上伊由毘男

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上伊由毘男

ライター。連絡先は skicco@gmail.com Twitterアカウントは https://twitter.com/skicco  その他は http://skicco.net/ 参照。

マガジン

  • 短編小説「夢のゴーグル」「公共孤独死相談所ハローデッド」他

    短編小説の置き場です。 「夢のゴーグル」ある新製品VRゴーグル開発者へのインタビュー 「公共孤独死相談所ハローデッド」孤独死に関する政府機関ができた社会の話 「たいせつなもの」絶海の孤島での少年と少女の出会い 「われとロボット」中年男と廃棄寸前のロボットとの出会い 「やる気のない忠臣蔵」昼行灯と呼ばれた大石内蔵助は刃傷事件後急に優秀になったのか? 「気がつけば秀吉」鬱屈した高校生がある日戦国時代に飛ばされて秀吉になり天下を目指す 「本人確認」本人確認をめぐるトラブルの話

  • 連載小説「若起強装アウェイガー」【完結】

    【あらすじ】人生に絶望し電車に身を投げた中年男は不思議な力を得て助かる。そのことで、国家転覆を図る組織との戦いに巻き込まれていく。

最近の記事

小説「夢をかなえるアプリ」

 コンビニバイトの佐倉輝綱は、同じコンビニで働く女子大生の名津原結衣が気になっていた。だが輝綱は、大学を出て就職した先がパワハラモラハラセクハラ山盛りのブラック企業で、逃げるように辞めてしまっていたところだ。現在はコンビニバイトで食いつなぎながら就職先を探す日々である。そのことが彼に自信を失わせ、結衣に声をかけることができないでいた。バイトをはじめて数ヶ月になるが、挨拶と仕事以外の会話をしたことがなかった。  ある夜、いつものように求人情報をスマホでチェックしていると、珍し

    • 小説「夢のゴーグル」

      ヴァーチャルリアリティ技術を使ったゴーグル(VRゴーグル)の新製品「ドリミアン」が発売された。昨今では珍しくもないジャンルの製品だが、法人が従業員に使用させるために一括購入するケースが多く、隠れたヒットとなっている。 ドリミアンを製作した会社の社長で開発主任でもある男が、ヒットの秘密をテーマとした取材を受けることになった。 インタビューを受ける社長室に、経済誌系メディアから来た取材担当の女記者が入ってくる。二人の間にある机の上には、実物のドリミアンが置いてある。 ドリミ

      • 【プロフィール】上伊由毘男(かみいゆ・びだん) 又は わんこ☆そば

        新潟県出身・東京都在住 ここで小説を書いていましたが、現在はカクヨムに移行しました。https://kakuyomu.jp/users/skicco 本人サイト:http://skicco.net/ 連絡先:mail あっと skicco.net Twitter:https://twitter.com/skicco ブログ(アイドル関係):SKiCCO REPORT http://skicco.hateblo.jp/ ブログ(普通の):上伊由毘男のブログ http

        • AWAKE(小説「若起強装アウェイガー」イメージソング)

          完結した連載小説「若起強装アウェイガー」のアニメ化にそなえて(笑)主題歌っぽいものを作りました!軽くアニソン意識して、長さもおよそ1分30秒にしました。どうでしょうか。

        小説「夢をかなえるアプリ」

        マガジン

        • 短編小説「夢のゴーグル」「公共孤独死相談所ハローデッド」他
          8本
        • 連載小説「若起強装アウェイガー」【完結】
          15本

        記事

          小説「若起強装アウェイガー」第14話(最終回)「最期の刻」

          治英は白の館へ入った。 かつて自分が閉じ込められてた病室に行くと、亜衣が縛られ身動きできない状態になっていて、バインダーブレスも奪われていた。治英が縄をほどく。 亜衣「助かったわ」 事務的な言葉であった。治英は、自分で亜衣を助けたことが、不謹慎ながらうれしかった。一方の亜衣は、またこの中年男に助けられたのかという、感謝しなければならないがあまりそうしたくない心境だった。 治英「とにかくここを出ましょう。こんなの、実の父親がやることじゃない」 亜衣「いえ、父と決着をつけなけれ

