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短編小説「夢のゴーグル」「公共孤独死相談所ハローデッド」他

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短編小説の置き場です。 「夢のゴーグル」ある新製品VRゴーグル開発者へのインタビュー 「公共孤独死相談所ハローデッド」孤独死に関する政府機関ができた社会の話 「たいせつなも…
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2019年10月の記事一覧

小説「夢をかなえるアプリ」

 コンビニバイトの佐倉輝綱は、同じコンビニで働く女子大生の名津原結衣が気になっていた。だが輝綱は、大学を出て就職した先がパワハラモラハラセクハラ山盛りのブラック企業で、逃げるように辞めてしまっていたところだ。現在はコンビニバイトで食いつなぎながら就職先を探す日々である。そのことが彼に自信を失わせ、結衣に声をかけることができないでいた。バイトをはじめて数ヶ月になるが、挨拶と仕事以外の会話をしたことがなかった。  ある夜、いつものように求人情報をスマホでチェックしていると、珍し

小説「夢のゴーグル」

ヴァーチャルリアリティ技術を使ったゴーグル(VRゴーグル)の新製品「ドリミアン」が発売された。昨今では珍しくもないジャンルの製品だが、法人が従業員に使用させるために一括購入するケースが多く、隠れたヒットとなっている。 ドリミアンを製作した会社の社長で開発主任でもある男が、ヒットの秘密をテーマとした取材を受けることになった。 インタビューを受ける社長室に、経済誌系メディアから来た取材担当の女記者が入ってくる。二人の間にある机の上には、実物のドリミアンが置いてある。 ドリミ