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窓辺からの眺め#6

教室の前の黒板には、複雑な化学反応の式が書かれていた。教師は、反応の進行に伴うエネルギーの変化、つまり発熱反応と吸熱反応について説明していた。「変化するにはエネルギーが必要だ」という言葉は、どこか美月の心に響いた。なんだか重々しいが、同時に、とても本質的なことを教えてもらったような気がした。

美月は考えてみた。人の感情も、化学反応と同じように、エネルギーを使って変化するのではないかと。ただ、感情の変化には、化学反応とは違う要素が絡んでくる。人間の記憶や体調、それに日々の生活環境といった変数も、感情の変化を左右する。

"私の気持ちの変化、それは一体何を意味するのだろう……"美月は心の中でぽつりとつぶやいた。今まで感じたことのない新しい感情が、彼女の心の中で静かに広がっていった。

そして彼女は思った。もし、人間の心の中で起こる感情の変化を数学的に表すことができるなら、それは素晴らしい発見になるのではないか。そして、そのような事実が明らかになれば、自分の心情の動きについても理解する手がかりになるだろう。

そんなことを考えながら、美月は授業に戻った。熱の移動、エネルギーの変化、化学反応。それらの事象を、自分の感情に置き換えて考えてみる。その結果、美月は新たな視点から自分の感情に向き合うことができるようになった。

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