          小説「若起強装アウェイガー」第14話(最終回)「最期の刻」

          小説「若起強装アウェイガー」第13話「残された命」

          治英は一人、白の館へ向かう。 海沿いに立つ廃病院。それを改装して使っているのが白の館だ。 その正面入口に、勇が立っていた。 勇「お前のせいで何もかも台無しになった」 治英「国会議員皆殺し計画のことか」 勇「そうだ。俺と決着をつけろ。でなければ腹の虫がおさまらん」 治英「お前の腹の虫なんかしらないけど・・・」 勇「俺たち白の館のアウェイガーは、政治の無為無策によって社会に捨てられた人間の集まりだ。お前だって、生きていくのがつらくなって、社会に絶望して、自ら命を絶とうとしたの

          小説「若起強装アウェイガー」第13話「残された命」

          小説「若起強装アウェイガー」第12話「天子様の正体」

          牛若丸は二人に笛で超音波攻撃をした。若起していた治英は獣の動きで岩壁沿いにかわしたが、白鹿丸は攻撃をモロに受け、全身を切り刻まれた。白鹿丸もまた手をすり合わせた気流攻撃で反撃。だが傷を受けており全力を出せない上に、牛若丸が笛の音波で作る空気の壁に阻まれ、全くダメージを与えることができなかった。 牛若丸「戦えばこうなることはわかっていたはずだ。純良種[カタロスポロス]としての能力は僕のほうが上だからね。死にたくなければ、我に従え」 そう。牛若丸は無拍の動きで予備動作無く笛での

          小説「若起強装アウェイガー」第12話「天子様の正体」

          小説「若起強装アウェイガー」第11話「谷川岳の仮御所」

          治英は白鹿丸に連れられて黒の館へ向かうことになった。白鹿丸について歩く治英だが、体のダメージが大きく回復にも時間がかかるため、歩くのもつらい。若起を解けば治英自身はただの中年男のため、見た目の悲壮感はより増した。 白鹿丸「本来であれば、私はお前を倒さねばならん。黒の館の人間としてな。だが私は、その黒の館を裏から支える連中に疑念を持ってしまった。天子様は、新しい御代を創られるにふさわしいと信じてきたし、だから今まで戦ってきた。だがそのには、何の証拠も根拠もなかったんだ。このま

          小説「若起強装アウェイガー」第11話「谷川岳の仮御所」

          小説「若起強装アウェイガー」第10話「王政復古」

          自らの再興のため黒の館を支援してきた天子様の一派は、谷川岳の奥地を仮御所にしていた。谷川岳は決して高い山ではない。だが急峻な岩壁と複雑な地形からなる谷川岳の遭難死者数はヒマラヤをはるかに超え世界一であり、その奥地とあればまず誰も近寄れず、隠遁するには最適とも言えた。 仮御所とは名ばかりの小さな山小屋だが、ここで天子様は数人の伴の者(スポンサーから遣わされた者)と生活していた。天子様の御座所には御簾がかけられ、牛若丸でさえ直接の目通りはできなかった。 その日もいつもどおり、

          小説「若起強装アウェイガー」第10話「王政復古」

          小説「若起強装アウェイガー」第9話「若起」

          絵須を倒した治英は、若起したまま駅に向かった。東京へ向かったはずのアウェイガーらを止めるためだ。 だが到着した駅前ではアウェイガー3人が倒されており、いずれも首が無かった。 すぐ側には、CIAの二人が立っていた。 イスナーニ「東京へ行かれちゃこまるんでね。片付けておいたよ」 ベッシュ「まあ、お前もこの死体に並ぶことになるだな」 かつてイスナーニは、治英のダイナマイトフィストを受け、大怪我をした。 イスナーニ「たっぷりお礼をさせてもらわんとな!」 手にナックルダスターをし、

