大阪大学基礎工学部全体、電子物理科学科エレクトロニクスコースについて(工学部との違い、理学部物理学科との違い、何を学ぶか、留年、院試etc)

電子物理科学科って何するねん?エレクトロニクスコースって何するねん?そもそも基礎工学部ってなんやねん?工学部と何が違うねん?ついでに理学部物理学科とも違いがわからん...って感じの受験生や塾講師、親御さんがいるかもしれないからそういう人向けに。阪大公式でも工学部と基礎工学部の違いはよくわからんって動画をアップしてるくらいだし。

【0】

そもそも基礎工学部って工学部と何が違うのかというと基礎研究の比重が高い研究をしてるのが基礎工学部だと思ってくれれば良い。基礎工学部は英語で"faculty of engineering science"でありこちらの方がイメージしやすいと思う。一番紛らわしい情報系では基礎工学部の情科ではソフト寄り、工学部の電情はハード寄りである。その他は規模が大きいのが工学部で小さいのが基礎工学部と考えてくれれば良い。実際ディズニーランドの2倍の面積がある吹田キャンパスの殆どを工学部が占めている。基礎工棟と広さを比較すると天地の差である。機材も当然工学部のほうが豊富である。基礎工学部の研究において実験機器を借りに吹田キャンパスまで出かけることがある程である。

キャンパスについては基礎工はずっと同じ、工学部は2回生から吹田に移るので工学部はサークル活動や一年の科目の再履修の際に豊中キャンパスまでバスで移動する必要がある。豊中キャンパス付近の方が石橋もあり大学生活はまず楽しめる。吹田キャンパスのある北千里には何もない(まあ北千里に住む人は居ないとは思うが)。個人的にはしたい事が決まっていないのであれば基礎工の方が色々と楽という意味では良いと思う(とは言いつつ後述してるが専門性は基礎工の方が高く工学部の方が学びの自由度は高い)。

そして傾向としての話だが基礎工学部は殆どのコースで専門科目について必修の方が選択より多い(システムは選択が多い)。ただ選択もほぼ全て受けないと単位が揃わないので実質ほぼ全て必修と考えて良い。一方で、工学部は逆で殆どのコースで専門科目について選択の方が必修より多い(環エネ、応理機工は必修の方が多い)。専門はかなり多くの講座が用意されていて登録数上限もある(好成績等の一定条件を満たすとブースト受講も可能)。よって学びたい分野が定まっているなら基礎工学部、まだ迷ってるなら工学部という考え方もアリだと思う。

やはり最先端の研究をしてるのは基礎工学部でありその研究レベルも当然高く最低限必要な知識もそれだけ多くプロフェッショナルを育てていて、工学部は応用が多いので最先端を追いかけるというよりは幅広く実践的内容を学んでより多くの分野で働ける閃き力の強い人材を育てていると考えたら良いと思う。

【1】

電物の男女比について。まずここはほぼ男子校と考えてほしい。これは別にエレコースだからではなくて電物全体の話で実は電物は基礎工学部の学科の中でも女子は最も少ない学科であり、つまり恐らく阪大の全学科の中でも女子は最も少ないものと思われる。

では基礎工が女子を歓迎していないのかと言えばこれは間違いで基礎工は女子学生の入学を切望している。事実オープンキャンパスでは女子受験生専用窓口があるほどである。阪大全体としても理工女フェスなんて企画を行っているので是非参加してみれば良い。フェスでは現役女学生の意見も聞けるのでオープンキャンパスやフェスに積極的に行ってみる事をオススメする。ただ結局工学系で研究室に配属されたらどこの大学でも学年から女子は1人2人なので女子学生目線ではどこの学部学科でも(環境系などを除いて)工学系に進めば最終的には男女比の環境は大差ないと思われる。就職後もそうである。同性の友達はサークルなりバイトで問題なく作れる。同性の友達とワイワイ試験の勉強会したり試験後打ち上げに行きたい!!みたいなのは難しいかもしれない。

【2】

留年率についてだが、まず基礎工全体では19.3%で留学のある外国語学部を除くと阪大で最高[1]である。学科別の留年率は公表されていないがおおよその傾向はここで確認できる。19年データで1回生は100人(毎年同じ)、2回生は同数、3回生は104人、4回生は139人いることが確認できる。3回生で増加した4人を全て留年生と仮定すると(実際は1,2人は編入生)1回生からの増員数は39人、つまり4回生の学生の28.1%は留年経験者であると凡そ推測できる。参考までに同様の計算で化応23.2%、情科29.5%、シス科26.8%である。

