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夜空
ベッドのシーツをもこもこ素材からコットンに変え、毛布もしまい、着込まず身軽に眠れるような気候になってきて嬉しいなあと思っていたところの寒の戻り。
季節の変わり目の寒暖差には毎回驚きつつ、この3月はこれまで以上に落差が激しく、心身ともにダメージが大きかったです。
そんな3月が終わってゆく。
どこかほっとした気持ちで4月を迎えられそうな、静やかな花冷えの夜です。
1月2月を振り返った記事でも綴っていたのですが、今年はまだあまり「もうこんなに時が過ぎてるの…?!」という感覚がありません。生活の中で何かが変わったということもこれと言ってなく、仕事も趣味も相変わらず。けれど、なんとなく今年に入ってからはしっかり日々を、時を刻んでいるような感覚があって。
なんでだろう、と思い返してみると、自分が何を好きで、何を見るのか何を聞くのか、何を「選択するのか」ということを、おざなりにせずちゃんと考えるようになったからかもしれないなと。
これまでもいい加減にしていたわけではないけれど、「なんとなく」というところが大きかったように思う。なんとなくこれが好き、なんとなくこれでいい、今までもずっとそうだったからなんとなくこのままでいい。
それが心地よくて自分らしい感覚なんだと思っていたけれど、それって考えることの放棄というか、感じることを鈍らせていっているのでは?と今になると思う(ちょっと大仰な表現だけれども)
2020年の春以降気付いたことがたくさんあって、それがだんだんとスタンダードになっていき、気付きが日常になって溶け込んでいってしまっていたような。
それが今年に入ってから、愛する宝塚の度重なる公演中止によって感じたことや、新しく出会った知りたいものことからの刺激で、また輪郭をあらわにしたのかなと。
そのおかげで、ぼんやりしていた心が新しいリズムを刻み出して、ちゃんと時間を重ねているという実感に通じているのだと感じます。心の充実。
すぐにぬるま湯に、あたたかいお布団に入り込んでしまいたくなる私にとって、そういった気付きを与えてくれる存在には改めて感謝しかないです。
宝塚では「ご贔屓さま」、ジャニーズでは「担当」、その他では「推し」という呼び方にそれぞれなるけれど、そういった心の拠り所、愛する人、ものたちのおかげで、私は私でいられるのだと感じる。
私にとって、それは夜空のような存在だと思います。
星であり、月であり、夜空のようなもの。毎日見上げて、切なくなったりほっとしたり、泣いたり幸せになったり。穏やかで優しくて、いつでもちゃんとそこにいて、見えて、包み込まれているようで、瞬いていて。
そして、遠く遠くにあるもの。
手が届かないことに寂しくなることもあるけれど、それを眺めるから歩いていける。心を正して進んでいく事ができる。そんな存在なのかなと。
なんだか少ししんみりしたトーンになってしまったけれど、私にとってはそれがすごくしっくりくる。
憧れは私の心を満たしてくれると同時に、そこはかとない寂しさもいつも横たわらせていくから。
これはもう、ずっと前から感じていること。きっと物心がついたときからずっと。
その寂しさがあるからこそ、憧れをずっと見つめていられるのだと思うから。
***
この3月は、あるひとつの短歌に出会ったのもちょっとした大きな出来事だったと思います。
声がする春の公園 そこにいるならあなたは幸せになってくれ
この短歌を読んだ時、まさに自分の心の風景でどきっとしました。
ささやかで何気ない幸せが滲む中、そこはかとない孤独がふんわりと漂っている。
岡野さんの詠まれる短歌には共通して感じる事なのですが、この短歌からはとりわけその「そこはかとない孤独」を感じて。
春の暖かな空気、花びらが舞う淡い景色の中で、心地よく風に吹かれながらそばにはいない誰かの幸せを願う。隣にはいない、誰かのことを思って。私はひとりなんだと感じながら。
きっと私が生まれた時から持っている心の風景がこの短歌に言葉として描かれていて、それがとても優しい寂しさに満ちていて、うまく言えないけれど心がふわっと少しだけ救われたような気がするのです。
これもまたひとつの気付きで、私の感情の礎になっているものを、久しぶりにちゃんと取り出して両手に包んで、眺める事ができたと感じます。
この心の新しいリズムを忘れる事なく、寂しさと一緒に幸せもしっかり感じながら、やってくる本格的な春を思いっきり抱きしめたいと思います。憧れも幸せも寂しさも孤独も、全部全部愛おしいひかりだから。
優しい春の夜空に包まれて、健やかで穏やかでありますように。私も、あの人も。
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