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深海に行きたかった僕ら

思考の海に溺れたい。空を遮る電線のことを考えていた中学生の頃。それが許される世界があることを知れていればと思う。そうすれば、右も左も分からないままでも、ただ思考の海に溺れることが出来たかもしれない。
今はもう溺れることが許されない世界に投げ出されてしまった。右も左も分からないままただ進むしかできない世界でもがきながら泳ぐことしかできないでいる。泳ぎ方も知らないままで。不恰好なフォームで。
溺れることが許される世界で溺れていたかった。溺れることが許される世界を通らずに泳ぎ出してしまった。泳ぎ始めたらもう許されない。
溺れてみたかったと、もう遥か彼方に、あったはずの安全な海に、羨望で灼かれながら、無様でも潜る方法はないかと抗い、海面に小さな飛沫を上げる。

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