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不思議

実家の庭からもらってきた梅の枝のつぼみが花開き、注文したブーケに入っていた啓翁桜もどんどん花が咲き、肌寒い家の中で「春がやってくるんだなあ」と感じている2月の終わりです。

あっという間に過ぎていくように感じるふた月だけれど、2022年もう二ヶ月経過?!という気持ちはあまりなく、それなりに踏み締めてきた感覚のある時間だったと思います。

私にとって一番大きな出来事だったのは、愛する宝塚歌劇のこと。
とりわけ心を寄せている花組さんの華々しいお正月公演が東京日比谷で行われるということで、初日からありがたく観劇させていただき、そのおめでたい空気を胸いっぱいに吸い込んでいたのも束の間。
凄まじい第6波はあっという間に宝塚歌劇も飲み込んでしまい、約三週間、公演のほとんどが中止となってしまいました。

雪組さんも、星組さんも、宙組さんも。
公演中止はこれまでにも体験してきたけれど、また違う辛さに胸が痛む日々でした。舞台に立つタカラジェンヌたちが、スタッフさんたちが、想像をこえる苦労と努力を重ね、忍耐の感染対策をしていることを知っていたからこその辛さ。

それでもやはり宝塚歌劇は愛と希望に満ちた強さを携えていて、ちらほらと伝え聞こえてくる生徒さんたちの前向きな姿勢、どうか笑顔でいてくださいと私たちファンのことを想ってくれるあたたかい心に、改めて胸を撃ち抜かれました。

くよくよなんてしていられない。
笑顔で、健やかに、幸せに生きていこう。劇場の扉が開くその日に、盛大な拍手で舞台を包み込めるように。そんな風に思考を切り替えることができて、荒むことなく、前を向いて一日一日を歩めたと思います。

花組さんの公演が再開されたその日、「花組ついに帰って参りました!」とトップスター柚香光さんが公演アナウンスで高らかに、朗らかに仰ってくださったこと。
あの時の感動と喜びを、私は一生忘れません。
帰ってきてくれて、劇場に迎え入れてくれて、本当にありがとう。宝塚を愛し、愛させてくれて、本当にありがとう。その気持ちでいっぱいでした。

宝塚歌劇には、とりわけ柚香さんからは、いつもいつも、本当に多くの気付きと学びをいただいているなと思います。
舞台を愛せる喜び、楽しめる奇跡。そして観客としての責任、責務。それらを噛み締めて、胸に刻みつけたふた月でした。


宝塚歌劇への想いがまっすぐと宿る一方、全く別に新しく触れるものもあり、そこで気付く今の自分自身のこと、というものも大きい期間だったなと思います。

別に知らなくてもいいかな、と思っていたことをちゃんと知りたいと思ったり、気にしていなかったことを知識として取り入れるために勉強したいなと思ったり。
新たに知る存在によって、自分自身に足りないものや、これまでとは違うベクトルでの気付きがすごくたくさんありました。

そのために勉強しよう!情報を仕入れよう!と意気込んではみたものの、私はそういうところが本当に器用にできなくて(ということにも改めて気付かされた)、あれもこれもと自分の首をどんどん絞めていってしまって。
刺激をもらってワクワクしながら切り拓こうとした道なのに、慌て過ぎて苦しくなってしまう。そんな悪循環に溺れかけてしまっていました。

ただ、これまでだったら「もう苦しいからやーめよ」と早々に終わらせてしまっていたと思うのですが、今は、もう少しやり方を変えて頑張ってみたいと思えていて。
あれもこれもは無理だから、私が今できる範囲の「頑張れる」ペースでやればいいんだと自分の中でゆるしを設けて、怠けない程度にやっていく。ワクワクする気持ちを持続できるやり方でやっていく。

この刺激を私にくれている人は、私から見るとすごくバイタリティにあふれていて、知的好奇心が旺盛で、でも自分のペースを崩さずに楽しいことを楽しいまま無理せずしている、きちんと肩の力を抜けている人で、割と私とは真逆の人。

その人と同じようにしなきゃと、そうじゃなきゃ追いつけない、とただただ焦って息苦しい時間が続いてしまったのが実はこのふた月のこと。
でもふと、同じじゃなくていいし、追いつかなきゃいけないことではないのでは?と思って。

それは諦めたのではなく、方向転換をしないと進めないと気付いたから。自分がなにをどうしたいのかをちゃんと整理した時に、「その人から受けた刺激や好奇心をそのままにしたくない」ということなんだなと。

私はどの方向にも進めるタイプの人間ではなくて、この方向には進めるからだったらそこに沿ったこのやり方でいこう、と進める先に物事を合わせて調整していくタイプ。

明らかにその人とは違うタイプなので、同じにはなれないし追いつけない、でも影響されたことは良いことばかりだから活かしていきたい。

そんな風に考え方をスイッチできたのはここ数日のことで、まだ焦る気持ちにひとりであたふたしてしまいそうだけれど、どうにか進んでいけそうな兆しが見えていて、またやる気が満ちてきているのを嬉しく感じています。


私は柚香さんに出会ってから自分の考え方やものの捉え方が大きく変わったのですが、その日々の中で、また新たに出会った人から全く別方向の刺激を受けて、これから自分はどうなれるんだろう?とワクワクした気持ちが芽生えてきていて。

この芽生えたものをちゃんと育てていけるかはもちろん自分次第なので、大事に、時にスパルタに、でも基本は自分ペースの甘やかしでいけたらいいなと思っています。


***


今回のタイトルにした「不思議」は、星野源さんの「不思議」から。

この曲は私にとってはドラマ「着飾る恋には理由があって」の主題歌で、真柴ちゃんと駿の曲、というイメージしかなかったのですが、去年の12月にふと聴いた時、フラットに歌詞が自分の中に入ってきて、そしてこのふた月の間、自分の中でのテーマソングになっていました。

幼い頃の記憶 今夜食べたいもの
なにもかもが違う
なのになぜ側に居たいの
他人だけにあるもの

星野源「不思議」


友達でも好きな人でも憧れの人でも、共通点がたくさんあったら嬉しいし、自分と似ていると思う部分に喜びを感じる。
特に私は、その気持ちが人より強いと自覚があります。
だからこそ似ている部分を(無理にでも)探し出そうというきらいがあるのですが、「違うからこそ惹かれる」という感覚が、もしかしたら初めて自分の中で湧いていて、その感覚がこの歌詞の風景に繋がって何度も何度も繰り返し聴いていました。

違うものとか、変化とか、新しいものって、私にとっては割と怖いもので、これまであまり近づかないように無意識にしていたと思うのですが、今はそういうものにも近づけそうな状態なのかもしれない。

もしかしたら少しだけ変われるのかもという「戸惑い」が、ワクワクに変わってちょっとずつ土台になってきた。そんな気がする、年明けからのふた月であり、春を感じ始める2月の終わりでした。

私が好きだと思うものをなによりも大切にする姿勢は崩さず、まっすぐに持ちながら、新しいものを少しずつ取り込んでいけたら。そんな風に思います。


***


そして、春よこい、はやく来い。
どうかあたたかい日差しの中、青空の下、星空の下、月明かりの中、木漏れ日の中、すべての人が笑顔でいられますように。

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