バイトの連鎖
学生のときのバイト先は、劇場のロビーのカフェコーナーだった。
開場から開演、幕間休憩が勝負で、片付けが終わると、少しお芝居を覗かせてもらえたりしたものだった。
また、開場前にロビーでウォームアップしている俳優さんの姿を覗けたりするのも楽しかった。バイトにも優しく挨拶してくれる俳優さんは、思わずファンになったりして。
そのバイト先は、一般にバイト募集をしておらず、大学の先輩から口コミで誘われた子が代々続いていくパターンであった。だから、シフトの変更が必要になると互いに融通し合ったりできたし、なにより雇い主のかたは、「この人なら、と紹介してくれる子たちだから、信頼できるのよ」とおっしゃっていた。
話は変わるが、友人は、長年にわたり、夫婦で飲食店を経営している。そのお店も、バイトは長らく「大学生が、卒業までに次の後輩をスカウトしてくる」方式でやってきたという。
それが、このたび、ついにスカウトが途絶えるときがきたという。
原因はおそらく、コロナ禍。
今の学生さんたちは、コロナ禍の影響をモロに受け、行事の中止や縮小を甘んじて受け入れてきた子たちである。
部活などの活動も大きく制限される中、異学年同士の縦のつながりが減り、バイトを託せる後輩がいないようだ。
なるほど、こんなところにも影響が。
コロナ明けの全国学力学習状況調査では、国は結果に対し「コロナ禍を受けて、大きく学力低下した事実は見られなかった」と分析した。だが、子どもたちを取り巻く人と人とのつながりや、コミュニティの在り方には、少しずつ変化がもたらされているようだ。
バイト生たちを見守る友人は「とはいえ、コロナ禍コロナ禍と言われるけど、その年代、その子たちなりの楽しみを見つけてやっているみたいよ」と言っていた。
それもまた真なりである。
わたしは、チーズケーキを頬張りながらおもわず頷いた。
さまざまな角度から見ることは大事だと思わされる話だった。
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