ここで[1]のデータでは19.3%なのに高すぎないか?と疑問が浮かぶがこれについては2留(やそれ以上)及び退学者の影響である。[1]より基礎工の6年以内の卒業率は91.7%でありこれは先の外国語学部よりも低い数字である(因みに1位は経済学部の90%であり基礎工は2位である。経済学部は退学率が0.4%と低いので3留以上が異様に多いと推測できる。基礎工の退学率は1.6%である)。

以上より電物は退学者を考慮すると4回生までは学年で留年or退学は精々1,2人だが4回生、つまり研究室配属後に3割程度は留年or退学すると考えれば良い。これにより電物では院試は勉強しないと内部生でも厳しいことがわかる。外部生なら尚更である。4回生が溢れると院試が厳しくなるのは必然といえば必然。

余談だが情科については3回生への進級の時点で留年する人が多いので研究室配属後の留年or退学は基礎工の中でも電物がトップである。自習量や課題量が凄まじく入学前から競プロ上位勢がそれなりにいるようで入学前から実力の差が大きいので初心者は挫折するするからとかどうとか。一方で競プロガチ勢はプログラミングバイトとして複数研究室が採用していているので在学中から他学部他学科について勉強出来たりコネが作れたりもする。向上心がある人にとっては情科は良い学科であると思う。

【3】

エレコースってについて。エレコースは卒業が楽で院試が大変、物性コースは卒業がしんどいが院試は楽と言われている。これはカリキュラムを調べればわかるが物性コースは物性演習という演習形式の授業が多く課題の多さや授業の深い理解を求められることが要因であり、一方エレコースには演習形式の授業はないがその分授業で扱い内容は多い(卒業単位数は両コース同じ)ことより授業内容への理解は各テストで6割取れる程度で卒業できるが院試では理解が浅い状況で広い知識が求められるからである。更に物性コースの院試には公式問題集が存在していることも一因である。過去問については両コースともに公開されている。就活勢ならエレコースはオススメかと言えば微妙である。実習も演習もほぼなしで広く浅く勉強するので理系職で働けるだけの深い知識は殆ど身につかないが、一方で旧帝理系卒の学歴が欲しいだけなら卒業は楽な方ではあると思う。就活勢は卒論は通してくれるようだし。

あと理系大学でありがちな毎日1限から5限まで詰まってる...みたいなことは基礎工ではない(1回生は忙しい)。時間割は空き空き。1コマ2コマの日も結構多い。基礎工の履修科目一覧と時間割はここで確認できる(おまけで工学部のはここで確認できる。実験や演習がかなり多い印象)。シラバスも時間割の科目名からシラバス検索より調べれるので科目単位でどんな内容を学習するのかを知りたい人は調べてみたら良いと思う。また阪大は面白い教養の授業が多いのでどんなものがあるのかを見てみたら受験勉強のやる気に繋がると思う。春夏学期秋冬学期の教養科目リストのリンクを貼っておく。空きコマで積極的に受けてみよう。

【4】

そもそもエレコースでは何を学ぶのかについて。エレクトロニクスというだけあって電子工作について学ぶ...と思うが3回生までに電子工作らしいことは殆どしない。研究室でも電子工作ライクな事をしてるところはそこまで多くない。3回生までで本腰を入れて学ぶ専門分野は回路理論、電磁気学、電子回路、固体物理である。他にも電子デバイス、量子力学、情報理論、通信工学、統計力学、光などについて学ぶ。高校物理で言うところの電磁気、原子物理の範囲の延長が主と考えてもらえれば良いと思う。要はミクロの世界の物理について勉強する。

個人的に未来を作る技術はマクロではなくミクロの世界の技術だと思っていて例えばスマホの性能はCPUのトランジスタ(2進数計算スイッチ)の数で大体表されるけど12世代intelcoreでは数十億のトランジスタが集積されている。そのトランジスタは半導体素子である。コロナ禍で半導体不足が叫ばれているが何を作るにも半導体が必要な世界である。量子PCの時代になってもそれ用の半導体基板が必要である。そんな集積回路では詰め込みすぎるせいで電気エネルギーの殆どを発熱で無駄にしているから省エネを目指した研究なども行われている。他にも高精度の電子顕微鏡を開発してタンパク質などの分子構造を解析し新薬開発に繋げることなども行われている。

【5】

おまけで理学部との違いについて。ミクロの世界といっても純粋の理論を勉強したいなら理学部物理学科の方が良い。では理学部では理論しか勉強できないのかと言えばそれも違う。リンク先を見てもらえばわかるが理学部物理学科物性物理学分野の研究内容はぶっちゃけ電物の物性分野研究室と大差ない。ここまで来たらもう方向性の違いでしかないので研究室にメールして聞いてみて。多分喜んで親切に教えてくれる。逆にエレコースでは服部研なんかはかなり理学部寄りだと思う。

