あの日からおれは短歌を詠んでこれたのか


一笑に付して水平線の鳥、まばたき、夏のつけまつげが取れた

給湯器やけにごぉごぉいいよるん東京ビルヂング108階

スピーカー金庫の場所を吐きなさい「ピー」「ガー」そうね私が悪い

膵臓にニスを塗られた経験が生きたな…生きたままの膵臓

イメージが逃げるほうまでぼくたちは西側の楡の木にニシキヘビが二匹

感動で組み立てられた夏ゴミの地球がジャングルジムだったころ

炊飯器とりのかおりがたちこめる詩なばもろともなむ思ひける

シャンツァイのそれは這い寄る孤独のような婚期の知覚が苦手なんだ

たまねぎの人工透析機のような笑顔に触れて菜切り包丁

ロボットにロストセンスのイディオムをm.a.m.a.のo.p.p.a.i.でもs.h.a.b.ってな

網膜のパターンこれは恋してるだってイチ、ニ、サン、四間飛車

半夏生 水揚げされたぼくたちは酸素を吸って二酸化炭素

場合わけどんどん増えるぼくたちに告られるきみかぐや姫だろ

メヌエットそれは味覚で喩えればきみの左足の薬指

殉教者鈴カステラの名の下にあまいにおいの記憶を焼いて

結婚をあきらめた日のカルピスがうんと薄くてぼくは疲れた

カタチとは廃炉のなかの火のようなひとりぼっちのお腹が減った

柔軟剤変えた/東京/司法書士/犬はすべての/路地裏にいる

最果てにきみの死因を置いてきた一緒に観に行こうひのえうま

初恋をヒートシンクに捨ててきた なのに熱暴双子葉類

五月雨のいまからいちばんかっこよく無になれるやつこのゆびとまれ

金魚なら飼ってたはずだビー玉の水槽であの金魚はどうなった

半月板 愛してるの響きだけで強くなれる気がした 割れた

復讐はなにも生まない系の人?いいじゃんちょっとだけ、ね、おためしで

アポストロフィーの温度でさようなら省略された何か 何かに

冬瓜のいま重力に捉われてチェキ撮ってんじゃねえよてのひら

数学が平均点の人といてヤドカリの足7.5本

表皮から人間くんがはみだしたサンマルクパンおかわり自由

ポシェットに草団子(ぼくの爪入り)をしまって帰路の影が長いな

いま一心不乱の雑念をくれよあのぱーぴーぷーぺーぽー鳴く鳥を

懐メロが聞こえてくるよ人生の折り返し地点を過ぎたんだ

温泉にサメがいるから隠れようそれは年端も行かぬ少年

あかるい未来がようさん見えるように蚕入り目薬ぽつりぬす

年の瀬に月日を食べる獏がいて賞味期限切れをからかった

混沌を極める わけもなく指が多い気がした喫茶店のマグ

虚言癖!ひまわりのたねはあたたかいたいようのこどもたちのかばね


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?