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マリファナ(大麻)の医療的用途

マリファナ(英:marijuana(大麻))
1.マリファナとは
 近年、各国で合法化され世界的に有名になったマリファナの主成分は主にTHC(英:Tetrahydrocannabinol(テトラヒドロカンナビノール))とCBD(英:Cannabidiol(カンナビジオール))の二つの成分である。日本ではTHCは違法であるがCBDは合法であり、医薬品としての用途はまだ承認されていないがサプリメントとして購入することはできる。マリファナは大きく分けて三種類のタイプがある。これはサティバ(Sativa)、インディカ(Indica)、ハイブリッド(Hybrid)である。それぞれ違った特徴があり状況によって使い分けられることが多い。例えば、サティバは使用するとアクティブになったり、元気が出る、クリエイティブになる、多幸感をもたらすといった効果があることから、トレーニング前や創作活動の前などのデイタイムに摂取される傾向が強い。対してインディカは使用することでリラックス効果や痛みの緩和、多幸感、眠気といった作用を持つことからナイトタイムに用いられる傾向がある。ハイブリッドはサティバとインディカを遺伝子的に掛け合わせてできた品種でTHC,CBDの含有量の調整ができたり、それぞれのマイナス面を抑え、プラス面を引き立たせることができる。
2.サティバとインディカの違い
 それぞれ育てられる地域が異なっており、サティバはコロンビアやタイ、メキシコ、東南アジアの赤道諸国に由来し、暖かい気候で育てられる。対してインディカはパキスタンやアフガニスタンなどの中東のより涼しい環境で繁栄している。
 サティバの植物は、屋外で栽培された時、最大20約6メートルの異常な高さに伸びることもあり、より長い植生期間を持つ。植物が花開き始めると、完全に成熟するまでに10〜16週間かかることがある。植生期間が長いので典型的に、インディカ株(植物当たり85グラム~453グラム)よりもはるかに高い収率を生成するが、平均してインディカよりも低いTHC%(約12〜16%)を有する。 インディカの植物は短くて頑丈であり(2〜4フィートの高さ)、サティバよりも収量が小さく(植物あたり1.5〜2.5オンス)、より高品質の作物(〜18%THC)である。
3.効果と副作用
 最も一般的な摂取方法である吸入によるマリファナの摂取は、数分で効果を発現する。食べ物や飲み物として摂取した場合はおよそ30分から1時間で効果を発現する。
効果
•知覚の変化(色が明るく見える、味覚の向上、音楽が心地よくなるなど)
•多幸感
•気分の変化
•リラックス効果
•想像力の向上
•食欲増進
•痛みの抑制
副作用
•時間の感覚の変化
•体の動きが鈍る
•問題解決能力の低下
•幻覚(多量投与の際)
•記憶力が鈍る
•妄想(多量投与の際)
•精神病(高濃度の品種を長期間定期的に使用し続けた場合)
•不安
•パニック(多量投与の際)
•散瞳
•血圧低下
•心拍数増加
•めまい
4.作用機序
 マリファナの精神活性成分であるテトラヒドロカンナビノール(THC)は特異的に、脳内にあるCB1受容体と免疫系の細胞に存在するCB2受容体に結合する。カンナビノイドCB受容体は、グルタミン酸、GABA、アセチルコリンなどの神経シナプス前膜に存在し、神経シナプス後膜から遊離される内在性カンナビノイドを介して各種伝達物質の有利を抑制する。CB1受容体を刺激することは、食欲や記憶、痛覚、脳内報酬系に関係しており、CB2受容体の刺激は鎮痛効果に関係している。両受容体とも7回膜貫通型受容体ファミリーに属し、アデニル酸シクラーゼを阻害し、MAPキナーゼを活性化させる。カンナビノイド受容体への内因性リガンドとしてアナンダミドと2-アラキドノイルグリセロール(2-AG)が存在する。脳内CB1受容体はシナプス前神経終末に局在し、シナプス後細胞から放出された内因性カンナビノイド(特に2-AG)は逆行性にシナプス前からのグルタミン酸、GABAなど他の伝達物質放出を抑制する。
5.医療的用途の可能性について
 現在、マリファナの医療目的としての利用は世界中の23の国で行われており、その中には韓国やタイ、フィリピンなどのアジア諸国も含まれる。娯楽使用として合法としているのは6カ国であり、マリファナはその国の宗教や伝統、文化に関係しているケースもあるので規制が他の国よりも緩和されていることがある。
 医療大麻の適応はいくつかの例を除いて完璧には証明されていなく、これらの効果の大半はマリファナの慢性的な痛みに対する鎮痛効果や吐き気の抑制、食欲増進効果などから来ている。身体的な安全性においてマリファナは安全であるとされており、単独使用において、過剰投与した場合においても死者の報告はされていない。動脈の炎症や肺、頭、首のガンの間の関連性も発見されていない。
医療大麻の適応例
