小説「気がつけば秀吉」
授業に出たくなかったので、目黒日吉は学校の屋上に来た。昼休みには生徒でにぎわう屋上も、授業中だからもちろん他に誰もいない。日吉はそこで腐りかけていた手すりにもたれかかって、雲に覆われて薄暗い空をぼんやりと眺めていた。手すりのサビを無意味に撫でたり、ゆするとガタガタするので何度もおもちゃみたいに揺らしていた。屋上は風が吹いて少し冷たいのが心地よかった。日吉は精神的にもやもやすると、いつもひとりで屋上に来ていた。ひとりになりたかったのだ。
その屋上へもうひとり生徒がやってきた