          小説「若起強装アウェイガー」第9話「若起」

          小説「公共孤独死相談所ハローデッド」

           公共孤独死相談所。深刻な高齢化により増加する孤独死に関するトラブルを防ぐための行政機関だ。  アパートでひとり暮らしをする小藤久志は、今年、アパートの更新に必要となる『孤独死相談票』を作成するためにここに来た。小藤は、普通の会社ならとっくに定年になってる年齢だ。  相談所に入る。はじめて来た小藤は入口で簡単な受付を済ませると、相談窓口カウンターに座った。しばらくすると柔和な顔をした中年女性が出てきた。 「今日担当します奈良宮といいます。よろしくお願いします。孤独死相談票の

          小説「公共孤独死相談所ハローデッド」

          小説「たいせつなもの」

           世界中のどの陸地からも極めて遠く離れ、見つかることもほとんどない島があった。  その島に住む者は藁や葉っぱで作った家や洞穴などに住み、野菜を作ったり、獣や魚を捕まえたり、草木や果実を集めて生活の糧としていた。そしてほぼ毎日のように、島のほぼ中央にある最も高い丘にある“イチバ”と呼ばれる広場に集まり、それぞれ欲しい食料を交換しあっていた。何の食料を持ってくることができない者でも、石や器の加工が上手い者はその手間の代わりに食料を得るものもいたし、絵を描いたり、歌や踊りで人々を楽

          小説「たいせつなもの」

          小説「われとロボット」

           失業した信田仁はずっと新しい仕事を探していたが、ずば抜けて特別な技能が無かったこと、心身の病を発症したこと、中高年とも言えるような年齢がネックとなり、再就職ができないまま日々だけが流れていた。  その日も、ハローワークの帰りに夕方の街頭を歩いていると、携帯ショップの店先に置いてある接客ロボットと目が合った。脚が無く自律移動できない接客ロボットがなぜ自分を見ていたかはわからないが、あるいはそれが知りたかったのか、信田はフラリと携帯ショップに入った。その接客ロボット「ボビー」

          小説「われとロボット」

          小説「やる気のない忠臣蔵」

           関ヶ原の戦いから百年ほど経った江戸時代中期、播磨国赤穂藩(現在の兵庫県)を治める浅野家の筆頭家老(一番偉い家臣)に大石内蔵助(おおいし・くらのすけ)という男がいた。親の跡をついでの筆頭家老。実際の政務はベテラン老中である大野知房が全てこなしてくれていた。この時代は仕事も役職も世襲。もとより、関ヶ原の戦いから百年経ち徳川家の支配が確立した太平の世においては手柄を得る機会もなく、大石内蔵助も何事もなく一生を終えるつもりだったろうし、そうなるはずであった。 だが、元禄十四年(1

          小説「やる気のない忠臣蔵」

          小説「若起強装アウェイガー」第8話「慟哭!終わらない戦い」

          牛若丸の命で、白の館を潰すため黒の館を出た蒼狼丸と白鹿丸。二人は黙ったまま歩き、黒の館がある不動山を下りていた。 沈黙を破ったのは、白鹿丸。 白鹿丸「蒼狼丸、お前は……」 蒼狼丸「お前はどうなんだ」 何の脈絡もなく話しかけられ、白鹿丸は面食らった。 蒼狼丸「本当に白の館を潰す気か」 白鹿丸「それは……」 以前より白鹿丸には戸惑いがあった。自分が何のために戦っているのか、と。それでも、父と慕う黒田博士が言うならきっと間違いないはずだと自分に言い聞かせていた。だがその前提は、崩

          小説「若起強装アウェイガー」第8話「慟哭!終わらない戦い」

          小説「若起強装アウェイガー」第7話「悲愴!愛と憎しみの戦い」

          治英と亜衣、勇、そして白河博士は白の館へ戻っていた。博士はあらためて三人に説明した。黒の館の黒田博士はかつて自分と軍で人間改造の研究をしており、その後黒田博士は天皇家乗っ取りを企てる一派の支援を受け研究を続けたこと。そして白河博士自身もCIAの支援を受け研究を続けていたこと。 白河「だが研究が……すなわちアウェイガーの技術が完成すると、CIAは支援を打ち切り、この白の館へ攻め入ってきた。秘密を知る私が邪魔になったのだろう」 亜衣「そんな……」 白河「黒の館にしたってそうだ。

          小説「若起強装アウェイガー」第7話「悲愴!愛と憎しみの戦い」