•アルツハイマー病
•食欲減退
•ガン
•クローン病
•拒食症
•てんかん
•緑内障
•精神病やPTSD
•多発性硬化症
•筋けいれん
•吐き気
•痛み
これらのうち、特に重要な医療適用について説明する。
食欲のコントロール
 CB1受容体を活性することは食欲増進につながることから、この受容体を拮抗する薬が食欲抑制効果を生じて、肥満に対してや体重を減少させることにつながると考えられ研究が行われた。結果、食欲を減少させることはできたが、副作用として鬱効果を引き起こしたので開発が中止となった。しかし、肝臓などの末梢に存在するCB1受容体にのみ特異的に遮断した時ではこの副作用なしに食欲を減少させた。また、CB1受容体を遮断することは血中のグルコースとインスリンレベルを正常化することも明らかになっている。このことから、カンナビス関連の医薬品は食欲をコントロールすることができると考えられる。
炎症の抑制
 CB2受容体を活性化することは、人の体において強力に炎症を抑制することにつながる。CB2受容体は中枢には存在しないので、遮断しても精神性の副作用は起きない。CB2受容体の遮断は、抗炎症ステロイドのように炎症誘発性脂質シグナル分子の生産を減らしたり、注射して浸透した部位の好中球の数を劇的に減らすだけでなく、バクテリアの除去を促進したり、炎症を止めるための体の自然なメカニズムも促進させた。これはステロイドが持っていない効果である。
抗精神病作用
 マリファナのもう一つの主成分であるCBDは、抗精神病性の特性を持つ。CBDの単回投与はTHCの精神性の副作用を和らげることがわかっており、CBD含有率の高いマリファナの品種は精神病を発症させるリスクを下げる。しかし、少量のCBDとTHCを含む品種はTHC単体やTHCと多量のCBDを含む品種よりも精神病を発症させるリスクや記憶力低下を高めることがわかっている。
 CBDの単一投与を10週間行った治験では、認知や鬱、精神的な症状を改善しただけでなく記憶を司る脳の部位である海馬の一部を増大させたことから、脳構造の改善作用を持つ可能性があるとされる。
鎮痛効果
 研究者たちは、カンナビノイド受容体に作用する脂肪酸アミドであるアナンダミドの分解を阻害することが、長期的な鎮痛効果を生み出す可能性があることを発見した。アナンダミドの効果を弱める作用を持つFAAHの活性を弱めることは、アナンダミド量を増やすことに繋がる。これは長期的に痛みシグナルを抑制すると考えられているので、薬物開発ターゲットとしてFAAH活性を抑えることが注目されている。
 マリファナの医療的使用には医師の承諾書が必要なことが多く、すべての医師が患者に対して医療大麻を推薦するわけではない。また、医療大麻の使用には症状に関して必要な条件を満たしていなければならないとされており、医療大麻IDカードを要求されることもある。医療大麻IDカードを入手した場合、ディスペンサリーショップと呼ばれる店頭で医療大麻を購入することができる状態となっている。
 娯楽使用が認められている地域では、医療的大麻の効果に関する臨床試験がなかなか進んでいないことから、使用者自らが効果を期待して治療的にマリファナを利用するケースが増えている。
6.マリファナを医療や娯楽目的で個人で使用することのデメリット マリファナを過剰投与された場合の死者は報告されていないものの、娯楽使用が合法化されてから、病院において、カンナビス関連の救急搬送の数は大幅に増加した。これらの診察の多くは精神疾患に関連していて、カンナビスを使用し続けていた人が使用していなかった人たちに比べ、5倍近くの数となった。精神疾患を発症するのは主にマリファナを16歳以前から用いていたケースであり、16歳以降のケースにおいては、高濃度のTHCを含むマリファナを長期間頻繁に使用していた人々が多かった。また、思春期にマリファナを2年から3年、週に数回使用していた人々は、青年期から20年間定期的に使用する人々に似た記憶力の低下が見られた。マリファナは、一般的には依存性は低いとされているが、潜在的な依存のリスクが確かに存在していると考えられる。このリスクを人々に知ってもらうことは非常に重要であり、依存により社会的な関係に影響を与えるリスクを理解しなくてはならない。

以下が参考文献
Release the strains” NATURE MEDICINE VOL21 NUMBER9 SEPTEMBER 2015
RESEARCH ROUND-UP,” Nature , VOL 572 29, AUGUST 2019.
https://www.drugabuse.gov/publications/drugfacts/marijuana
https://www.taimauniversity.com/インディカ-、サティバって何?%E3%80%80医療マリファナ/

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