では理学部物理学科と電物では何が違うのか。理学部物理学科の履修科目一覧を見てみて個人的に思うところを書いてみる。参考までに。電物エレでは回路の授業があり、電物物性では素材や性能ごとなど物性特化の授業がある、理学部物理では宇宙や素粒子の勉強が出来る。逆にこれ以外は学習内容に大差はないと思う。やはり学部生の授業は研究室の前座であり研究室の内容に重複があれば授業内容も重複してくる。先に書いた通りここまで読んで(エレについては詳しく以下に書いている)まだ悩みがあるなら研究室と就活実績で選べば良いと思う。就活に関しては電物、特にエレが強い。ただ理学部物理でも物性は電物と大差なくて素粒子や宇宙といった純粋物理の方が足を引っ張ってそうではある。

また理学部物理学科は定員66人に28の研究室、電物は定員99人に27の研究室がある。その上理学部物理はB4の人数はかなり偏っている。何が言いたいのかというと理学部物理の中でも純粋な理論分野の研究室では学部生がおらずメンバーの半数以上が他大出身の博士課程学生なんて所もある。電物にはそんな研究室は流石にない。繰り返しになるが理学部は就活が...ってのはこういう所が足を引っ張ってるからであって理学部だから就職は厳しいなんてのは少なくとも物理学科では勘違いである。

【6】

基礎工のカリキュラムは2020年以降大幅な作り変えがあり、エレコースでは演習授業の廃止、2ターム制授業の4ターム制への分割など違いが大きい。旧カリキュラムも前述の基礎工の履修科目一覧のサイトから確認できるので興味のある人は見てみると良い。これにより演習授業が無くなった代わりに単純計算で授業の数が倍、つまり期末試験の数が倍に増えた。授業自体が増えたから中間試験の数も増えてる。試験ばかりである。だが勉強をサボっての落単は後で自分が苦しむだけである。というのも専門科目は時間割が出来るだけ被らないように組まれているので専門科目の時間被りが生じれば全てが一年ずつ後ろにずれ込んで地獄、被りが生じなくても期末試験が同じ日に3つ,4つ重なる地獄が待っている。

学生実験について。実験、研究は一応工学系だけど基礎って学部名についてるだけあって狭い研究室で完結するような(SPring-8などの外部施設を利用することもある)規模の小さな研究をしてる学部であり学生実験の規模は小さい。一つの部屋で3グループの学生実験が同時に行われる程であり、また小学生でも同じ事が出来るほど(実際オープンキャンパスではやっている。小学生の方が綺麗なデータを取ることもある)である。学生実験のレポートに追われてしんどい...なんてことはないので安心して欲しい。

【7】

研究室を選ぶ、ないし行きたい研究室に目星を付ける際に大事なことは分野、規模、トップの年齢である。

分野選びではその後の人生が変わることもあるので慎重に自分の興味を自己分析して研究室を選ぶべきである。

規模も大事で規模が大きければ部屋も広いし予算も広い。研究内容も先輩からの引き継ぎから始まるので何をすれば良いか迷うことも少ない。それに加えて先輩が多いということはつまり院試の勉強法や解答例が研究室に保管してあったりする可能性が高く、また同期同士で勉強会も気軽に開けるので院試の合格率は自然と高くなる。逆に小さい規模の准教授グループなどは実際院試合格率は低い上に受け入れ人数上限以上が院進を希望するとそのまま院進すること自体を嫌がられることもある。

トップの年齢も大事で定年になると研究室が無くなるので高校生などが特定研究室を希望する場合は調べておいて損はない。

【8】

院試を考えてる学生は公式HPに掲載されている過去問を早めにDLしておくことをオススメする。古いのは消えていくし。そして各ターム終了後に解ける問題は解いて答えを作っておくことをオススメする。4回生で一気に全教科復習しながら答えを出すのは面倒なので。院試の難易度は期末試験と同じか簡単程度。特に専門Ⅱの科目は(受験時に)一度は見たことのある問題が多いと思う。

上記の理由より授業の資料や試験問題は残せるだけ残しておいたほうが良い。授業資料が内部者にとって有利な点であってそれがなければ外部生と大差なくなる。

最低合格点は公式HPで発表されているものは実際のそれより盛られているみたいだから公式発表の最低合格点を取れれば実際は余裕をもって受かる計算。面接点やTOEICの配点が具体的にわからないからなんとも言えないけど面接点はかなり大きくて毎年数人は面接点が良ければ受かってた人がいるみたい。TOEICの素点平均点は(自分調べで)680~700点くらい。700点以上あれば足を引っ張ることはまずないと思う。ただTOEICは5月の試験までの分しか提出が間に合わないので4回生になってから勉強を始める場合は英語が得意でない限り間に合わないので遅くても春休みから英語は勉強しておくべき。

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