亡き父の床屋さんは母でした(もうお客さんいなくなっちゃった…)

中条ふみ子(欄外)
 灼きつくす口づけさへも目をあけてうけたる我をかなしみ給へ

関根裕治
「夏休み おばあちゃんちに行きました」そこにはおじいちゃんもいたのに

だっち
 僕はいまブックエンドを失った本かなしみの方へ倒れる

鈴木晴香
 ライターのどこかに炎は隠されて君は何回でも見つけ出す

つぼけんみす
 点滅が赤に変わってほっとする走ったところで 渡れなかった

かなり好き

志方由佳
 じゃないのがいるね今年も神様が責めない口調で舞を受け取る

ねむる
 一斉に老人たちが「今日からは塗り絵絶対致しませんから」

佐内あい子
 今なにをしてますか 私 私はね すべてが不思議でならないのです

斉藤さくら
 新年のカレンダーめくり母が言う今年のイヴは仏滅だから

三崎利佳
 あ、転ぶ、転んで顔を擦りむいてだからあなたに振られてしまう

鈴木晴香
 クエスチョンマークは何色のペンで書けばいいのでしょうか、先生。

関根裕治
 きみはあの頃だけぼくの妻だった夕暮れ砂のご飯よそって

田島晴
 運転中眠くなったら両親の本気のキスを想像してみる

柳直樹
 飲み過ぎてしゃがみ込んでる女の子 たき火のようにみつめる男子

さこ
 いつまでも お前を好きだと思うなよ 縄文時代の話をすんな

菊池月子
 夏になる そのたび私は思い出す腕には裏と表があること

霧山じり子
 拝啓と書いてはみたがこんなにも虫っぽい字で合っているのか

踝踵
 今、向かうところ敵なしスーパーで万能ねぎを買ったのだから

月舘桜夜子
 海水が真水になってクラゲたち全員溶けてしまった未来

原彩子
 スーパーの棚に並んだとりどりの袋どれもが致死量の塩

野村やえ
 さされたと嘘つきましたごめんなさいくらげのことは何も知らない

高橋徹平
 胃の内容物を全員同じにし眠気を誘う給食センター

菊池月子
 あきらめることができない だってここはドリンクバーに出会えた世界

北山文子
 いま、いま、と蝶が車にぶつかってとぎれとぎれの時間になった

おまけ:複数首引いた作者について

菊池月子
(ネット活動なし?)

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